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いつも行き当たりばったりではない

2022.2.2

本文を一部加筆変更しました。

「とりあえずポケットに入る分だけだぞ。他に生き残ってる人が居るかも知れないからな」

 チョコレート一粒、ビスケット一枚だって助かる事はあるかも知れない。

「あぁ、ニケ? 歩いた時に落ちても困るから、はみ出すのもダメな?」

「え? はぅ……」


 このコンビニが誰かを救う可能性だってなくはないのだ。

 唐揚げが三日放置されていたけど。この店を見つけていないだけかも知れないし。


 なにより。……あとで払わされる可能性も、十分あるからな。

 可能性がある以上、あまりに目を覆うような略奪は困る。

 あくまで、緊急避難的に”借りる“だけだから。


「……で、ゆうりくん?」

 腹も膨れてお菓子あさりもだいたい終わり。

 イートインスペースで、ミネストローネスープをすする俺の横に亜里須が戻ってくる。


「ん? どした?」


「……あのね、このあとの、スケジュール。なんだけど」

「あぁ。――フレイヤ、残り時間の正確なところは?」

「ふむ、三日半、と言うところだな。四日後、午後三時前後に強制的に戻されるようだ」


「自分で魔方陣組んでおいて、ようだ。ってのはなんだよ?」

「仕方があるまい。出来る、と言うところまではわかったのだが、何ががどうなるのかなど。あの短時間では、やってみなければさっぱりわからなかったのだ」



 それは前から本人が言っていたな。

 本来は一〇年単位で研究する必要がある魔導なんだ、ってさ。

 それを連続で作らされて、しかも出来た瞬間に実際使うなんておかしい。って。


 でも、むしろ一〇年やそこらで実用化できたらおかしいレベルだとは思う。

 ゲームの世界と行き来する魔法陣だぜ?

 ある程度安全が担保されてるだけでも本当はオカシイ。


 ……とはいえ、ぶっつけ本番とかさ。


「帰れなくなったらどうする気だったんだよ……」

「このメンバーならそれでも良いかと思っておったが、時間切れで強制送還されるようだ。――みな、残り時間だけは気をつけるのだぞ?」

「どこにいても戻れるのか?」


「中央大神殿の礼拝堂に戻るはずだが、ランドの何処かに飛ばされる可能性も、未だ否定出来んところなのだ。近所にいる者同士なら、最悪同じところに飛ばされるはずだが」

「近所の定義とそう考える根拠は?」


「お互い手をつなげる距離にいることが近所の条件。……根拠は前回、二人用方陣でリオが戻るとき。三人全員が、東南部のワイバーンの根城に飛んでおる。あの時は、東ゲート近傍に到着する予定だったのだ」

「う。……基本は全員。最低、コンビで行動することにしよう」


 いきなりランドの山の中に飛んだ場合。

 俺と亜里須だけなら野垂れ死にが確定。

 この辺。一〇〇年間以上、お嬢様の生活しかしてないフレイヤも、ちょっと怪しい。


 ワイバーンの餌になるのももちろん嫌だ。

 一応、向こうに戻れば各種スキルが戻るとしても。

 亜里須と二人きりであそこに出たら、俺の光の剣も亜里須の変身も発動にタイムラグがある。かなり危ない。

 よし、必ず亜里須以外と組もう。 




「今日の午後を含め約四日あるわけか……。アリス殿の言う通り、その通りになるかは別にしても、予定は立てたほうがいいだろうな」

「もちろん、簡単に考えはある」


 スケジュール、なんてご大層なものじゃないけど一応の行動予定は考えてたよ。

 さすがに。


「まず今日は、オンネ本社ビルを確認して、その近所でベースキャンプにできるところを探す。今の予定なら二時前後には目標を確認できるはずだ」

「昔もそうであったな。まずは安全に寝られるところを確保する、確かに大事であるよ」


「で二日目、ビルの周辺を確認して異常が無ければ、ビル内部の確認に入る」

「マイスター、ビルというのはあの四角い塔のことだよな? 様子見などせず、直接入ってみたらいいのではないか?」


「俺もそうしたいところだが、何もないとは言い切れないからな。今、現状。何かの理由で人がいないだけかもしれないし。そうなら神が見て来いという部分には、入るだけでも一苦労だ」



 オンネの入っているビルはちょっと変わった作りだが、概ね三階までと最上階がテナントで、本社として使っているのは四階より上。

 セキュリティが生きているなら、オンネの本社部分に入るだけでもロックの解除は相当な大仕事。PCもツールもなしで、俺に解除できるかどうか。

 ガードマンがもし居るならば、入るのはさらに難しくなる。



「ま。明日のうちに神の”オーダー“が何なのか、何を見て何をさせようとしてるのか、わかりたいところだけどな」

 いわれたのはオンネ本社に行け、そしてデータをサルベージしろ。である。

 今のところ、何のことなのか、何をさせたいのか、さっぱりわからん。


「三日目はまるまるビル内部の捜索に充てて、四日目の午前中。向こうに戻るまで何があるかわからんので空けておきたい。基本線はこんなところで状況に応じて臨機応変……ってな感じでどうだろう」


「……それでいい、と思う」

「主殿とアリス殿に異存がないなら我らは従うのみだ。土地勘どころか世界のことわり自体を知らんのだからな」


「立場が逆なら俺も一緒なんだが」

「なんやかやと、ランドに関しては過ぎるほどに詳しいではないか。いまさらあのじじぃの顔を見て、一目でJJと看破できるはマイロードくらいのものぞ」


 ホントのじいさんだったら厳しかったけど、おっさんのままだったからな、JJ。


「なら、ホームに行こうか。……そこじゃなくてあっちな」

「主殿。よく似た入口だが、同じ場所に出るのではないのか」

「こっちは動いてないし、川崎には用事、ないからね」

 コンビニを出て見上げると。改札の上の時刻表には全ての電光掲示のマスに【運休】と書いてあった。


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