マイスターの条件 Side : Yuri's buddy "Alice"
「下まで降りて持ってきてくれたのか? これ。うれしいが、さすがにババァが一緒でも危ないぞ?」
「んーん、現地調達。……さっきの部屋の机の上にね、いっぱいあった」
「なんと! 私としたことが、それにすら気が付かないとは、不覚……!」
「……そこまでのことじゃ、ないよね」
ここ数日の彼女、一番のお気に入り。
机の上に置いといてくれた人、ありがとう。
「サマナーがマイスターと呼ぶ存在、とすれば。サマナー以外なら錬金術師か」
「人間的に優れていてもいいんでしょ?」
錬金術師はかなり上位でレアな職業だ、と前に裕利君から聞いた。
でも召喚士は能力値では人の値打ちを計らない。
今のモリちゃんと裕利君の関係が、まさにそうだと思うんだけど。
「そうだな、さっきの話を蒸し返すようだが。……私は初めて会った日に、姉御に頭を割られてもおかしくなかった。今の私があるのは、ひとえにユーリとアリスが、リオさんにとりなしてくれたおかげだからな」
「あのときは、別に、なにも……」
むしろ一生懸命、裕利君が彼女を勧誘してたようにしか見えなかった。
――能力的に非の打ち所がない。何とか帝都まででも良いから、一緒に居てもらいたいんだよ。
実際に、あとで聞いたら本人もそう言ってたし。
結局居残ってくれた上に、彼が一番心配してたアッちゃんとの関係性も悪くない。
普段の言動に反して、中身は悪い娘じゃないしね。
「だがしかし、どうだ。精霊争奪戦の時のユーリと東ゲート事変のアリスを見れば、実力も十分過ぎだ。リズの言い草ではないが、自分よりも強いものをどう守るつもりだ。という話になる」
「リズねぇさんは、でも、法皇様の……」
「法王の大言壮語、と言うわけでもないぞ。直接は聞いていないが、イストリパドオア戦に関しては、あの副司祭様さえも。マイスターが一人でヤツの足を止めた手際を見て、ほめていた、というか素直に驚いていたそうだしな」
情報収集に関しては、私情を捨てることができるはずのモリちゃん。その彼女が直接話を聞いてない?
やっぱり、ホントにキライなんだ、メルカさんのこと。できる限り関わりたくないってとこかな。
とは言え東ゲート事変以降は”シブリングス“につてができたので、その辺は嫌なら本人にあたる必要はないんだろうけど。
「このチョコに気を取られ過ぎた。――あのアマゾネスの”マイスター“の話だったな。……たぶん錬金術師なのではないか、と思っている」
「……錬金術師、って。金を作っちゃう人?」
ゲームやら漫画やら、錬金術は魔導や魔法、スキルの親戚みたいな感じの扱いだが。
錬金術というからには”金“を作ってなんぼではないか。
個人的にはそう思っている。
良いか悪いかはおいといて、金を作ってるシーンの無い錬金術師も結構居る。
錬金術を調べてみたら。お金儲けの他、本来の意味として、
――鉄の他、価値のほぼ無い鉱物から金や銀を生成する技術の総称。
――広義では不完全、不安定な物質から、完全な物質を生み出すという意味でも用いる。
――※錬金術内では、金は現存する鉱物で唯一の完全物質とみなしていることが多い。
と書いてあったし、なので。別にムリに金を作らなくても、それも間違いでは無いんだろうけど。
「あぁ、その辺からか。……それができないヤツなら、それは錬金術師じゃない」
ランドでは錬金術は金が作れるのが基本なんだ。
なんかスッキリして良かった気がする。
「……その人は、金作り放題、なの?」
「言葉の上ではそうなるんだがなぁ。……例えば王都に五人ほどいる、そこそこ腕が立つと認められている錬金術師。そいつらの誰かが、このチョコと同じ量の金を作るとする」
「うん、うん」
でも、このチョコバーが金だとすると相当な価値になるはず。
これが作り放題、ときたなら。錬金術が使えるだけで大金持ちだ。
ランドに帰ったら、錬金術のスキルを何処かで取得した方がいいかもしんない。
「その場合に使う材料が、王都の中央大神殿約一〇杯分前後は必要になる。……並の腕なら四〇でも足りん、というほど技量の差が出る物らしいんだがそれはそれ。しかも錬成まで、速くても一年半はかかる。……だから普通は山を掘った方が、早いし安い」
コスパが悪いなんてもんじゃない。
たぶんひかえ目に言って大赤字、作れば作るだけ損するレベル。
「錬金術師と認められるには七日以内で三粒、砂金を作ればいいことになってる。これなら材料は洗濯用の大たらいで2杯あれば済むし、時間も標準なら三日もあればいいからな」
「あれ? 実は結構、簡単?」
「但し、試験のあとは二ヶ月ほど。なにも錬成できないくらいに消耗するらしい」
作り放題とは言わないよね、そういうのは。
「だから錬金術師が金を作れるか? という問いには、もちろん。というが、作り放題か? といわれると、まぁ作る気があれば。と答えるしか無い。そういうことだ」





