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交渉役 Side : Country of Regulations

「大巫女、エリザベート・アビリィ礼拝士長。……決まったのか」

「東支神殿付き騎士巫女、アビリィ殿……、か。また厄介な。腕は確かで、その気質も清廉にして潔白。まさに白騎士に相応しいだろうが」


 彼女もグスタフと同じく、アリス殿の威光に打たれた一人。

 今や、自身はくだんのアリス殿を守る一振りのつるぎである。

 と言いきってしまっている彼女である。

 

「アビリィ礼拝士長なら。白騎士の名誉ではなく、アリス殿の守り刀。それを選択するのではないか? 私などはそう思うが」

「確かに。名誉や称号は、彼女にとって意味がないだろうが。――我が姉上様は、俺達にいったいどうしろと仰るのか、さっぱり……」


 騎士として名をあげ貴族となった彼女の両親は、その銘のせいで。

 一〇年ほど前の貴族排斥運動の際、神の御許へと旅立つ事になった。

 そして名実共に家を無くした彼女が、巫女としての修行を終えたところで騎士巫女への推挙があった。


 俺は、その立会人としてここに派遣されたのだ。良く覚えている

 騎士巫女の役目に就くだけでも一悶着あった。


 曰く。――父母を弔うために巫女となったのだ、もう剣はとらないと決めた。

 

 彼女の尋常ならざる太刀筋と身のこなし、そして法国中央からの要請に対してさえも。自身の信条に従い意固地を通すその気性。

 まさに白騎士に相応しいと言って良い。

 但し。


「大神殿までは同行してくれるだろうことまでは、これはアリス殿のこともある。タイミング的に間違いがないだろうが、騙し討ちのようだな」


「そんなわけには行くものか、神職だろうがお前は! ……全く。――当然に、話はしておかなければいかんだろうさ。我らが姉上、フレイヤ様にならって、その後のことは法王様に丸投げ(おまかせ)するとしても、な」


 そしてかたくなで、素直には話を受けないであろう彼女を。

 騎士巫女へと推挙し、あえて悶着を起こしたのは、リッター総監代理なのである。

 しかも彼女は。話がこじれ、関係者が右往左往するのを楽しんでいるようにしかみえなかった。



「まずはリッター総監代理にお話申し上げねばならんが」

「やはりそうなるか」

「そして彼女は系統上、お前の部下でもある」

「うむ、知っている」

「……全く」



 但し、拗れた分の話をも含めて、今の体制に繋がっているのも事実。

 彼女の絡んだ案件はことごとく揉めるが、その後は嘘のように安定する。


 先見さきみわざなど持っては居なかったはずの、副司祭リッター殿なのであるが。

 どこまで先が見えているものか。

 あの人の本質は、きっと誰も掴めないだろう。


 そのリッター総監代理が出てくるのを見越して、フレイヤ様が“逃げた”位だ。

 面倒な役なのは間違いがない。



 もっとも我らが姉上に関して言えば、普段の言動ほどには人間的にひねくれているわけでは無い。

 よわい100年以上と言いながら、腹芸の類は苦手にする彼女なのである。


 そう。自身でも彼女を“腹黒”、と言い切ってしまっていたが。

 あの総監代理とやり合う。という役目は、フレイヤ様にはおおよそ似つかわしくない。

 お世辞でもなんでもなく、そうなのだ。



「総監代理には、俺からお話申し上げるしか無いな。……お前では無理だ」

「……良いのか?」


 個人的にはやりたくないが、グスタフには無理だ。とはわかる。

 フレイヤ様もグスタフもダメ、となれば。

 ほかに誰がいるというのか。


「良いも悪いも無いと言っている。やりたいならば譲るが……?」

 だができれば、やりたい。と言って欲しい。という気持ちは俺にもある。

「うむ。……済まないが頼む」



 ……やはり、やりたい。とは言わんか。

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