人は服装で判断されがち(裏)
着替え、持ち歩いてたヤツが居たのを思い出したんだよ。
バッグをごそごそかき回すたんびに、中身が見えてたからな。
だから持ち物欄に表示されなくても、持ってること自体は知ってたんだ。
――ピュイ!
【とりあえず、部屋に居たのでそのまま着て、自撮りしてみたのだけれど。これで良いのかしら?】
学校指定の赤いジャージを着た亜里須の写真が、メッセージと一緒に飛んで来た。
――着替えるの、早すぎだろ!
しかし、モデルが亜里須だというのにイモっぽく見える。
胸の校章と“樺藤 (亜)”の縫い取りがいけないんだろうか。
……いずれ破壊力抜群だな、学校ジャージ。
伊達にイモジャーとか呼ばれてねぇわ。
でも、だからこそ。
変に容姿の整った厨二病集団。これが全員着るなら絶対ジャージが良い、と思ったんだ。
亜里須でさえイモに見えるんだ。髪の色がアレだろうが、しっぽが生えてようが。
――あぁ、あーゆー感じなのね。基本、触んないでおこう。
と、生き残りがいたとするなら、みんなそう思ってくれるはず
あんまり距離取られても困るんだけど、俺と亜里須は制服だからな。
続いて鏡の前に立った全身の写真。
そして、その鏡の前で、後ろ向きになった三枚目の写真を受信する。
なんで背中にデカく、デザイン文字で学校の名前を書きたがるんだろう。ドコの学校も。
胸の校章と名前だけで十分、アレなのに。
……っていうか。
何に使うか一切説明してないのに、こっちの意図を読んでるの!?
【助かる、ありがと】
【この写真をどういう風に使ったのかだけ。あとで教えてもらえたら、それで良いです】
説明をすっ飛ばして、一切話をしてない俺も悪いけど。
――なんで敬語? しかも“なにか”に使うこと前提だし!
俺の返事まで含めて、やたら変態的な文脈になっちゃってるじゃねぇか!
早めに誤解を解いておかないと、あとでネチネチやられるな。
いや。……これは間違い無く、ひゃくパーやられるヤツだ。
別に、ジャージに欲情する趣味はねぇわ!
SNSをオンラインに切り換え、スピーカーホンをオンにする。
亜里須のアイコンの横。即座にオンライン/音声チャット承認、の表示が出る
法王にスマホの画面を見せる。
「見て欲しいのはこの服だ」
「うん? これはアリスさん、……か?」
「見て欲しいのは、中身じゃ無くて服の方な?」
「だからわかるように話せ。この装束がどうしたか?」
「神職、主にリオがこれを着た場合。何か宗教的な問題はあるか?」
制服、と言うのも色々面倒くさそうなので、全員揃いだと言うなら、ジャージはどうだろう。と考えたのが最初。
実際、アテネーやフレイヤあたりは動きづらそうにしてるし。
運動用の服なんだから、動きだけは担保出来るんじゃ無いか。と思ったのだ。
作るのだってジャージだったら、制服よりは簡単なはず。
亜里須のパンティを開発するにあたって、綿よりも伸縮性のある特殊な布の開発にも成功した。と聞いたのも理由の一つ。
アイツの下着に、どれだけ最先端の技術を投入するつもりなんだよ……。
「なるほど、そう言うことか。リオが着ようが特に問題は無いぞ。――シンプルで良い衣装だな」
「元の世界では俺の世代が良く来てる服なんだ。基本は運動する時の服なんだけど、普段も結構着る」
夜中のコンビニなんかだと、高級車からセカンドバックを抱えて降りてきたりもする。……うん、みんな普段から着てるな。
「転移の時、目立たぬようにお前の世界の衣装を着せる、と言うことだな?」
「そう言うこと」
【成るほど、色々と普段から考えているのね。――でも、ちょっとだけ残念だわ。使用後の感想を聞きたかったのに】
だから。普段からずっと考えてるんだってば。
ん? 残念、ってなんだ……?
やっぱりか、あっぶねぇ。
SNSの文字列が、シモネタだらけになるとこだった。セーフ。





