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侍従その1 VS 侍従その4(上)

 すぅ。影で出来たフレイヤが無表情で右手を上げると、頭の上にみるみる一〇本以上の剣があらわれて、――ギラリ。と光を跳ね返す


「でも、あの……」

「全力であたれと言ったぞ。それなるは単なる影法師、腹に穴が開こうが首がもげようが、儂にはいささかの障りもない。と言えば安心するかや? ……せっかくだ。この際マイロードに今のぬしの全力、敵をなぎ倒し引きちぎるさまを見せるがいい」



 影のフレイヤの上に、複数の魔導の気配。

 これはレイジが使う、刀剣の(ブリザーデット)吹雪(スウォード)!?


 みんな、メルカさんさえ。真似ができない。って言っていたから彼だけのオリジナルなんだと思ってた。……フレイヤは規格外、というのはわかるけど。


 しかもレイジと違って、剣の形を取ると同時に飛ぶ前から既にクルクル回って、ふわふわと位置を変えている。

 ……これ。レイジのより、タイミングが掴み辛いんじゃないか?

 

 さらにはレイジが作る剣よりも長くて切れ味も良さそう。

 なぁ、フレイヤ。……ホントに大丈夫なんだよね? これ。



「ちなみにニケよ、モリガンからは何某なにがしか教わったかや?」

「あ、相手が何してくるか、見切れ。って言ってて……」


 ニケの動揺が伝わってくるようだ。

 もっとも。フレイヤと同じ姿の影がレイジのワザで攻撃してくる。

 なんてわけのわからんことを突如理解して納得しろ。と言うのも結構難易度が高い。


 それでも、さすがはランド最強の戦闘種族、その一角をしめる獣人属の血を色濃く引くニケだ。

 剣の回転の仕方が変わると同時、瞬時に戸惑い顔からパっと表情が引き締まり、しっぽと耳がピンと立ち上がる。

 右手に開いた扇子を持って、ニケはすぐに動けるように腰を落とす。


「なれば、これより儂がなにをするものか、見切ってみせよ。……さきにも言った通り、教えるなどとは不得手、手加減もせんのでは無く出来ん。避けるなり打ち落とすなり、死ぬる前にぬしが自身でなんとかするが良い。――細切れ集中豪雨(カッチング・スコール)!」


 ちょ、お前! なんかワザの名前が……!

 ――ふぉん、ふぉん、ふぉん……。剣の回転する音が複数響く。

 剣の回転数がさらに上がって円に見えるようになる。



 ――レイジくんのスゴいところは、一二本全部が本物の剣なのに、そのうち九本か一〇本がフェイクなんだよ。フェイクも本命も全部本気の剣だから、狙ってくるヤツの見分けが付かないんだ!


 以前、ニケに熱く語られたのを思い出したが。


 ……フレイヤはメルカさんの魔導の師匠だとも聞いた。

 ならばレイジの大師匠にあたる。この術自体は知ってるだろうとは思う。

 でも、捻くれたことにかけては天下一品のフレイヤが。数が多いとは言え、孫とも言える弟子の技を、そのままなんて。やるか?



 影のフレイヤが上げていた腕を振り下ろすと、――ぶいぃいいいーん! 回転する剣は、まるでスイッチを強にした扇風機のようにうなりをあげ。

 たくさんの剣が回転しながら、もちろんタイミングはバラバラでニケに殺到する。


 どうやらレイジの上限、一二本よりかなり多い様だが。ニケはそれを果敢に正面から受ける。

 ニケに向かった剣、一九本をギリギリでかわしつつ、二本が髪と脇腹を掠め、三本を開いた鉄扇で切り飛ばす。


 ――ガス! 二本の片刃の剣が、折れもせずに真横の石の壁に突き刺さった。

 と見えたが、真っ二つになった元一本だった剣だった。

 回ってるのにそう言う切れ方、する!?


 ニケも大概、既に普通の範疇からだいぶズレてると思うんだが……。

 まだまだ強くなりたい、とは常々聞いているけれど。

 お前の行く先は一帯、何処なんだよ。



 ……!

 ニケの後頭部へとかわした剣が一本戻っていく。

 フレイヤはさっき手加減無しと言った……。

 ――ヤバい! あいつ、気がついてねぇ!

 あと二本、それの対処に全力だ。


 俺が気がついて、見て、そう思うまで。ほんの1秒以下、教える術はない。



 そして一番最後に正面に迫る剣をニケが扇子で捉えたその時。

 ――すぱーんっ!

「あうちっ!」


 回転する剣が後頭部を切り裂いたと見えた瞬間、“はりせん”みたいな良い音がしてニケが前にずっこけ、剣は粉になってかき消える。

 竹光、だと? あの質感と見た目で!? ……いや、確かにそれはそれで痛そうだけども!



「かわしていなしたところまでは褒めてやろうぞ」

「あ、いたぁ……。あれ? 切れてないや、ありがとう。――でも、しゃがんでかわしたはずなのに。いつ戻ってきたの?」


「こちらもアタマを張り飛ばしておる故、礼を言わるるには及ばぬ。――なぜ回転しておるのか考えよ。威力を増すばかりが目的ではない。軌道も隠せれば仕込みも誤魔化せる。見切る、とは言うが。直感的にどうこうするばかりが能ではない」



 ――頭が足りんでも生きては行けるが、考えることを放棄したれば。……ただ生きて居るだけでは死人も同然ぞ。

 フレイヤは、そう言いながらも魔方陣からは目を離さない。

 魔方陣に諭してるみたいになってる。


「うぬであれば切り抜けるのは大前提。大事なのは、その後に相手が何をしてくるのか、そしてうぬ自身がそれに対してどう動くか。であるのよ」


 そしてニケの地頭は悪くない、と言うのは気がついてるくさい。

 さっきはあんな事言ってたが、フレイヤは人に、特に子供に何かを教えるのは大好きだったもんな。そう言えば。


 ……めんどくさいヤツ。


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