使ったことのある人は少ない
「亜里須はフレイヤと組んで、この部屋、というかフロアの監視を頼む。会議室は完全に袋小路だからな。エレベーターと階段を重点的に頼む。フロアに侵入された時点で詰み、ってことになる」
一旦ゴーグルを外してさっきの会議テーブルに戻ると、多分司会の人用の席についてPCだと思われるモノの電源を入れる。
さすがに最重要な会議室らしく、設定次第で建物内の全てのカメラに繋がる。
とは言え。さっき電源入れ直したけど、カメラが復旧したのは廊下とか階段だけみたいだ。
何も見えないよりはましだけれど、そうなるとカメラを潰したのはある程度IT関係の分かるやつか、このビルのシステムを知ってるやつ?
ますますヤバそうだな……。
まぁそれはそれ。何も見えないよりはいい。
会議室のメインモニターを分割してフロアの全エレベーターと、階段室に繋がる廊下を表示させる。
「……まぁ、そうだろうけど」
「マイロード、具体的に儂らはなにをどうすればいい。このモニターの監視をすれば良いのか?」
「そういうことになるかな。お前らはフロアの平面だけでなく、カメラの位置関係も図面見て頭に入れといてくれ。何かあれば、賊の侵入した逆の入り口から逃げるから経路もみておいてくれ。エレベーターだけで無く階段も使えるかどうか、図面で確認しておいてほしい」
「……おぉ、結構大事な役目だね。でも階段で二〇階以上って、わたし、ムリかも」
まぁ亜里須はな。いざとなったらニケに担いで貰おう。
……よく考えたら降りるだけとは言え、俺も人のは言えないな。多分。
最悪、亜里須はアテネーに頼んで俺がニケに運ばれるか……。
「はっはは……。なにしろ逃げるのは得意ぞ、任せよ」
嘘を吐け! 正面からケンカする方が大得意じゃねぇか。
だからこそ、攻撃力皆無の亜里須と組ませてるんだけど。
「なんかそこだけ聞くと、お前だけ逃げそうだな……」
「七人で移動する際の脱出ルートの選定まで込みだ、という話であろ? もちろんわかっておる」
「冗談だよ、その辺は疑ってない。なんかあったら神の指示はぶん投げて下に逃げる。その他にもなにかあれば俺以外のリーダーなら歳の功、フレイヤしかいねぇ。任せるぜ?」
「理解はするが、そういう言い方をせんで欲しいものだな……」
お前の場合、純正ロリババァなのには間違いないだろうが。
女性に歳の話は。ってやつか?
人間関係ってのは難しい。
「それと亜里須、最悪非常脱出装置で下に降りるのも考えておいてくれ、場所と使い方、みておいてくれよ?」
「……あのロープで下に降りるヤツ? あの、わたし、怖いので使いたく無いです」
「文字通りの緊急対応だ。高所恐怖症ってわけでも無いだろ。俺は中学の時、四階からだったけど、やらされたぞ」
避難訓練の時にじゃんけんで負けて、アレで降りることになったんだけど。でもやってみると、実はそこまで恐くなかった。
とは言え。高層ビルで使う場合はどうなんだろう。
「まぁ、何かあれば聞こえてるから声かけてくれ」
「……それはそうだよね」
単にVRゲームにログインするだけだから。
もっとも。素直にログインできるかどうか、わかんないけど。
じゃ、まずはアテネーとニケのアカウントを作るとこからやろうか。





