表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
289/470

思い出せない

「一応、エラくはなったよね。私」

「それだけじゃないって話。真面目な話、人徳ってヤツだ。――それに街を離れたら、まともに料理できるのはお前だけだろ」


「アリスやモリガンさんも実は最近、結構できるんだよ?」

「モリガンは聞いた。亜里須もそうなのか。……あ、ウチのメイド長……」

「うん、アテネーさんの話は。今はしないで……」


 

 原因はたぶん、亜里須のコミュ障と一緒。

 設定やキャラ付けのところで


 【器用だが料理だけはできない】


 みたいなことが書いてあるんだろうな。

 モリガンと違って、実用的な部分でもあれだけなんでもできて。でも、料理だけができない。なんてのもおかしな話だもんな。



「あと、私に関して言えば。もともとの名前は知ってるんだよね? 確かに貴族なんだけど、おうちは貧乏だったからね。メイドさんも執事さんもいないしさ、なんでもできないと、生きていけなかったんだ」


「その辺、どれくらい覚えてんだ? ……あぁ、いやゴメン。喋んなくて良い。これは俺が悪かった」


 忘れてるなら思い出すことも無い。

 必要がないから“忘れた”んだろうし。


「良いよ。みんな気を使ってくれてそう言うけど、別に何も悪いことないんだから。……ただ、家族のことだけがすっぽり抜けてるだけ」


「その時点でもう大概だろ」


「メル姉の話では。心が壊れるのを防ぐために、自分で忘れたことにしてるんだろうって」

「それってつまり」

「うん。もしも思い出したら、それはとんでもなく大変な記憶も一緒に思い出すかも、……知れない。みたいな? 感じかな」



「ますます悪かった。せっかく忘れてるなら、それは思いだしちゃダメなやつだろ」

「……そこはみんな誤解があるかな。思い出したいんだよ」


「気持ちはわからんでもないが、でも……」



「お父様は無理して王都に、使用人も雇えないのに結構おおきなお屋敷を持ってた。お母様はいつも怒っていたのに、でも優しかった。それは覚えてる」


 何処かの父さんは、晩酌を削り、お小遣いを減らしてまで、私鉄の駅のすぐ近くに一戸建てを買った。

 そしてその奥さんは、子供達には口うるさくガミガミ怒ったが普段はだいたい笑っていた。

 ……あったことは無いが、俺はリオの両親の顔は知ってる気がする。


兄様にいさまはいつもヤル気がなさそうで、家から出ないでゴロゴロしてた」


 お兄ちゃんだけ、扱いが非道くないか!?



 まぁたぶん。お兄ちゃんの顔は、俺が毎日鏡で見るのと同じ顔をしてる気がするし。

 仲良し兄妹きょうだいだったんじゃ無いかと思うが。


 ――せっかく良い天気なんだから、たまに外に出たら良いのに。

 ――色々忙しいんだよ。

 ――ゲームしてるだけじゃん。

 ――あのスクワルタトゥレさんまでもう一歩。これはもう、自慢できるレベルだぞ?

 ――引き籠もりのお兄ちゃんを、どうやって自慢するのか。やり方がわからないよっ!


 うん。……俺の扱いも非道かったよ。思い出すと。



「なのに、貴族の息子としては問題無かった、むしろ上手くやってた、……気がする」

「……気がする、か」


 リオのお兄さん。多分、俺と同じ顔をしてるんだろうし。

 うまくやってたかどうか、その辺、ぜひ知りたいところだけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ