わりと話はできる
申しわけありません。
投稿、色々ミスりまして急遽いま。と言う事になりました。
……明日はいつ通りの予定です。えぇ、いつも通りですとも。
アテネ―がどこからか取り出したロープで花押三姉妹をぐるぐる捲きにし、ニケが武器を拾い集めて俺のところに持ってくる。
クナイとスロゥナイフが合わせて四〇本以上? 竜胆か、これ。
いくら花魁風の衣装とは言え、どこに隠してたんだよ、こんなに。
「切れ味が良すぎてな。両刃だし、どう手加減したらいいかだいぶ迷った」
さすが業物のサーベル、ランクで行けばSSクラスなんだろうな。あれ。
迷った。というアテネ―は最速で接近して、抜刀せずに柄での鳩尾一発、手数の多い竜胆に何もさせずに堕した。
「たぶん、軽く当たっただけで身体が真っ二つになっちゃうんだよ、これ」
ただの棒でそうなるのは、お前の振り回す速度が速すぎるからだ、ニケ。
仮にシールドで受けても粉々になるのがオチだし。強すぎるぜ、ただの棒。
で、こっちもこっちで棒を置いて当身二発で終わった。
結局二人とも。殺すな、の命令が一番面倒くさかったらしい。
「このお人に限って、おなかまの方が強いなど。意外でありんすなぁ……」
「重課金勢に知り合いがいるなど、聞いていないぞ!」
「……さすがに強すぎない? ゲーム廃人クラスだよ」
実はパーティやクランの棟梁でもあり、エースでもある。
というのが俺の立ち位置だったからな、かつては。
だからこそ最近、ソロでごそごそしてても殺されなかったわけで。
実は、花押三姉妹が認める程度に腕はあるんだよ。
「この二人は、重課金勢でもゲーム廃人でもないとだけ言っておく。……ちなみに誤解は最初に解いておきたいんだが、ログアウト出来なくなったのは俺のせいじゃないからな?」
「違うの? あのスライムは?」
「達成可能率一割弱のミッションで、運営が一儲け企んでやがったからな、あのスライムは嫌がらせのつもりでやった。……こうなるのがわかってれば一〇〇匹単位で放流すりゃよかったと思ってる」
二十九匹でも一二〇人を助けた。
実際三〇〇匹程度ならすぐ作れる体制にはあったんだよ、あの時。
「どういうこと、……でありんす?」
「さっき、ヴィルキント辺境伯領のギルドで話を聞いてきた。中原の国境付近はグレイングの発動以降、街も人もほぼ壊滅、だそうでさ。それでもNPCはともかくプレイヤーなら。スライムを潰せばセーフゾーンには入れたはずだろ?」
セーフゾーンに入れなかった場合は、灰色化、規格外モンスター、ゾンビ兵の三段構えで殺しにかかるわけで。
たぶんどれにやられてもキャラロスト濃厚だし、ゲーム内でも一番人が集中してる中原の、中央街道沿いでこんなことをするとか鬼畜に過ぎるだろ、さすがに。
まして今。
キャラロスト判定になった場合。中の人がどうなるのか、なんて考えたくもない。
「貴様がログアウト不能を仕込んだわけではない、と?」
「当たり前だ、俺だってあんときは”変わり身の術“で、たまたまチュートリアルサバからログアウトになったんで助かっただけだ。……自分でやって自分でひっかかってちゃ、ただの間抜けじゃねぇか」
「複数アカウントは一発BAN案件じゃないの?」
「運営が仕込んでるのにBANも何もあるか、っての」
「運営がこの事態を引き犯したというのか!?」
「コード引っ張り出して確認した。ログアウトボタンがなくなったのは、間違いなく運営の仕込みだったよ。強制ログアウトまでできなくなった理由までは知らんが」
たまたま、イベントなしの初心者サーバー経由だったので帰れた。
このくだんねぇログアウトボタン隠しも、プログラム上はイベント扱いだからな。
俺専用のイベントだったはずが、全プレイヤーに波及してるが。
「今は帰れるの?」
「俺は今んとこ、別の世界と行き来できてるだけなんだ。……それは元の世界じゃ、ないしな」
行き来してるとすれば。灰色の東京とか、VRじゃないリアルなランドとかだが。
元の世界じゃないだろうな、両方とも。嘘はついてない。
「ほかのゲーム内でありんすか」
「某らもAdME以外のゲームをやっておくべきだったな、椿」
「リアルが忙しすぎで他のゲームまで手が回んない、お姉達はパートだからいいだろうけど、ブラック企業の中間管理職が毎日九時にかえってくるって、実はすごく大変なのよ?」
納得してくれたようだし、こんな感じで誤魔化しておこう。
こいつ等には、迂闊にログアウトボタンの位置は教えない方がいい。
”本体“が消え去っていた場合、どうなるかなんてわからない。
俺たちとはその辺の前提条件が違う。
俺たちは”帰れば“間違いなく身体があるんだ。





