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夜番第一組

「……面白かったか?」

 

 普段からするとかなり夜更かしになるはずだが。

 立ち上がった耳、先端がゆらゆら揺れるしっぽ。

 聞くまでもなく楽しそうではある。


「うん、面白かった! 僕は字が読めなかったから、ホントに、お話とかしらなくて」


 字が読めないのもそうだけど、昔話をしてくれる大人が居なかった。

 と言う事もあるだろうな、コイツの場合。


「とはいえ、ランドの物語ではないわけだが」

「僕は確かに知らないんだけど、でも。面白いお話に世界は関係無いんじゃないかな。……ところで。この服、かっこいいね。大事な時用に作ってもらえないかなぁ」


 表紙を指さしてジャージのニケがにっこり笑う。

 正装用に陣羽織ってこと?

 チャイナドレスだっておまえは普段着にしてるけど、正装でいけたはずだぞ。


 この本を渡したら、【シブリングス服飾部】は喜んで作り始めそうではあるけれど。

 多分【日本一】って書いてあるのぼりと、桃の絵が付いたハチマキもセットで作るだろう。

 それ、冗談でもシブリングス(あのこたち)に言っちゃだめだぞ。





 寝ている間、夜一〇時から翌朝五時まで。

 二人一組で三班にわけてモニターを監視することにした。


 始めはオレとニケ。

 その次が亜里須とフレイヤ。

 早朝の一番眠いところはあまり寝なくて良い二人、アテネーとモリガン。

 

 一人。シフトに入ってない人がいるが、彼女。リオについては。

 朝まで寝せておく。と言うことがリオ以外の全員の賛成で決まった。

 俺以外も、ここ暫くやたら疲れて見えるので心配はしていたようだ。

 本人はブゥたれていたが、シャワーを浴びて、仮眠室のベッドに入った瞬間に寝付いてしまった。


 アテネーの話では、毎晩〇時近辺まで何かの書類の整理やら片付けものやらしているらしく、その辺は偉くなってもわざわざ面倒事を抱え込んで。如何にもリオらしい。


 但し。アレを納得させるのは俺では無理だし、侍従の皆さんはむしろ彼女には従う立場。

 フレイヤでさえ、流れを間違えば説教される始末。


 なので説得係として、亜里須も一緒に寝ることになった。

 何故だか、亜里須の言うことはそれなりに聞くんだよ、アイツ。



 と言う経緯があって、最初の組。

 本来はニケとフレイヤにしようと思っていたのだが、俺とニケ。二人でモニターの前にいる。

 もっとも。主要な通路で動くものがあると警報が鳴るように仕込んでおいた。

 やることとすれば、ただ起きてるだけ


 で。何故だか本が欲しい。と言うニケの求めに応じて、亜里須が本屋から持ってきた『ももたろう』の絵本を開いている。


 とはいえ、ニケに日本語は読めないので。これを俺が読んでやっていた、という次第。

 ……意外と気恥ずかしいな、絵本の読み聞かせって。



「ありがとうユーリ、すごく面白かった」

「それは何より」

 そういってもらえると、恥ずかしかった分が報われる気がする。


「でも、この世界では小さな子供も本を読むの? この本だって普通の子たち用、って言ってたよね? 貴族様とか学者様じゃなくて」

「ん? 絵本、か。始めは読んでもらって少しづつ字を覚えるかんじかな」

「小さな時から学業の修練をしているんだね、すごいや」



 ……うん、違うから。

 もっともニケが特別、と言う訳ではなく。ランド全般、識字率は四割強といったところ。

 NPCだけならもっと低いだろうし。だから、大雑把に半分以上の人たちは読み書きができない。と言って良い。


 プレイヤーに関していえば、ゲーム上では字幕が出るので、読めないが書いてあることの意味は分かる。

 もちろんゲーム上、書く必要が無かったので。プレイヤーサイドでもデフォで書ける人はいないはず。

 官吏かんりや書記、文筆家なんて職業カテゴリが選択できなかったからだ。


 現状も字幕は出ないが、なんとなく意味はとれる。

 長文になると若干支障が出るから、辞書を作ろう。

 なんて亜里須が思う程度にはわかるのだった。


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