表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
352/470

地図の読めない女 Side : Yuri's buddy "Alice"

 彼がゲーム世界に“行く”前の仕込みはもう一つ。

 このフロアの図面をあえて印刷した紙に、赤いボールペンで○と矢印、数字が書いてある。


「これってこのフロアの図面、なんだよね?」 

「……そうだね。この○はカメラ、っていうんだっけ? それの位置、かな? あ、矢印が映してる方向だね」


 リオちゃんの言葉で、この図面が何を意味しているのかようやく分かった。

 リオちゃんとフレぴょん、二人とも地図は普通に読める。

 フロア平面図なんか。見ただけで自分の現在位置から主要な出入口まで把握できる、ってなもんだ。


 うーん、典型的な地図が読めない女である私が、このパーティに同行してる意味は何だろう。

 なんで私が裕利君とセットで呼ばれた?

 ちょっと根源的なところまで考え込んでしまうところだが。


「ならば見るべき画面は絞られるな、あのエレベーターという機械が六台、階段が五箇所。各々今は扉が閉まっているから、動きがあればすぐわかる」

 

 分割された画面は五〇以上あるが、そうなれば実際に見る画面はかなり絞られる。

 エレベーターと階段が両方映ってる画面もある。

 見るべき画面はさらに減る、という寸法だ。

 ホント。彼はこう言うところ、そつがない。


「時にアリス。マイロードの書いた記号は画面の記号と符合しておるのよな?」

「数字、読める?」

「10種しかない、そのうえ数字だと知れれば造作もない」

「二人で留守番してるときに裕利に教えてもらったから、私も大丈夫」


 この二人が数字を読むことができるから、あえてカメラの画面番号書いてったのかぁ。

 なんか、リオちゃんが会議室班に来るとこまで考えてたフシもある。

 ホントに周到なんだね、恐れ入りました。いやマジで。



「モリちゃんにコーヒー、もっていくけど。良い?」

「あぁ、そうしてやってくれ。口でどうこう言ってはいるが、見るだけで介入できない。というのは、かなり溜まるものがあるであろうよ」


「でも耳のヤツ、ヘッドホン? あれ取ったらこっちの声は聞こえるんだよね?」

「先ほどアリスと話している間、明らかに画面の中の動きがにぶった。本当に危機的状況ならむしろその手の介入はしにくいであろうな、とは思う」


 いったん大部屋に出て、テストプレイのデスクの上、チョコバーやらポテチやらかき集めて戻る。

 あっという間に大量のお菓子が手に入るんだけど。

 ゲームをテストプレイするのにお菓子、こんなにいる?


 それを会議室のテーブルの上においてチョコバー、グミの袋を持つと、フレぴょんがコーヒーを入れてくれていた。

 もう一度テストルームへ。




「モリちゃんっ……!? なにか。あった、の?」


 かなり硬い表情で脂汗を浮かべつつ、モニターを食い入るように見ている。

 彼女のこんな顔はあからさまに珍しい。


「なにかどころではない、ホンモノの化け物が出てきた。アマゾネスのサマナーなど、聞いたこともない。だいたい、わたしはアマゾネスにだってあったことすらないぞ。ニケちゃんたち獣人とは角度の違う、対人戦闘を主にした生粋の戦闘種族だが。……あの強さはそれとも別物、だな」


「それは、……すごく強い感じなの?」

「姉御とニケちゃんが、マイスターの逃げる時間を作るために即座に死を覚悟した。それも、まるで時間稼ぎにすらならないのを理解したうえで、だ。――あの二人がコンビを組んで、まるで勝負にならないような、そんな相手が普通にいるなど。思ってもみなかった」


 ――ふぅ。ため息を一つつくと、持ってきたコーヒーに砂糖とミルクを三つづつ入れ、かき混ぜると。――くいっ、と半分くらいあおる様にして飲む。


「熱っつぅ……。とは言え、ハナから向こうに戦闘の意思が無かったのは幸いだった。ただし、何処かに連れていかれるらしい」


 画面上はなんか、ぞろぞろと大人数が移動しているのが裕利君、ニケちゃん、アッちゃんの視点で表示されている。

 字幕が次々表示され、裕利君視点に関しては、それを音声にしたものも流れているが。


 命のやり取りをしようという感じではない。

 モリちゃんから”アマゾネス“、と呼ばれた彼女以外は全員顔見知りのようだし。

 何処かに連れて行かれるのだと言うが、連行されている風には全然見えない。


 裕利君は斜に構えてやる気のない風を崩さずに。でも、どうでもいい会話が途切れないようにしつつ、いくらでも情報を引き出そうとしてる。

 この辺は最近、何となくわかる。彼は彼でコミュ力は決して低くない。

 ますます、私のここにいる意味。それを考えてしまうところだが。


「捕虜になった、とかではないんだよね?」

「一応カタチの上では招待された客人なのだそうだ。……マイスターにも考えがあるようだし、ならば展開をしばらく見るしかない。三〇分も歩けばアジトに到着すると言っていたしな。私もいったん、休憩でよかろう」


 彼女はチョコバーを手に取ると、――ただ歩いているのを見ていてもな。そう言いつつ、何気なく包み紙を開けてかぶりつく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ