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巫女様、説教する

「カレー、か。三ヶ月経たないのに懐かしさを感じるな」

「……学校の裏に、あったもんね。カレー屋さん」

「二人共、ニオイだけは毎日嗅いでたわけだな」


 休憩所のキッチンには亜里須とリオが立って、大きな鍋をかき回している。

 亜里須の提案で、夜ご飯はカレーになった。

 うん、なんか身体が求めてる気がする。カレー。


「ユーリ、ネー様とフレイヤは?」

「まだ戻ってこないが電話は繋がってる。今のところ問題は無いぞ」


 スピーカーには歩く音と、時折なにかをぼそぼそ確認しあう声。

 こちらに確認を求めるときしか張った声は聞こえない。

 二人共、今のところ隠密行動モードを崩していない。


「マイスター、二人はなにか言ってよこしたか?」

「帝国の一行が建物を出て行った痕跡を見つけて、追跡してるところから変わらない」



 亜里須とフレイヤの話から、全員既に建物の外には出たはず。

 フレイヤがどうしても。と言うので、とりあえず痕跡の追跡に出している。

 一人で行かれると困るので、アテネーを一緒につけた。



「ババァでは無く私が行っていれば蟲が使えたのではないか?」

「ボクならニオイがたどれると思う」


「細かい痕跡を見つけるならアテネーだ。それにスクワルタトゥレが居たのをフレイヤと亜里須が見てる。もしも向こうに見つかった場合、目眩ましをカマして逃げるならフレイヤが一番良い」



 前回、手も足も出なかったがそれはこちらのメンバーの顔と能力が割れていたから。

 フレイヤが居ることすら向こうは知らないだろうし、だったら1発目は目眩ましなら有効なはず。

 目眩ましが効いたら、今度はアテネーの足がある。

 フレイヤを物理的に抱えていても十分逃げ切れる。



「ボクだって、あの時よりもずっと強くなったよ!?」

「こちらもわかっていれば、さすがにあれ程の遅れは取らないぞ」


「その辺は百も承知ってやつだ、別にお前らが弱いとか思ってない。……但し、スクワルタトゥレと正面からやり合おうなんて、そんなことも一切思ってないからな?」



 単純に強くはなったけど、それでもスクワルトトゥレと並ぶほどかといえば無理がある。

 全員でかかってもやっぱり返り討ちに遭う未来しか見えない。



「二人共、大人なんだからあまり理不尽にユーリを責めちゃダメだよ? 無駄に怪我とかして欲しくない、って普段から言ってるでしょ?」

「別に責めてはいないよ……」

「リオさん、その、しかしだな」



 リオがエプロンで手を拭いつつ、休憩室から出てくる。

 ……その癖も里緒奈いもうとなんだよ。


「ユーリもさぁ、困るくらいならキチンと言えば良いのに。変なとこで優しいんだから」

「別に困っては居ない。ただ、説明をだな……」

「なら、ちゃんと喋りなさいよ」


 いくら手はタオルでふけ、辞めろって言っても、いつもやってた。

 もちろんリオはわざとやってるわけじゃ無いが、さすがに心に刺さる。

 今の俺の顔を見たら、そりゃ困って見えるだろうな。

 ……主に困ってるのはお前のせいだけど。

 


「モリガンさんは話がいつでも迂遠、遠回り過ぎなんだよ。フレイヤ様の負担が心配なんでしょ? ビルの上でも今も、出ずっぱりだもんね。――だったら始めからそう言えば良いのに。いくらユーリだってそれじゃ、わかんないってば」

「いや、その、ババァのことは別に……」


「ニケちゃんもそうだよ? 今のところ具体的になにかはできてないけど、それは私も同じ。だからって、無駄に暴れるのは違うでしょ?」

「別に暴れたいなんて、僕は思ってなくて」


 この二人、基本的には人の話を聞かないのだけれど。

 リオの声にだけは耳を傾けて従う。

 本格的に揉める前に止めに来たのか……。



「そしてユーリ!」

「え? ……俺?」


「少し気を抜きなさいよ。フレイヤ様達は帝国が居なくなったの、確認しに行っただけなんでしょ?」

「そうだけど……」

「ユーリが気負ってるとね、みんなわかるんだよ。私にばっかり言うけど、ユーリも少し気を抜いた方が良いよ」


 困った、里緒奈に怒られてる気しかしない。

 たまに正論で真っ正面から来るんだよ。

 そう言う意味では全く同じ性格だからなぁ。同じ顔だとクルものがある。



『マイロード、聞こえているか?』

「あぁ、……大丈夫だ」

『主殿、話は聞いていた。確かにリオさんの言う通りだ、我らが少し追い詰めてしまっていたように思う』


 こっちはスピーカー、向こうはイヤホンで同時中継状態。

 それはもちろん、聞いてるわな。


『それはそれとして。あぁ、おほん、改めて。……マイロード、帝国の一団は完全に敷地の外に出たようだ』

『私とフレイヤだったらこれ以降も多少は追えそうだが、どうする?』


「近所に居ないのがわかればそれで良い。むしろホントに逃げたならこの先は、即死級のトラップを仕掛けてる可能性も高まる」


 スクワルタトゥレ、アイツならそうする。

 そうやって地味に生き残って、ランクを上げてきたんだ。

 スクワルタ戦術なんて言う、セコいワザを集めた初心者向けの攻略法がまとめサイトに載ってるくらい。

 イメージよりも数段セコくて地道で精密、それがあの女だ。


「追跡は中止で良い。戻ってきてくれ・・


『マイロード、せめて本当に離れたかくらいは確認の……』

『わかった、このままフレイヤもきっちり連れて戻る』


 やっぱりこうなるか。でもアテネーなら命令、となれば絶対従ってくれる。

 一応、フレイヤが侍従と侍従長。という関係性を気にしてる面もある。

 だからこそこのコンビだったわけだが。


「建物の外はカメラで見えないところも多い、帰り道も気をつけろよ? あと戻ってきたら、亜里須とリオが晩飯作ってくれてるから」

『了解、辛いのだと言ったよな? 出たときから楽しみにしているのだ』


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