ユーリ君の動向考察 Side : Magical Empire
こちらが二時間以上あとで飛んだのに、ユーリ君の座標を奪い取りつつ目的地に到着している。
というのも時系列がおかしい気はするが。
そもそもリアルに対して転移が絡んだ時点で、時制なんかめちゃくちゃなのだし。
それが超時空転移陣であれば、もはや何をかいわんや。ということで納得するしかない。
それはそれとして。
いきなり見知ったバスターミナルに到着して面食らったのだけど。
同行した魔導師の話では、奪った座標の示す先はここ、スマートテクノパークで間違いないらしい。
なのでテクパの中に用事がある。とすれば。
もちろん、テクパモールやグランタワーパレスではなく、オンネの本社であるスマートグランタワーなのだろうし。
ならば間違いなく彼はここに来る、というのは考えなくてもわかる。
皇帝がいる以上、彼と正面からあたるのはできれば避けたい。
裕利君については目標座標が消失したので、到着個所は最大で5リーグ前後ズレた可能性がある。と聞いた。
バスと電車が動いているのは見えたが、人間の手を離れて制御されている。
何故動いてるのかも含めて、普通は危なくて使わないだろう。
とはいえ、一リーグ約五キロとして、最大三〇キロ弱。
普通なら徒歩でも一時間、四キロ以上は歩ける。高校生だというなら距離はもっと稼げるはず。
東京の何処に着いたのか、歩いてくるのにも直線ばかりではないとはいえ。
どんなに遅くても、明日の昼には間違いなくテクパに入れる。
裕利君が誰を連れて来るのか知る由も無いが、彼の侍従達が同行しているなら戦闘力は申し分ない。
妖精争奪戦の時は奇襲が上手くハマって、殲滅一歩手前まで押し込んだが、本当のところはどこから見たって全員、立派な人間兵器だ。
あのイストリパドオアを押し返すとなれば戦術兵器と言って良い。
さらにはあの、フレイヤ・デ・ラ・エッシェンバッハまでが侍従の列に加わっているという。
それに引き換え、こちらは対抗できる戦力とすれば私一人。
なにしろ直接戦闘など避けまければならない
できることなら、彼が来るまでにはこちらの用事を片付けて、テクパの敷地からは撤退したいくらいである。
問題があるとすれば。
皇帝からここにどんな用事があるのかを、今のところ聞いていないことだが。
皇帝と私は、とりあえず大小のベッドルームに。
連れてきた近衛騎士は男女2名ずつではあるが、文句も無いようなので部屋のどこかで勝手に寝るように言ってある。
どうせ部屋の入口には、カタチだけであろうと誰かが歩哨に立たないといけない。
ならば、こちらにいる数日は仮眠しかできないから問題はない。
部屋はトイレどころかウォークインクロゼットのなかまで全て、完全空調で気温24度、湿度60%をキープ。
床のカーペットだってやたらに毛足が長いから、床で寝ろ。と言われようが全く問題がない。
ベランダで寝ろ。と言いつけたところで、こんどは焚火にあたりつつロッキングチェアなわけで。
いくら私がエライとはいえ、この部屋のどこで寝ろと言い付けようがランドの貴族のお屋敷、どころか皇帝宮よりも。ある意味豪華で過ごしやすい。
パワハラになりようがないのだ。それがたとえ廊下でも。
それに正直な話、デカい椅子やソファの類は部屋中に余ってる。
どこで寝ることにしても、基本的には仮眠どまり。ならばありえないくらいに快適だ。





