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降りていた託宣 Side : Country of Regulations

「侍従も含め、ですか? エッシェンバッハ卿。――無論、教皇様のご命令はともかく。それ自体は私もやぶさかではありませんし、現状。ユーリ殿のその意向を汲むカタチで、東支神殿ここで足止めにもなっている」


 それはグスタフの言う通り。改めてフレイヤ様に言われるまでも無く。ユーリ様の、侍従全員が帯同するのが条件だ。と言う言もあり。

また、東の総監代理せきにんしゃ、メルカ様からも同じ要請が来ている。


「但し、ですよ? フレイヤ様。その事について、猊下げいか下知げちが下るとすれば話は別。我らとて侍従の皆さんの……」


 ――まぁ待て、二人共。理由はある。フレイヤ様が手を上げ、言葉を遮る。


「ユーリが、侍従を手元より離すのを嫌がっているのが一つ。そして十全の彼女等が付いているなら護衛なぞは不要と思えることが一つ。そしてさらにもう一つ」

「なんでしょう?」

 ――はぁ。輝く金髪の少女はため息を一つ。


「儂は口止めをされておるとさっきも申したに、全く。……二人共、法王には儂の口より聞いたとは言うなよ? 良いな。――どうやら。今回降りた託宣にあの三人とリオ、そして儂の名があるらしい」


「なんと!」

「次の御託宣がもう降りているなどと。……教皇様より聞いておりません」


「さきにも言うたであろうが。秘密になっておる故な。法国にあっては託宣も政治ぞ。わからぬうぬらでもあるまい、そこは理解せよ。……後はよしなに。儂は少し寝る」


 そう言うとフレイヤ様はきびすを返してドアへと向かった。



「そうそう、どうやら空位の白騎士。埋まりそうであるな?

 扉を開けようとしたフレイヤ様が振り返る。


「称号授与は法王の仕事であろうが、そこまでの説得はうぬら二人の役目であろうから、せいぜい誠意を持って懐柔するが良い」


「え? あの……、エッシェンバッハ卿!?」

「フレイヤ様、決まったのですか!?」

「一昨日の神官会議にて満場一致で決定。……と報告が来ておる。但し。当たり前だが本人の意思の確認は、これは出来ておらん」


「それはそうなのでしょうが」

「何故我ら二人が……」

「くっくっく……。現状、転移鏡は動かぬ故なぁ」

 フレイヤ様は少し意地悪く、口元に笑みを浮かべる。


 ――法王じじいに。部下の勧誘のために、ここまで歩いてよと言うか? うぬらは鬼だの。ふふふ……。フレイヤ様はそう言って微笑んだ。


「以前は東支神殿ここにおること自体に拘りを見せていたが、今はどうやら拘りどころが違うらしい。と、ここまでは知っておろう? ……だから今、この時なれば。中央大神殿に呼び寄せるところまでは何とかなるのでは無いか? ――あのアリスとか言う小娘はもちろん、腹黒女のメルカだとて、使いようがあろうぞ」


「いやいや……! フレイヤ様、暫しお待ちを。その後、我らにどうせよと……」

「そこまでは知らぬわ。もっとも、剣士ではあるが立場は大巫女。中央大神殿にさえ足が向けば、のちの面倒事は、これは法王に丸投げするが良かろうさ」

「教皇様に、丸投げ……」


「ここ一〇年。儂はそうして面倒事全て、法王に丸投げして今日までやってきたのではあるが」

 ――はっはは……! はたしてうぬらはどうであろうな。そう言って、今度こそ彼女は廊下へと向かう。

 フレイヤ様がドアをくぐると、閉まる前には来たときと同じように。彼女の気配はかき消えた。


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