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何も出来ない Side : Country of Regulations

所属:フェリシニア法典による神聖聖道王国

法国中央騎士団長:ジュリアン・ハイアット


「……だからな。過日、実際にお話をさせて貰って、私は本当に驚いたのだ。あの、アリス様の清楚で清廉な立ち居振る舞いはどうだ!」

「どうだ、と俺に言われてもだな……」


 東支神殿で執務室として割り振られた部屋。

 俺と、そして法国では、若くして法王猊下に次ぐナンバー2の地位にあたる神官総長となった親友、グスタフ・リンドリンガー。

 彼が飲み物のグラスを持ってテーブルに着いている。


「あれ程のことをやってのけるのに、あの奥ゆかしさ。……そんな淑女を見たことがあるか?」

「アリス殿は、しかし。――なんだ。お話しなさるのが得意でないとユーリ殿が……」


 奥ゆかしい、と言うよりは。恥ずかしくて話すことができない。とも見えたが。

 騎士や神職は男女問わず、大きな声を出すことも職分のうち。である。

 確かに、俺やグスタフの周りには居ないタイプだとは言えるだろう。

 正直に言えば、妙齢の淑女がどのような“生き物”であるのか俺達は知らない。


「言うほどのことはない。リオもそうだが、糸使いのモリガン嬢とも普通にお話しをなさっておいでではないか」


 あれは、リオやモリガンさんの側にかなりの忍耐力が要求されていると思う。

 事実。他のお付きの中でも、アテネーさんやニケさんとは難しい会話が成り立っている。とは言いがたい。

「ニケさんやアテネーさんのことはどうする」

「現状で問題があるとも見えんのだが?」


 とは言え。ユーリ殿とはスマホと呼ばれる魔導板を介して、通常のやりとりよりも遙かにレベルの高い情報交換をしているし、名前を挙げた二人とて、彼女の意思を汲んで一言二言で指示は済んでいる。

「それは確かに」

 単純に口で喋るのが苦手、と言う事であれば。確かにそう言う人も居ないではないが。




 王都の全体は周囲が完全な円では無いにしろ、三〇リーグ以上ある。

 中央大神殿と東西南北の支神殿の間は、同じ王都内とは言え最低一〇リーグ強はある。ということだ。

 ユーリ殿の一行は当然、猊下げいかのお客様でもある以上、転移鏡を使うのが本来。


 但し先日。

 通常約一時間かかる始動スタートアップ儀式・セレモニー無しで、さらにことわりを無視した緊急転移を行った。


 転移鏡自体は、ランド内なら建前としては、何処にでも転移が可能である。

 そして王都全域の転移鏡は、神殿間で行き来をするため当然繋がっている。

 王都近隣であれば本来、ほぼ魔力無し(ノーコスト)で使用できる。



 無理をして起動したうえ、転移先はことわりに触れる、どころか後の調べで複数の理に反していることがわかった。

 当然魔力の使用量は莫大なものに膨れ上がる。

 そしてその魔力は、実は王都内の九神殿全てを連結しても足りず。


 足りない魔力はフレイヤ様の魔導指輪マジックリングに備蓄していた魔力で強引に補う形で転移したのだ、とは本人から聞いた。


 さらには最後の最後。効果範囲の直径約250m。

 などという、とてつもない超級フレイムピラーを放った。


 魔道士に聞いたところ、通常フレイムピラーは五人分の魔力で効果範囲3m。

 これが限界で、しかも発動対象を選別することなど、不可能なのだそうだ。

 一体元々の自身が持つ力はどれほどなのだ、と言う話である。


 本人も。転移直後に平気で大技を出せたのは、体内の備蓄分だ。と言ってはいたが。

 ならば体内にも神殿一〇個の魔力を、普段から内包していることになる。

 そう言うお方を果たして普通に人と呼んで良いのか。

 ちょっと考えてしまうところ、ではあるのだが。



 いずれにしろ現状、王都内全ての神殿、拝殿において魔力のストックは完全にゼロ。

 大結界の維持ができているのも、中央大神殿で魔道士達が魔力を交代で流し続けているから。


 法国の中心たる中央大神殿であるというのに。

 どうしても必要な分に限って、王都外の神殿から無理やり融通を受けている。

 と言う情けなさである。


 このタイミングで帝国が攻めてくれば、もう増援は遅れないのであるが。

 情報部の調査によれば、帝国側も状況は似たり寄ったりであるとの事。

 情報部のトップはあのメルカ・リッター副司祭、これまで情報に間違いの有ったことは、一度たりとも無い。


 一応、国境警備の部隊には緊急事態を宣言してはあるが。

 現状は、だからなにも起こらないのである。


「情報部、と言うより総監代理からの帝国の魔導力の話、裏は取ったか?」

「あぁ、どうやらユーリ様のお話通り、大規模魔方陣を連発で使用していたのは間違い無い。帝国も計算上、あと最低半月は目立った動きは出来まい」


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