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「……先回りよ。全力で」 Side : Unknown 3rd force

 だいたい。

 こちとらユニコーンが懐いたんだよ!

 本当に気性が荒い生き物で、みんなが腫れ物に触るように扱っていたユニコーン。

 それが私に大人しく従ったのには自分でヒいたくらいだ。処女ってすげー!

 今だって私が帰るまで、ずっと不機嫌なのに違いない。


 って言うか、世話係の女の子達にまるで懐かない方が大いに問題だろ。

 全員。私より年下だったぞ、あの子達……。

 どうなってんだよ、この世界の貞操観念!

 

 で、とにかくだ。

 コミュ障を除けば、私は間違い無く、べらぼうに商品価値が高いので……。



 

 ――ぱぁんっ!

 手を叩いた音で再度我に返る。

「だぁかぁらぁ! 外に居る時はどっか行っちゃダメですってば! 妄想の世界に入るの禁止っ! ……単純に危ないでしょうが!」

「向かってくるバカが居るなら首を落としてあげるだけ。だいたい私は変態なのよ? ……卯棟くん達は?」


「そういう事は自分から言わない! それに属性が変態だろうと先輩は女の子なんですからね? ――樺藤先輩達はどうやら南に向かったようです。向かったのは獣人族の村、なのかな? それにしては微妙に遠回りだけど」

 少年の声は森の中から私に問いかけてくる。

 一応私の後輩で今は配下でもある。彼はそうだ。



 もっとも、私のような変態に仕えてくれる理由もお義理もないはずなのだが、この十日間、何かと世話を焼いてくれる。

 私にはその気持ちに返すものなどなにも無いし、返す気もさらさら無いが。


 ほおって置いたらあっさり死ぬのでは? くらいには思ってくれているのかも知れない。してみると、私はクラスで飼ってる金魚みたいなイメージだろうか。

 教室の隅、誰にも顧みられず緑色の水の中で浮かんでいる存在。

 ……なんて的確であんまりな表現だろう、涙出そう。


 ならばコイツは生き物係だな。夏休みも餌やりに学校に行かなくちゃいけない損な役。

 まぁ金魚なら。自発的には何もしないんだから、手間がかかるのも仕方が無い。

 そう、私は綺麗で儚げ、自分では何も出来ない金魚。



「誰も居ないんだからフード、あげたらどうです? 周り見えづらくないですか?」

「何故……。何処に、あなたに顔を見せる必要が?」


「そうじゃ無くて。……まあ、いいや。――遠回りではあるけど、地図の通りに歩けばこうなるのは普通、ではあるか……。どうします? 先輩」

 地図を見ているのか、がさごそと木の陰から音がする。

「……当然、今すぐ出発するわよ」


「ねぇ先輩。せっかくだからワイバーン、すこし頂いていきましょうよ」

「そんな暇は、無い。食糧はある。すぐ出る!」

「まぁ樺藤先輩も気になりますしね」

「亜里須は一ミリも関係ない!」

「素直じゃ無いんだから……」


「とにかく、荷物まとめなさい。……ストーキングの高等技術、先回りよ」

「一周まわると後ろから前に出ちゃうんですね……」

 バサッ。ローブを翻して森へと向きを変える。


「黙れ素人! 気が付かれなきゃ良いの! ……先回りよ。全力で」

「僕、玄人になりたくないです……」

「いちいちうっさい、いくわよ……!」

「先輩がごねて先回り出来ないと、それはそれで不味いんですけどね」


 どうして亜里須“が”卯棟くんと共に召喚されたのか、そこが気になる。


 何故私で無かったのか。

 何処に違いがあったのか

 何が影響したものか


 彼をストーキングするコミュ障女。

 その部分には、二人になんの違いも無いのに。

 なにが悲しくて、お母さんみたいな世話焼き後輩と異世界に二人なのか。


 ――ともあれ

「卯棟くん。やっと……。見つけた。うふ、うふふふ、ふっふっふっふ…………」

「先輩、自然とそうなるなら仕方ないけど。わざとその笑い方するの。ほんっと止めて貰って良いですか? 一緒に居てマジ気持ち悪いんで」


「気持ち悪いって言うな。死ね……!」

「あ、先輩のNGワードだった。ごめんなさい。……でも今、僕が死んだら普段の生活、困るでしょ? ――さ、莫迦ばか言ってないで。行きますよ?」

 コイツが居ないと、主に他人とのコミュニケーションで困るのも確か、か。


 ……うむ。おまえ、当面は生きててもいいや。あとで落ち着いたら、死ね。


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