表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/470

建て前、ってのがあるからさ Side : AdME Dukedom (Unofficial 3rd force) 

「あー、もー! ……惣太郎、すぐ行くからセレーナと先、行ってて。――セレーナは、ちょっとお茶でも飲んで落ち着きなさい。さすがに今のはあんたが悪い」

 惣太郎にカギを投げる。

「一応私にも保護者としての建て前、ってのがあるからさぁ。女神にきちんと謝りなさい。……言葉だけで無く」


 一応、

 ――(扱いが面倒くさいので)妹として振る舞え。

 と言うのが、彼女に対する絶対命令。


 そしてもう一つ。

 ――私の妹なら。姉には口答えしないし、自殺も企まないのだ。

 とも言ってある。



 戸惑ったように私の顔を見たセレーナは。改めて祭壇に向かうと背筋を伸ばし、胸に両手を組み、祈りを捧げる姿勢になる。


「立場にあるまじき不敬な言動、まことにもって申しわけありませんでした。……寛大なる女神様のお慈悲を持って、此度の件。セレーナが未熟をお許し頂けますよう、せつい願いたてまつり、ここに改めて申しあげるもので御座います」


 無表情ではあるが、多少言葉には反省した感じが。――あったかな?

 無駄にバカ丁寧でその上、芝居がかっただけでは……。

 ……まぁ、相手が女神なら。お経とか祝詞のりとみたいなもんだし、いいか。



「そんなとこかな。――惣太郎と先に行ってて。話が終わったら私も行く」

「お姉様、私は……」


「またご飯、食べてないでしょ? お腹が空くと、ろくでもないことばかり考えちゃうんだよ。……テーブルにお菓子あるから、食べながらまってて。必ず三個以上食べておくこと。これはさっきの罰の分。誤魔化したら当分、口聞かないから」



 セレーナの目から光が消え、真っ青な顔になって震え出す。

 ……あ、しまった! 奴隷契約……じゃない。妹だ、と言いくるめたその日から。この子に、私がハブる系の発言はNGだった。


 怖い物なしのこの子の唯一の弱点、それは私。

 そうか、自分で設定したんだよそれ。アホの子は私だ……。


 それはさておき、フォローしとかないと後がめんどくさくなる。

 ――そう言うキャラじゃないって言うのに!



「あぁ、おほん。……誤魔化さなきゃ良いだけ、でしょ? 初めから誤魔化すつもりだったわけ?」

 セレーナが音が聞こえるくらい、ブンブン首を横に振る。



「は? わ……、いいえ、いいえ! 違いますっ! いなです、断じて否ですっ! お姉様につないで頂いたこの命にかけて断固否定します! このセレーナがお姉様に嘘を吐くなど、そもそも思う道理が御座いません! ……後生ですお姉様、お願いで御座います! 仰る通りにお帰りをお待ちする間、お菓子を頂きます! どうか、どうか! どうか何とぞ、このセレーナをお信じ下さい、見捨てないで下さい。どうか、見捨てないで……!」


 セレーナは叫びながら床に崩れて、両手で顔を覆う。

 言葉にするとすごくわざとらしくも見えるんだけど。毎度のことながら、これはクルものがある。……いろんな意味で。



「ご……、誤魔化さないなら問題ない、でしょ? ――惣太郎? ちょっとおいで」


 顔がついピクってなったの、見てるかなぁ。

 そういうところで一喜一憂するからなぁこの子。

 まぁ、我がことながら引きつるな。ってのも無理な気はする。

 ――ちょいちょい。惣太郎をさらに手招きして、耳に口を寄せる。


「……今日はいつもより大変かも。なるべく早く行くから。それまで一人にしないで」

「わかりました、先輩の部屋で良いんですね? ――セレーナさん、大丈夫ですって。先輩は僕なんかよりセレーナさんの方が大事なんだから。……先。行ってましょ? 立てますか?」


 ――ギィ、ガシャン。セレーナの肩を抱いた惣太郎が、一礼して大きなドアを閉める。



「……で? 公王、話ってなに?」

「先週報告が上がった件だ、君は既に何か動いて居るか? 東端、帝国との国境線付近の話だが」


「黒騎士団の姿がチラチラ見えてる、なんて。……でも私が出ていくと、かえってめんどくさくなる系なんじゃないの?」


 帝国法国、両方の斥候部隊やスパイ達を何度も叩き潰してきてるけど。

 私個人は、圧倒的に帝国に恨みを買っている。

 帝国を変に刺激して、大部隊を送り込まれても困る。


「どうしたものか。――ユーリ君がランド(こちら)に居ないうちにお引き取り願う、と言うのはどうか。とおもってね」


「私も諜報から話は聞いてる。……黒騎士団が居たのでどう対処したら良いかわかんないって言うから、国境越えない限りは変に刺激しないで監視だけ。って言っといた。――ヤバいのはそうだけど、何が心配?」


「すまない。――超時空転移のタイミングで、何かを仕掛けてくる可能性が否定出来ないと思ってな」

 

「敵の戦力は?」

「全部で一〇人弱、但しそのうち黒い装束が三人」

「……で。そのうち一人が黒騎士団副長ライトバレイ。――私狙い、なのかな……」


「ほぉ、さすがに早いな。ライトバレイの存在はまさに先程、報告が上がったばかりだが。彼女の狙いは君なのか……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ