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最上階へ Side : Yuri's buddy "Alice"

 広くて歩きやすい階段を、フレぴょんと一緒にゆっくりのぼる。

 筋力増強なしでも全然問題を感じない。

 一階昇るだけ、というのもあるけれど。


「非常用の通路、なぁ。……のぉアリス、階上には王族でも住んでいるのかや?」



 避難通路には見えない、というのは私も異論なし。

 三〇階の通路に入った途端、自動で照明が明るくなって、壁やら床やら、やたらに高級そうな素材が使われているのがはっきり見えるようになった。

 踊り場には、これまた高そうな絵まで飾ってある。 

 前にテレビで見た、超高級リゾートホテルのメインエントランスがこんな感じだった。



「……うーん、IT企業の社長ってなんていうんだろう? 住んでるのは……、あー、商人、的な人?」

「商人か。さもありなんだな、使わぬところにまで金をかけたがる。こういう部分は本来、質実剛健。使えれば良かろうモノを」



 そう言えば、フロイデンベルグ女侯爵家もエッシェンバッハ男爵家も。

 質素な暮らしで有名な貴族だった、って聞いた。

 ……両方、フレぴょんの趣味だったんだね。

 確かに、中央大神殿が二つ買えるような指輪を普段使いしてたけど、あれも実際には魔導のアイテム。

 装飾よりも実質の方が大事。っていうことなんだろうね。


 そしてクリエイターの人もさすがにお金かけすぎ、というのはわかるけど。

 会社のエライ人の自宅につながる階段だから、まわりの人が無駄にがんばっちゃった可能性もある。

 俗にいう忖度そんたく、ってやつかも知れない。

 避難通路なんて、住んでる間は一回も使わないのが前提だしね。

 本人は、一度も入ったことすらないかもしれないし。



「とは言え、一人で思索にふけるには良い場所の様な気もするが」

「……その。非常階段で思索にふけるのは、それはイメージが悪いと思う」

「この世界の常識だと、そんなものかや?」



 非常階段と言ったら。

 ヤンキーがタバコ吸ってたり、不倫の男女が密会してたりするイメージがつい浮かぶんだけど。

 どう見てもロビーから延びる階段とか、大豪邸のメイン階段。

 名前のイメージが悪いだけ。これは非常階段には見えないよ。



『ねぇねぇ、フレイヤ様。そこってただの廊下じゃないの?』


 現状、リオちゃんが見てるモニターからは姿が消えているので、情報は私たちの会話しかない。

 それに、あそこで監視してるの暇。だろうしね。

 監視対象は警備室の半分だけれど。いずれ動くものが、何もないんだもん。


「踊り場にテーブルを持ち込んだれば、茶会を開いてもよいな」

『どんな廊下!?」 


 私も話だけ聞いたら全く理解ができないところだ。

 マンションの鉄でできた非常階段ならともかく、空調まで効いてるしね。この非常階段。

 なんなら、自宅の私の部屋よりも居心地、良いかも……。

 


 とまぁ、特に身にもならない話をしながら、筋力増強なしで最上部まで登り詰める。

 ……階段の傾斜も緩いし、歩きやすいし。さっきの鉄でできた非常階段とは大違いだ。



「ふむ、ドアは普通。開けるのに支障は無いのだが。……物見がおるな」

「……ものみ、って。ドアの前で見張ってるの?」

「そう言うことだの」

「あの……、どうすれば」


「アリスよ。うぬの目の前におるのは最期さいごの魔女、の異名を取る大魔導師であるぞ。弱体化しておるとはいえ、出来ることはいくらでもある。燃やすばかりが能だと思っておらぬかや?」

「……壁抜け、みたいな?」


「その通り。……ふむ。石ではなく石膏せっこうの壁、中は中空? なればむしろ好都合、問題はない」

「え? 見えるの?」


 建物の構造なんて聞かれても知らないし。

 壁って石膏でできてるの? 石膏ってあの白いヤツ?

 なんかコンクリート的なものじゃないんだ。


「多少は透視などもできるさ、儂は最期の魔女であるぞ。……ここより先、用心のため口を聞くなよ? 壁を抜けるのでわしに手を」


 手をつないで、ドアの横。何もない壁をそのまま通り抜ける。

 ジャージを着て槍を持った人がドアの横に立つ。

 槍の穂先が照明を跳ね返してギラリと光る。

 見えない、聞こえない。だから気が付かない。……大丈夫なんだよね、ホントに。


 ……で。

 帝国側も服装については、裕利君と同じ発想になったんだね……。

 あきらか外国人の見た目だから、実業団の選手みたいに見えれば。

 っていうことなんだろうけど。


 でもさ、ジャージさえ着ればなんでもあり。とはならないからね、ホントに。

 あからさまにおかしいから。



 非常階段の先は、そのまま三〇畳以上あるようなホールみたいになってるけれど。

 もしかすると体育館みたいな広さのあるリビング、っていうことなんだろうか……。

 全般的に全部おかしいんじゃないの? この部屋。


 男の人が一人だけ座るソファのまわり、剣や槍を持ったジャージ数名とスーツの女性。そしてジャケットを羽織った髪の長い男性が囲んでいる。



「……っ! リオよ、モリガンも。答えずともよいから聞け。――魔導皇帝が、儂の目の前におる!!」



 小声で話してるフレぴょんの声がひっくり返ってる。 

 あのジャケットの人が皇帝なのかな?

 このが慌てるくらいだから間違いなく皇帝なんだろうけど。


 ……ん? あれ?

 背中しか見えてないのに、なんで皇帝だってわかったの……? 


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