貸切会議室
「これはまた……」
「……すごい、ね」
二六階。テストルーム、と書いてはあったが。
バックヤード風のところについたエレベーターを降りて、ちょっと狭い廊下をから扉を開けると。
ところどころに見える柱以外は壁もほぼなく、ほぼフロア全体がバカでかい一室になっている。
その空間には全てデスクと、ちょっと高級そうな椅子、そしてモニターとキーボード、ヘッドセット。半分以上にはVRゴーグルやVRコントローラーも繋がってる。
それら全てがほぼ最新鋭。
何人分あるんだよ! これ。
その他【AI解析】、と天井からプレーの下がった一角は、全席モニターだらけ。
一人でバカでかい7枚のモニターにキーボード三組とか、使い切れるのかアレ?
さらに【遠隔監視操作技術】、と言うプレートの下には、災害派遣なんかで使う、精密体感用の全身取付用端末や、キャタピラーの付いたカメラや四足歩行型のデバイスなんかが10種類以上置いてある。
【大江戸工科大 産学共同医療技術開発プロジェクト】の看板の下には、たくさんのディスプレイやゴーグル、遠隔操作用の手袋はもちろん。
遠隔手術用のベッドや患者用の人形、ロボットアームの端末まで二組ある。
【(株)スグリ/村主組マシナリー(株) 建築施工/管理 支援機器試作その3】のプレートの下には、一〇枚ほどのタブレットと小型のロボットやドローンが数台ずつ、二台のPC、画面には図面と工事現場の写真。
その他、マネキンが装着した着衣型のロボット数種類や、自動で足場を組み立てるロボット、壁際には人間を鷲掴みできるような、バカでかいロボットアームまである。
確かにオンネ自体は、ゲーム以外のIT技術についても日本トップの会社なんだけれど。
ここまでとは……。
「これはまた。……ここは執務室であるのよな? 普段は何人が働くのだ。こんな塔の上で、だぞ? 大神殿の第一礼拝堂が何個入るというのだ……」
「なにより、たったこれだけの柱で何故部屋が崩壊しない。魔導を感じないが、ならば材質? それとも柱か梁の組み方に秘密があるのか?」
「あのさ、モリガン。今はちょっと急ぐからさ……」
「すまない、マイスター。つい。 ――ところで、下で昨日までマイスターが弄っていたのとカタチは違うが、これ全部がピーシーというヤツか?」
「全部ではないな、半分くらいだ。……スマホの他にも、家庭用ゲーム機のコーナーもあるな」
ディスプレイはあるけれど、PCの代わりにスマホやタブレットが置かれた机も結構ある。
互換性の確認のためなのか、旧型のゲーム機まで置いてある。
ほんと、とんでもないわ。ここ。
「……旧型コンシューマーって書いてあったけど、ポストタウン・ウルトラ3初期型が旧型なんて。すごく、新しいのではないかしら」
「まもなく5が出るし、旧型でいいだろ。お前の言う旧型の定義とはなんだ?」
「もちろん、ゲームポストタウン・2nd以前」
「……ポストタウン・3rdだって俺たち生まれてないぞ? 約20年前のゲーム機との互換性なんか、気にするわけないよな?」
レトロゲーマニアというのも業が深いな。
5年前のゲーム機は旧型とは言わないらしい。
そもそもが。古すぎて今のゲーム機で遊べないから、自分でドライバーと半田ごて持って本体を直してるんだろ……。
「これだけあると壮観ではあるが、マイロード。アーカイブされた世界を覗き見るとして、どのピーシーでもいいのか?」
「何かしら条件があるように思うんだけどなぁ。……ん?」
何気なく見渡した部屋の隅。
俺たちが出てきたバックヤードの壁にくっついて、そこだけパーテーションではなく、普通の壁で区切られた空間。
会議室だろうか。いかにも厳重なセキュリティがかかってます。という感じの入り口が3つほど。
その中で、AdMEのロゴのステッカーがでかでかと張られ、横にゲームののぼりも何本か立ってるドア。
【ゲーム開発調整室1】
【16日まで貸切です 制作関係者以外 許可なく立ち入ることを禁ず
- AdME2開発チームリーダー ー】
という注意書きが貼ってあるドアがあった。
【評価試験中/入室不可】 【会議中/入室注意】 【開錠中】
ドアの上に付けられたランプは全部消えているうえ、ドアが半分空いている。
「まずはあそこだな」





