自分を客観的に見つめ直してみよう 卯棟 裕利編
所属:無所属 (未登録の第三勢力)
無職:卯棟 裕利
夕食後。やはり疲労がたまっているのか、リオは直ぐに寝てしまった。
たき火に照らされる俺と亜里須。
亜里須が、ややそっぽを向きながらスマホの画面を俺に見せる。
『ユーリ・ウトー』
『転移人※特異点でない 男 一六歳
所属 [無]剣士 → [法国]傭兵 → [法国]傭兵団頭領 →
[無]盗賊 → [無]無職 → [第三]灰色世界の救世主』
『取得カテゴリ』
剣術師 ☆Master!
頭領 ★★★★★
盗賊 ★★
無職 ★★★★
ハッカー ★★★★←new!
ヒッキー ★★★←new!
シスコン ★★★★★←new!
灰色世界の救世主 ?←new!
『現在のカテゴリ』
灰色世界の救世主 (ユニークカテゴリ)←new!
『所有スキル』
○剣術師(条件未達により凍結中)
迅速斬upper limit 一刀両断(個)5 岩石切り(個)4
○頭領(条件未達により基本スキル以外凍結中)
リーダシップupper limit 作戦会議3 乱戦掌握3
○盗賊(条件未達により基本スキル以外凍結中)
鑑定眼5 (単・複 ※単のみアイテムにより限定使用可)
アイテムドロップ+20%(単)4
○無職
???
○間接魔(条件未達により凍結中)
スピーディ(複)4 パワード(単・中)3 ディフェンサ(複)3
リフレクト(複)2
○聖魔法(条件未達により凍結中)
???
○ハッキング
遠隔侵入upper limit ツール改造5 データねつ造5
○ヒッキー
夜更かし(中)4
○シスコン
妹コントロール4 ???
○灰色世界の救世主(条件未達により凍結中)
??? 世界情報upper limit 統率5
『現在のステータス』
身体:正常 精神:割り増し継続中 体力;やや疲労 魔法:凍結中
特殊:※補給不可 魔力:※補給不可 聖気:- 呪い:なし 』
『装備品リスト』
頭:なし
身体1:学生服 身体2:学生ズボン 身体3:
右手:未活性化のため非表示
左手1:スマートフォンXS3c 左手2:未活性化のため非表示
足:ウォーキング用スニーカー
『アイテム』
学校指定鞄 教科書×7 ノート×8 燻製肉 燻製肉 未活性化のため非表示1
未活性化のため非表示1 のど飴×6
色々と検証しなくちゃいけない部分が多々ある。
第一にだ。
俺は前作と合わせれば、一年以上。
途中は飛んでいるのかも知れないが、リオ達からの見かけなら二〇年以上居るわけで。
だから特殊職業だって見たことがあるのは、10や20なんてもんじゃ無い。
対峙した相手に何が出来るか。知らないと大変な目に遭う。
クランを解散し。ソロになって後に一旦、職業を盗賊に変更したのも“鑑定眼”のスキルが欲しかったからだ。
自分が成るかは別にして、だからソロでチーターになって後も、きちんとカテゴリ毎の特性はフォローしていた。
一時期は課金イベントの度に増えてたくらいだから、数は多いのだけれど。
でも、俺の知らないカテゴリはAdMEには無いはず。
「灰色世界の救世主」なんてカテゴリはただの一度も見たことが無い。
灰色世界。は、ほぼ間違い無く元の世界のことだし、リオが俺を呼びに来たとき。確かに、――救世主様、と呼ばれた。
それにわけのわからないアイテムを何個も“持っている”事になっている。
不活性化、と言うからには何らかの活性化条件があるはずで、活性化したらどうなるのか。
亜里須やリオに類が及ぶような、危険なもので無ければ良いのだけれど。
見えてないどころか持っている自覚もない以上、なにがどうなってるのかさえわからない。
知らない、と言うのはやはり不安だ。
そのほか言うまでも無く。カテゴリは他のゲームで言うところの職業にあたる。
かつて、国内でも屈指の傭兵クランの頭領として剣を振るっていたのだ。
剣の最上級職、剣術師の熟練度の数字がカテゴリマスターを示す☆になっているのは、だからある意味当然と言える。
盗賊の熟練度が★★と低いのも、ここ暫くはチートで好き勝手やってたわけだから、これも良しとしよう。
ハッキングがやたら高いが、一体この世界でなんの役に立つのかは知らん。
問題は。
どう言う職業なんだよ、無職にヒッキーにシスコンって!
夜更かしはまぁ良いとして。
妹コントロールって何をどう動かすんだよ。リモートコントロールみたいに言ってんじゃねぇよ!
しかもシスコンがマスター寸前、ってどう言うこと!?
まだロリコンとか表示された方がマシだったんじゃ無いかな? これ!
だってこれは、亜里須が俺をチェックした画面なわけで。ならば既に彼女はこの画面を見ている、と言う事だ。
さしあたって多分、検証より言い訳。これが先にすべき事になるだろうな……。
立場が逆なら、“職業”がシスコンのヤツと一緒に居たくはない……。
「……し、シスコン。って。……妹さん以外には興味、……なし? な、なんと言う……」
「ちっ、違う! 信じてくれ! 俺は普通に女の子が好きだ! 亜里須にだって、とてもすごく興味がある!」
「え? ……わたし、に。……き、興味が!?」
……ヒカ、れた? なんか地味にショック。じゃなくて。――言い方が不味かった!
「いやタイム、ストップ! なんか言い方が変態みたいだった! 今のなしなし! いや違う、なしって言っても、興味はある! あるんだけど、性的な意味じゃ……」
あれ? 性的な意味を取り払うと、人としてはともかく女の子として魅力がない。と言い切っちゃってる事にならないか?
「……あぁ、今のも無しっ! もちろんそう言う意味も含めつつ、えぇとマジでそうじゃ無くって! あの……!」
ぴゅい! メッセージ着信音が鳴る。
【わたしはこう見えて実は、心が広くて包容力もあるので、差別や忌避はしないから安心して良いわ】
【そう、たまたまここまで女の子に縁がなかったから、だから妹さんに特別な感情を抱いてしまったのね。性癖というものは持って生まれたものもあるけれど、育った環境も大きく影響するものだと言うし、仕方が無いこともあるのでしょうけれど】
【だからわたしで良ければむしろ協力してあげる。……裕利くんもわかったでしょうけれど、わたしは話すのはちょっと苦手なのだけれど。でもわたしも一応女の子だもの】
【だったらわたしがずっと横に居たとするならば、妹さん以外の女の子にもだんだん慣れるのではないかしら。別に恥ずかしいことではないし、悩まなくても大丈夫よ?】
だから打つの早えよ! こんだけの長文、なんで数秒で打てるんだよっ!
明らかに喋るより速いじゃないか……!
――そして何かを理解して達観し、優しい姉のような、母のような目でこっち見るの止めてもらっていいですか、亜里須さん。お願いします。
そして俺の画面には、さっきからこちらをふり向いた亜里須の写真が表示されている。
もちろん、壁紙に設定したわけでは無く。
ステータスチェッカで取った画面だ。
-詳細の表示をしますか? はい/いいえ-
写真の上に文字が重なる。
ぴゅい!
【裕利くんのステイタスはAdME絡みだろうけれど、わたしは基本的には関係がないのだから、リオちゃんの言っていた巫女絡みのステイタス、これの意味合いがなにかわかると良いのだけれど】
あたかも、AdMEにシスコンの要素が関係あるかのような書き方をするな!
何かシスコンを上書きするような、起死回生の強烈な表示が出てくれると有り難いんだが……。
……いやいや、趣旨が違う!
そう言う事のために、お互いをチェックしようとしたわけでは無い。
リオにばかり頼るのは良くないので、せめて自分たちで出来る事を確認しよう。と、そう言う話だったはずだ。
俺の指はアリスの背中あたりに重なる はい の文字をタップした。





