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はずまないおしゃべり

 所属:無所属 (未登録の第三勢力)

 灰色世界の救世主:卯棟 裕利 


「……本は、好き。だよ」

「うん。まぁ、スキル的にもそれは如実にょじつに現れてるよな」

 好きなんだろうな。速読と超記憶のスキルがあったし。

 つまり、読むのが結構早い上に内容も覚えてる。と言う事なんだろう。


「……それに」

「ん?」

「教室で。……本を、読んでいると、話しかけてくる人が、……少ない」

「本を衝立ついたて代わりに使ってたよ、この人っ!」

 スポークンブロッカのスキルって、きっとこれだな。

 でも、話しかけるのを阻害する能力。って一体……。


「更にメガネ。かけたら、効果が。……3割増し」

「3割増し……。メガネだけに商品券かっ! ――つうか、伊達眼鏡の理由はそれかよ」


 膝丈の草原を突っ切る一本道。リオを先頭に歩く俺達。


 歩きスマホは危ないから禁止。

 と言ってあるので、“テキスト亜里須さん”は出てこれない。

 なので亜里須本体がぽつぽつと喋っている。


 普段の俺ならば。あるいはイラッときているかも知れないが、何しろ歩く以外にすることが無い。


 時間だけは余っているから、ぽつぽつと、単語で会話されても気にならない。

 そして聞く人が気にしないなら、亜里須はぽつぽつではあるが話せる。

 と言う事がわかった。

 それに俺には亜里須と話をしたい、と言う事情もある。

 そう、俺は亜里須のことを知りたい。



 灰色に飲まれるよりマシ、と言う言い訳は有るものの。

 こんなところまで一緒に連れて来てしまった責任がある。

 なんと言うおためごかしはこのさいおいて。


 もっと単純に。俺は普通に亜里須のことが気になる。

 彼女の事を色々知りたい。


 だって、いま、言葉を紡ぐために俺の隣で脂汗を垂らしている彼女は。

 クラスでは話しかけるのもためらわれる高嶺の花。

 顔をじっくり見るどころか、声さえかけることさえ出来なかった美少女だ。


 テキスト亜里須さんのテンションだと、意味も無く話を盛りかねない。

 ……必要以上に会話を盛り上げる必要も無いし、だから盛った情報なんかは全然要らない。素の亜里須の話が聞きたいわけで。

 だからテキスト亜里須さんが当面出てこないように、最初に手を打った。


 饒舌(饒筆、か? 饒SNS、とか……)ではあるが、テンションだけで膨大な量の文章を瞬時に精製し、ついでにことの本質をしれっ。と隠そうとするテキスト亜里須さんは、そう言う用途には明らかに不向きだものな。



 それこそいろんな意味で、俺は彼女を知りたい。

 良くは知らないけれど優等生、本が好きでしかもかなり濃いレトロゲーマー。

 更には可愛いし、そこそこおっぱいもある。もう言う事無いじゃないか!

 そこに性的な意味で。まで含んだって良い。


 不可抗力、下乳だけほんのちょっと。とは言え。おっぱい、触っちゃったし。

 本人から直接聞いてあの日なのも知ってるし。


 大幅に本人のテンションが変わるが、俺とだけはスマホ経由で難しい事柄でも会話が成立する。と言う特殊な事情だってある。


 そう、決しておっぱいだけが気になっているわけじゃない! 

 但しすごく気になってる、もう一回触りたい! とか思っているのも、それはそれで否定はしないがな!


 ストーカーなのは、まぁ置いておこう。きっと俺のシスコンと同じく、何かが極端にステイタス表示されただけなんだろうし。


 女になんか興味はない! なんて言っていた俺ではあるが。

 そもそも話をする同世代の女が妹しか居ない。興味を持ったところでどうしようも無い。

 と言う悲しい事実の裏返しでもあったわけで。

 亜里須に対しては興味がある、なんてところは多分超えちゃってるな、これ。



 だから。


 『この世界を救ったら、俺と付き合わないか!?』


 などと、勢いに任せて言ってみよう! とも思ったがここはゲーム世界。

 これは明らかに、イベント失敗フラグ。

 もしくはイベント成功でも、言った人間の死亡だけは確定する古典的なパターンだ。


 まだ世界の“カタチ”が良く判らない。

 何をどうやって世界を救うのか。どころか、召喚者がなにをさせたいのか。

 それさえわかっていない。

 自分がプレーヤーキャラの扱いで無いならこの台詞、間違いなく死亡フラグが立つ。


 この場合、亜里須が変に美少女なのが、また不味い。

 亜里須のみがプレーヤー扱いだったら、俺の死亡はほぼ確定だ。

 状況がハッキリするまでは、何でも疑ってかかった方が良い。


 勢いで告白して、自分の死亡フラグを立てる必要は無いよな……。

 でも。……今なら冗談として誤魔化しもききそうだし

 何より、その勢いで。こくん。なんて。――頷いてくれそうな気もするんだけど。


 初めて女の子に対して、そんな事を思った俺としては、多少損をしている気がしないでも無いが。

 なんか損してる気がする、モヤモヤする!




 と言う事で現状。暇つぶしかたがた。亜里須と話しながら歩いている。

 昨日の申告の通り。

 上手く話せないだけで、話すこと自体は嫌いじゃ無い彼女ではある。

 なので、朝からずっと話しているが。結局、伊達眼鏡の理由くらいしかわかったことはない。

 まぁ、これはこれで良いんだろうな……。



「ところで亜里須。レトロゲーマーだったらドラゴンズ・クエストって言うRPGゲーム、やったことあるか? 最近Ⅹ(じゅう)が出たばっかりだけど」

「えと。……その、……Ⅱの、二周目隠しダンジョンとか、Ⅳの大魔王降臨後、瀕死連続5ターンで第三形態。くらいしか。やりこんで、ないけど。シナリオ重視で。……Ⅳ(よん)まで。だったら、……ある」



 やっぱりな。――Ⅴ以降はネットに繋げ無いと、イベントの一部が発生しない仕様になった。そしてそれは亜里須は好むまいと思ったんだ。


 そして、周回プレイ限定の隠しダンジョンやら、特殊条件下のみ発生するイベントを知ってる。しかもそれでやりこんでない、だと……?


「それのⅢ(さん)なんだけどさ、序盤の内容、覚えてるか?」

「……Ⅲ。は、シナリオの評価、高くて。……『英雄の離反』? オープニング前? ――なら。三つの、試練……。かな?」

 サブタイトルまで一発で出てくる。さすがスキル超記憶持ち。


 ――恐れ入ったよ、俺の負けだ。その見た目で、マジでゲーマーなのな。


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