やること、決定
ゲーム内の大崩壊、これに巻き込まれないための安全地帯。
だろうな、ここで言う安全地帯は。
条件だけはクリアしてるから、ラビットビルとしてログインすれば俺も入れるはず。
PCと回線があれば、だけど。
【そこは前に、ゲームの中の裕利君が作った。って言っていたところ?】
「俺が作ったわけじゃないよ。そこに誘導はしたけど」
俺が“作った”のは指定条件解除用のチートスライム三〇匹。
一匹は自分で潰したから、放流したのは二九匹、ならば最大で二九人?
でもなぁ。
クラン単位、なんてのは絶対無理だけど。それをパーティで潰したら、そのまま戦闘参加者全員、条件達成。の可能性はある。
何故なら、そういうつもりで作ったからだ。
でもさ、後で揉めたら面白いな。くらいのノリで作ったし。その後の挙動も確認してない。
作った俺自身も具体的にはなにがどうなるのか。
その辺、ちゃんと把握してないんだよ。実は。
カタチだけパーティにして実験しようと思って、新規に取ったアカウントは脱出の身代わりにしちゃったし。
個人に効果がある、と言うのは自分で確認したけれど。
本来はもっとたくさん作った上で、なんなら、戦闘参加してなくても所属クランごとクリアにしよう。くらいには思ってたんだけど。
追加効果用の改造とか、量産とかする前にゲームには入れなくなっちゃったし。
今となってみれば、あのままの仕様でも増産して放流するべきだったかもな。
でも、条件達成も厳しいだけで不可能ではないから。
例えば、ヒキさえ良ければレベルがそこそこでも、自力でクリアして安全地帯に入れたヤツだって居るはず。
あの騒ぎの中、ゲームを続行してるなら。それはだいぶ廃人の可能性が高いけど。
だったら、エネミーの出現率どころか、アイテムのドロップ率、立ち回り先の順番まで全部、計算ずくで行動するはず。
ガチ勢が複数で組んで、本気で条件達成に動けば。
二時間+一五分インターバルの法律タイマーも無いんだし。
自力で条件をクリアできる可能性もそこまで低いとは言えない。
それに救助に言って遭難した人達だって。
運営のアカウントで入ってるなら、条件達成の必要さえ無いはず。
もっとも。安全地帯に入れたヤツらが今、どうなっているか。
なんてことは、さっぱりわかんないんだが。
【ランドの中のどこだか裕利君にはわかる。と言うことなのかしら?】
「あくまでゲーム内の話な。今居る“この世界”の中じゃないのだけは確かだ」
俺も“場所”は知ってはいる。だから最低、避難したヤツらが生きてる。とそう言うなら。
確かにログインさえできて先方が“生きてる”なら、接触することも可能ではある。
ただそれも、サーバーが無事なら。の話。
このメモの意味するところはその辺だろうけど。
でも。もしも安全地帯に入れて、避難した人達が“生きて居た”として。
そいつらと話ができたとして。
……そして、そのキャラのデータをサルベージできたとして。
だからどうだって言うんだ?
「ただ、現実世界が今。どうなってるかと言えば……」
「……むぅ。……灰、色……?」
「それなんだよなぁ」
サーバーがどうなってるか、なんて考えるまでも無い。
「なぁ、法王。俺の元の世界は……」
「だいたいの事情はリオから聞いているが、託宣は託宣だ。……行くだけは行って欲しい。帰りの転移陣も構築してもらった。ここへ戻れるのは保証する」
「規模は大きいが一度作ったものである上、初めから座標も指定がなされている。リオの時とは違い、今度は間違い無くここへ戻れよう。……ユーリよ。お前の元の世界、気にはならぬかえ?」
「まぁ、な」
元の世界は、もちろん気になる。ずっと気になってる
灰色世界の救世主、ね。
そう思うとやたらたいそうな名前の職業だよな。
俺と亜里須の二人で、あの世界を救えと?
もしくは灰色の世界から来た、ランドを救う救世主?
……どのみち、俺達二人には向いて無い気がするが。
「完全に術式は完成、後は魔力充填のみだ。いずれ大きいのではあるが、最短ならばあと二日あれば起動できる。……法王、どうするか?」
「託宣に従い、フレイヤ様には一〇日後。早朝に術式起動、と言うことでお願いしたい。――この場の全員、それで良いだろうか?」
結構広い執務室の中、法王の声が響いた。





