防災センター
「テーブルはわざと低いのか。面白いな。この平たいクッションを尻に敷くのだな?」
「この鉄の水筒にお湯が入ってるの? あっちぃ! 押したらお湯が出たよ!」
――火傷するからな? って言うか、ニケもコンビニで一回見てるよな? 電気ポット。
「茶器が独特であるな。どれ、みなにババ様が茶を入れてやろうぞ。……ほう、茶葉が緑であるな。袋に入っているのは? ――そのまま、と。作法は何かあるのかや?」
……ティーバッグに作法も何も無いと思うぞ。
それと、事実ではあるんだけれど、中学女子の見た目でババ様とか自称するな。
もうそれは、すごくイタイ娘だよ。
そう見えるようにこのカッコ、なんだけど。
服装で惑わす。作戦的にはあたりだけれど、その成果を試す相手がいない。
現状、俺だけが地味にダメージを受けている。
「モリィ、これお茶……。なの? ちょっとシブいし、ニガいよ?」
「そういうもののようだぞ。ふむ、これはこれで悪くない。……マイスター、これは食べ物だよな? 食べても良いか?」
テーブルの上のお茶うけか。
まぁ現状。俺達以外に食べる人、居ないしな……。
お茶菓子も、もなかにミニようかん、薄皮まんじゅう。
何でここまで和風でそろえてあるの?
「食っても良いけど、みんなでわけろよ」
さっそくモリガンとニケがちゃぶ台に殺到する。
どうせ誰も摘まむ人が居ない。
悪くなるよりはありがたくいただこう。
「モリガン、私にその四角いのを取ってくれないか?」
「昼に食った菓子とは甘みが違うのぉ」
「この丸いのの中身、あんこって言うの? 私こっちの方が好きかも」
みんな喜んでるようだし。ダメになるよりは、いいよね……。
「それで、主殿。当初言っていたベースは、この部屋で良いのか?」
「あぁ。思ってたより状況が良い、ここで良いんじゃね?」
もしも誰かが建物に出入りすれば目で見えるし、モニターでも確認できる。
出入りの管理窓口やモニター室を兼ねた事務室はやたらに広くて、二〇以上のデスクがあった。
部屋を出る時に被るらしい帽子やヘルメットは五〇以上。
普段はかなりの大人数がこの部屋に居たんだろうな。
今いる休憩所も畳の部分だけで約十畳以上あって、キッチンまで付いている。
「ねぇ、アリス。ヤカンが置いてあるけどやっぱり竈が無い。どうやってお湯湧かすの?」
仮眠室も結構立派な2段ベッドが四つ。かなり広い更衣室。それが二部屋ずつあるのは男女別なんだろうな。
「ベッドはそこまで変わらないんだね」
「服を着替えるための部屋? クロゼットと言うよりは倉庫の様だの」
結構本格的なシャワー室も2組ずつあって、これもやっぱり男女で分けてるんだろう。
おいてあるシャンプーやボディソープの種類が明らかに違う。
「おっと……! 柔らかい筒の先から、……水が出る? なんと便利な」
「姉御、それ。お湯も出るそうだぞ?」
基本的に七人で行動するなら、下手にホテルの部屋に入ってるよりこっちの方が居心地が良いだろう。
生活スペースも寝る場所もキチンと確保出来そうだし。
何より全員揃って一部屋にいられる。
数日生活するならなんの問題も無い。
どころか、ランド基準ならちょっとした貴族の館より快適なくらい。
しかも、誰かが建物に出入りした時点で気が付けるし、スルーしてもモニターで追える。
この辺は予想通りだな。





