ちょっと休憩
法王の執務室。
「休憩にしましょう、後で呼びます。……いったん下がってよろしい」
俺が部屋に通されると法王が軽く手を挙げる。
部屋に居た三人の神職は法王と俺に礼をすると、俺に付いてきたイーストさん二人ともお互い礼をかわしつつ、入れ違いに部屋の外へ。
みんな女性、しかも若い子。すごくいっぱい。みたいなシチュエーションじゃ無いかとも思うんだけど。
高級神職のおっさんが一人、おばさんと言って良いのか微妙な人が一人。もう一人は巫女服を着た可愛い女の子だったが、目に黒い布を下ろして細い手足。インセクタだな。
設定としては悪役の法国なんだし。
知ってる限りなら、法王執務室にはきれいどころを侍らせて。と言ういかにもな悪いヤツのトップなんだけれど。
それはたぶん二代前の法王までなのかな。
まぁ、法王はそう言うのは単純に似合わないけど。
「私のところに何回来ようと知らぬものは知らぬぞ? 託宣なのであって私の意思ではない。此度のことのみならず、貴様を呼んだことさえ。な」
「いんや、それはわかってる。単に無駄話をしに来ただけだ。明後日の午後まで時間を持て余してるからな。……たいした用事はないんで、忙しいなら帰るぜ?」
「むしろありがたい、丁度休もうと思って居た所だ。それに私の方にも貴様に話があってな。……まぁ、座れ」
それを聞いた瞬間には、控えていたイーストさん二人が、なにも言われていないのにお茶の準備を始める。
今日のイーストさんは、普段レイジと交代で俺に付いてくれているアバラスと、ニケに付いているレジーナちゃん。
法王の前に出る、と言うことでシブリングスオンリー。
他のお世話係は部屋の中には入って来ていない。
アバラスはレイジと同い年なのに格闘技の達人で、始めの2日はニケの兄弟子だった少年。
但し天賦の才に恵まれまくったニケに敵うわけもなく、今や流派を率いる彼女の門下生として師範代の位置にあるらしいが。決して彼が弱いわけではない。
見た目は当然、レイジほど線が細くは見えない。ひ弱な感じでは無いけれどマッチョというわけでもなく、いかにも均整の取れた健康的な美少年。
……いい加減、入浴の“お世話”。辞めて欲しいんだけど。
もう一人のレジーナちゃんは、いつもはニケの担当。普段の仕事では経費の計算なんかをやってる事務屋さん。
でも、恵まれない子供達に読み書きを教えることを自身の義務としており、他の子達のついでにニケもお世話になっていて。
お陰で最近のニケは、看板も読めるし、簡単な手紙くらいなら書けるようになった。足し算と引き算も三桁まで出来るようにもなった。教え方が旨いんだよな。
「よっこらしょ。――忙しいとこ、悪いな」
「まぁ、忙しいのは否定しないが気にしないで良い」
法王も、自分のデスクからソファへと場所を移す
「ただでさえ手が足りんのに、フレイヤ様までも居なくなってしまった。これが痛手なのもまた否定しないぞ。……儀式に詳しい高級神官と言うだけで無く、私の雑談相手までをも貴様が持っていってしまった。と言うことなのだからな」
法王の正装、帽子を外してテーブルに置くと、――ほぅ。と大きなため息。
もともとの性格を考えれば、色々無理してるんだろうな。
「こっちに無理やりふっておいてよく言うよ」
「それで? そういう貴様は忙しくないのか?」
「なにもすること無いんだが。……なんでみんな、俺が忙しいと思ってんの?」
「色々面倒くさそうなチームだからな。連携の確認とか、必要ではないのか?」
「アイツ等をまとめられるヤツが居るってんなら、もう俺はソイツと交代するから連れてきてくれ……」
個々人が勝手に動いているようで居て、ごく自然に仲間を補い合って動くのがウチのパーティ。
俺以外、天才しかいないから結局そうなるしかない。
全員、能力値の一部だけが尖っているうえ明らかな弱点があるから、普通に連携したら弱くなる可能性さえある。
こうして言葉にすると、――そんな事ないだろうよ、弱点かばい合えよ。
と、自分で自分に突っ込みたいところだが、実際そうだから仕方が無い。
当然それは、戦闘以外の普段からだってそうなわけで。
今だって全員バラバラで何かしてるはず。
……まとめられるヤツが居るなら紹介してくれよ、ホント。
「はっはっは……、誰であろうとフレイヤ様が、人の言う事など聞くわけがないか」
「笑い事じゃねぇっての! 超時空転移陣に、そのフレイヤも一緒に放り込もうとしてんの、あんただろ! ……ま。フレイヤ一人の話でもねぇしな。――だいたい、二〇年前だって特別に連携なんてさ、考えたことなかったじゃねぇか」





