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気になる!

「……あの?」

「AdMEの前バージョン、魔導帝国の興亡を作った人が、実はドラゴンズのⅡとⅢのシナリオ作ってるんだ。――当然、お前だったら覚えてるだろうけど、三つの試練、一の試練が“少女達を解放せよ!”だったんだけど。……イベントの中身、覚えてるか?」


 ぴゅい! テキスト亜里須さんが出てきた。長文を喋りたいらしい。


【奴隷狩りで連れて行かれる寸前の、狼の亜人ウェアウルフとハイエルフを救うのだったわね。確かに今の目的地は獣人の村。……AdMEにドラゴンズの要素がどれほどあるのか、寡聞かぶんにして私は知らないのだけれど】


「それについては全く接点はないと言って良い」

【でも、同じ人が作っているなら、それはありない。とは一概には言い切れないのでは? 試練の順番で行けばその次は伝説の剣?】


 亜里須の携帯を取り上げ、白いビニールバッグの中に放り込む。

「あっ、はぅ……?」

「亜里須。さっきも言ったが、危ないから歩きスマホ禁止な? 人の事は言えんが、お前もたいがい鈍そうだし、転ぶぞ?」


「……あぅ」

 頭の悪そうな呟きが、ハスキィボイスもあいまってやたらに可愛い。

 やっぱり世の中見た目で決まるのか!

 ――ま。可愛い、と思ったヤツが言う台詞でも無いけどさ。



「二の試練、精霊の封印を解き放て! 三の試練、伝説の剣を引き抜け! と、ここまでやって。そんでようやくオープニングを見られるわけだが」

「……エルフが、でてきたら。……確、定?」


「何が確定するんだ? Ⅲの主人公は結局、元の世界には帰れなかったじゃ無いか。……お互いシャレになんないだろうよ?」

「あの。ごめん、……ごめんなさい」


「別に謝んなくても良いよ。……お前も帰れない、って事だぞ?」

「……だね」

 ――もっとも帰っても世界は灰色に染まって、動くものなど何も無いんだけど。


「獣人族とエルフ、特に仲が良い設定でも無いんだが。……出てくるかねぇ」

「……どっちが、良いんだろうね」

 AdMEならともかく、“この世界”での彼らの関係、立ち位置。

 そんなのは俺だって知らないんだけど、さ。


 出てきてくれた方が、当面の目標は立つような気がするが。

 果たしてそれは良いことなのか?

 戦えるの、リオしか居ないし。



「あと一時間も歩けば到着です! なので少し早いですがお昼にしましょう!」

「ところでリオ。おまえ、塩以外にもなんかスパイス持ってるだろ?」

「えーと。……な、なんの話。かなぁ? わたしは……」

「俺に嘘は通じん。――出せ。塩はもう飽きた」

「……なんで知ってるのっ!?」


 太陽は中天にまもなくさしかかる、お昼時ではある。


 たまにある木は、もしかすると休憩用に植林しているのか知れないな。

 またしてもその木陰に三人で入って、ワイバーンの燻製とシソみたいなニオイのデカい葉っぱ、そしてさっき川から汲んできた水で昼食、となった。


「あんまり移動中にのどが渇いてもアレだし……」

「冗談だ。しまっとけ。高いんだろ?」

 中世ヨーロッパあたりでは、香辛料は高級品だったのだ。と何かで見た気がする。

 そんなにお金持ちで無い雰囲気のリオが持ってるなら、これは異世界へ出発するときに、餞別かなんかで貰ったんだろうし。


「ちなみに川は何処まで道に平行して流れてる?」

「飲み水のこと心配してる?」

 ……うん、お前の、な。

 道理でリオは、やたらに水を飲むヤツだと思ってたんだよ……。

「村に着くまでは平気だよ」




 地平線が見える一方で、現状、村はかけらも見えない。

 経験上、こういった場所ではゴブリンやホビット、そして人喰いオオトカゲ(リザード)や、ベタにオオカミなんかを警戒しないといけないのだが、リオ曰く。


「獣人やエルフの村の近所には、モンスターや獣の類は居ないよ。非道い目に遭うってわかってるから」


 とのことなので、警戒は解いている。


 そう言う設定はゲーム内では無かった気もするが、一方。

 確かに獣人やエルフにとっては、獣や低級モンスターは狩りの獲物でしか無い。

 食べられないなら、ただの練習用の的になる可能性だってある。ゲーム的表現ならレベル上げ。それで殺されちゃ、確かにたまったもんじゃない。


 知性のない連中は刈り尽くされちゃってるだろうし、多少でも頭があれば近づかないか。


「……りお、ちゃん?」

「なーに? アリス」

 亜里須に振り向いたリオの真っ白の髪が自然に流れ、そしてリボンがふわふわと揺れる。

「……う、……えと、ゆうりくん」

「うん?」


 ぴゅい!

【リボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリンボが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボソが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になるリボンが気になろリボンが気になるリボンが気になるリボンリボンボンボンボン】


「わあ! 画面をコピペで埋め尽くすの止めろ! 怖いわっ!」

 だからストーカーなんて変な属性がつくんだろうが!

【コピペだけじゃ無いわよ……。さぁ、間違いを探せ!!】

「知るかっ!!」


「……り、ぼん」

「本体にも影響したよ!」


「ちがくて。……気に、ならない?」

「あ? 間違いか? 三箇所だろ?」

「ぅな、負け、た……? …………では、なく」

「まぁな。そりゃあ、なるけれど……」


 高位封印、解除には条件あり。

 確かにリオは寝るときもリボンはつけたまま。

 髪をほどいたのは見たことが無い。

「アリス、どーしたの?」


「あぁリオ。亜里須はそのリボン、ほどかないのかって。寝るときもそのままだから、むしろ何か事情があるのか、そう言う修行なのか? って気にしてるんだよ」

 もしかしたらこの世界では、髪型固定。と言うだけなのかも知れないけれど。

 なら髪が伸びなくて便利で良い。床屋は嫌いだ。


「このリボンは私の未熟の印、人前では外しちゃいけない事になってるの」

 ――未熟の印? 虐められてるとかそういう事なのか?


【まさか、人前で外したらご飯を抜くとか、宿舎から放り出すとか、破門するとか、そう言う類の扱いを……!】

「何かの罰とか、なのか? ――なぁリオ。もしアレだったら、今んとこ俺達三人しか居ないわけだし……」 


「そうじゃなくて、……その。魔導の力を自分で制御出来ないから。だから、暴走しないようにね。これはわざわざ法王様が私にって、ご自分でこしらえてくれた封印なの」

 ――父上様も母上様も偉大な魔道師ソーサラーだったのに私ときたら……。そう呟いてから頭を上げ、意外にも、ニコっと微笑む。


「そう言う訳で、二時間程度なら外したって平気なんだけど、むしろ二人の前では絶対に外せないし外さない。それに出発前に結び目に封印の祝福がつけてもらったから、法王様以外にはそもそも外せないしね」

「ごめん、なさい。……りおちゃん」

「アリスは悪くないよ? なんか心配してくれたんでしょ?」



「外れない、ってどんな感じなんだ?」

「なんか、結び目が髪の毛と一体化してる感じ? だから全然邪魔にはならないし、髪が伸びるとその分リボンが勝手にズレるから、何もしないより楽チンだったり」

 ――魔法って便利だな。あぁこれは理力なのか? ゲーム的には一緒だし、どっちでもいいや。


「りお、ちゃん? ……あの。触って、みたい。……リボン」

 そして意外に何でも興味を持つ亜里須である。

「良いよ、でもただ固いだけで、触っても面白くないと思うけど」

「御利益、……あるかも」

 テキスト亜里須さんにも一部本性は現れているが、実は俗物なんだよな、コイツ。


「確かに作ったのは法王様だけど。そう言うのは、うーん。無いと、思うけどなぁ。――別に良いよ。髪の毛はあんまり触んないでね? 洗ってないから……」

 リオがそう言うと、リボンで縛られた白銀に輝く髪がふわっと揺れる。

【でも綺麗だよね、りおちゃんの髪の毛。まさか、封印で浄化されて汚れもつかなくなっているの!?】


 ――理力で汚れも落ちるなら、是非わたしも封印をかけて欲しい。当然テキスト亜里須さんが言い出すと思ったのだがそれは言わなかった。

 女の子だし。やっぱりシャワーくらいは浴びたいのかな。


 大雑把なくせに、細かいところは女の子なのな。お前……。


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