着るものにも興味を持とう
お世話係制服案は、予想通りに学ランとセーラー服を元にした服だった。
学生服は隠しボタンで、意外にも色はライトグレー。丈が短くエリもちょっと低め。エリの部分だけが法国の色、紫になってる。
第一釦を開けて着る様になってるのは、いつもの俺を見てるからかな。レイジが着るものだけ、エリの縁と胸のポケットの部分に金ラインが入る。
一応レイジは一番エラいから、見た目でわかるようにしてあるんだな。
金属の釦は高級品だって、誰かに聞いた気がする。
学ランが隠し釦になってるのは、基本的に釦を見せないように、か。
“オリジナル”のこれは、プラに金メッキだけどな。
服装とかに興味は持ったこと無かったけど。
なんか、これはこれでニケじゃないが、カッコイイ気がする。
女性向けは同じくグレーで襟は白。腰にベルトの回ったセーラー服風のワンピース。エリに紫のラインが一本。バニティちゃんの服だけは二本、と言う注意書き。
アリスの服を参考にしたはずだけれど、胸にはスカーフでは無く赤のタイが下がっている。
そう言えば、亜里須の予備に作った制服のスカーフは、アレ。
材料が再現できなくてシルクだ、って言ってたな。そう言えば。
自分用の服だってわかってて、簡単に使って良いわけ無いんだけど、これもなんかアニメとかで普通に着てそう。
さすがは異世界チートを使い放題のコスプレマニア、よく出来てる。
「どうだ? 貴様とアリスさんの承認が得られれば、すぐに生地の確保と裁断に入りたいと言っていたが」
約四〇人分だものな。あの子達、何日で仕上げる予定なんだろう……。
「悪くないと思う。って言うか、俺は服の善し悪しなんか知らんよ。亜里須がオーケーなら良いんじゃ無いか?」
俺達と話したい、とは聞いたけど。俺よりは亜里須と話したいだろうしな。
服のことを聞かれてもデザインもなにも、良くわからないし。
「20年前も、着るものには頓着しなかったものな。どころか着替えさえ」
「あんときはあんたも着替えてないだろ。一緒に居た時は拠点も無かったんだ。旅行じゃあるまいし、着替えなんて持って歩けるかよ」
王都に入るまでだって、おなじ学ラン着っぱなしだったわけで。
その辺はちっとも進歩してないな俺。
もっとも、普段から着替えを持ち歩くのか。と言う話なんだけど。
「ところで貴様の話というのは?」
「ん? あぁ、そうだそうだ」
……そうそう、着替えだった。スマホを取り出す。
亜里須のデカいトートバッグ。
ステイタスチェッカで表示しきれないほどの中身。
もちろん2枚あったパンティの話では無い。だってそれは表示されてたからね。
「どうした?」
「あぁ、あんたに見てもらう資料をさ、送ってもらうの忘れてた」
電源が入ると、画面に亜里須のバストアップ。
……なんか王都に向かってる最中に、強引にホーム画面に設定されたんだけど。どうすれば良いんだろ、これ。
もちろん写真の替え方、と言う話ではなく。変えて良いのか? と言う話。
別に、イヤだというわけじゃ無いんだけれど。
SNSのアイコンをタップして立ち上げる。
あ、そろそろリオに充電してもらわないといけないな。
「たぶん部屋に居るだろうから。まぁすぐに返事、来るだろ」
「20年もあったのに人にわからせるように話す、と言う気は相変わらず無いのだな。貴様は……」
「こないだも説明したが、俺としては1年経ってないんだよ……」





