どのみち監視は必要 Side : Magical Empire
「しかし、学生服にセーラー服か……。うーむ」
少なくても学生服もセーラー服も再現するための被服データはない。
絵や文章としても伝承や言い伝えの類の中にさえ、その服装は存在しない。
存在しないものは、当たり前だが作れない。
彼らが現地で作らせた、というセンは残るものの。
情報によれば現地到着からあの姿であるのだ。
それに私もこの目で一度見ている。
……アレはコスプレ用なんかじゃない、“ホンモノ”の学生服とセーラー服だった。
だから“直接”もってきた可能性は高いと思う。
……でも、だったら尚のこと。
魔法少女のコスプレなんか、あってたまるか!
コスプレじゃない、ホンモノの魔法少女って、……なんだそれ!
「それともう一つ。――指輪。あの魔法少女のコスプレ女とデザインおんなじだったよ」
「確かか?」
の問いに、――うん、色は違うけど。と即答。
「コスプレ女はどっピンク。鎌女の方はあれ、シルバーグレイ。かなぁ?」
光り物が大好きです! と公言してはばからない彼女だ。
見間違いは多分無い、と思うんだけど、そうなると……。
「だがちょっと待てライトバレイ。……そうなると、アドメの総隊長も“変身”する。と言う事になるが」
「うーん。変身がピンとこないなー。あのピンクの恥ずい服でしょ?」
このおっさんは間接視野越しに、ではあるが変身シーンをみている。
それによれば、キィになったアイテムは指輪。
私は知らないが、アニメの通りではあるらしい。
「いや、そうなら黒が基調になる。デザイン自体ももう少し落ち着いた感じになるはずだ」
「えっと、……なんでそんなに細かく知ってんの? イストリパドオアさん」
しかし、見た目はともかく。変身後の攻撃力は侮れない。
ただでさえ面倒臭いアドメの総隊長までもが、変身して攻撃力が大幅アップする可能性が出てきた。
「見た目はともかく、そもそも、よ? なんで、魔法少女がこの世界に!」
「魔法天使だ、スクワルタトゥレ。――首狩り鎌を使う“まほてん”は居なかったが、近いところならグレイブ、か。……ふむ、ならば色からみても、叛逆天使ミア、か? ……むぅ。元まほてん第一位、か。厄介な」
「…………」
……あ、あんたの口から深夜アニメの略称とか、キャラの名前とか出てくるなんて、言葉失うわ!
「姐さん、コラボ企画の予定とかそう言うの聞いたこと無いっすか?」
「もし聞いてたとしても、覚えてないな。……興味ないからさぁ」
期間限定で服飾データやキャラが増える、と言うイベントは過去にも何回かあった。
使える技もキャラに応じて増えるがそれは表面上だけのこと。
技の名前とエフェクトが変わるのみで中身が変わるわけじゃ無い。
「いずれもう一度礼を言う。――むしろアドメから目を離してはいかんとわかった」
こんな単純な精神攻撃にやられてる場合じゃ無い。
私にだって、帝国臣民一二〇〇万を護る立場がある。
「おほん。……そうね、アドメの総隊長にも誰かつけておくことにする」
「頼む」
――私がやる! とグロリアが手を上げる。
「アンタなら簡単にやられたり無さそうだし、私に異存はないけどさ。黒騎士団の副長でしょ? 黒騎士に聞かないとわかんないなぁ」
普段ならめんどくさがりそうなモノだけど。
よほど妨害されたのが悔しかったのかな。
フードの下の顔を見たモノはほぼ居ないが、情報によれば超絶美少女らしいし。
こいつは自称他称問わず、自分以外の“美少女”の存在は許せないのだ。
改めて思うと、なんて横暴なヤツだろう……。
でも。ユーリ君に同行する魔法少女もそうだが、タイプは違えど、やたらに顔面偏差値が高い子ばかりなのはなんでだろう。
アリス。と呼ばれていたセーラー服の少女が生身で転移した、と言うのなら。
そう言う意味ならむしろ、私だってこの手で間違い無く始末を付けたいくらいだ。
……あの眼鏡の娘は、とりわけ可愛かったし。
背が高く筋肉質な私の中の人は、実は“ふっくら”系で背もあまり高くない。
グロリアの中の人はどうなんだろ?
「至急伝です!」
そう言って私の補佐官でもある、近衛騎士団副長。
彼が飛び込んでくるのは、この数分後だった。
――法国の中央大神殿が魔導変換器を起動したらしいと、たった今!
失った分の魔導力を強引に取り込む。これはそう難しいことでは無い。
例えば、木にも草にも土にさえ。魔導の成分は含まれている。
帝国においては先日来、フル稼働状態に入っている。
但し躊躇無く使えるのは、帝国が工業と商業に特化した国だから。
使った次の年は土地が痩せ、農産物の収穫がめに見えて落ちるのだ。
特に法国は、農業が盛んで輸出の主力でもある。
だから彼らは本当の窮地にしか、それは使わないはずなのだ。
今だってその為に、表面上減ってしまった魔導力を回復させるため、ロリ婆ぁ魔導団長個人のストックを放流してさえ居る。
それをさらに吸い上げる?
一体、この状況下で。何の魔法を発動するというのか。
「副長、王都中央区に潜り込んでいる間諜をできる限り。中央大神殿に集めて詳細に動向を探らせて?」
「は、現地からも是非やらせて欲しい旨、上がってきておりますのですぐに」
「ではそちらはそれで。……それと東教区のチームは?」
「先日の作戦に投入した部隊は全滅しましたが、それ以外の半数以上は健在。いつでも動けます」
「わかった。ではユーリ・ウトー、並びにその同行者全ての動向を詳細に調査することを最優先に変更、二日に一回ずつ情報を上げること。――大至急伝えて」
「は、直ちに!」
「とは言え、さすがに人が足りないわね。西教区から何人か、東教区に回して」
「既に南から気の利いたものを選抜、東に回しておりますが。西からも回して宜しいのですね? 西は、言わずと知れた法王親衛軍の本拠地ですが」
「この時期、親衛軍は動かない。南から回した分は副長の人選? ――ならそっちはそのままで良いよ。……今は一人でも多い方が良い」
「は、仰せの通りに」
「それと、数の減った分、補充の手当もお願いしていい?」
「来月までには元の八割が確保出来る手はずが付いています」
「さすが副長、そっちもよろしくね」
「おまかせください!」
アドメもそうだが、ユーリ君達も。
動きを逐次、キャッチアップしておかなければいけないな。
きっとすぐ。一月も待たず、ほんの数週間のオーダーで次のイベントが始まる。
……今回と同じく。私の知らないイベントが。





