叛逆の白巫女
そう言えばアテネーは昔、エルファスのインコンプリーツにあったことがある。と言ってたが。
彼女がそうなんだろうか。
とにかく。彼女も援軍としてきてくれたんだし、だったら味方だ。
お互い疲れているところで、内輪揉めなんか無駄なだけ。
「味方なんだぞ。剣を退け、アテネー!」
「何をしているか。やめよ、ヘカテー!」
神官総長と俺がそう言ったのはほぼ同時だった。
――こっ。と言う小さな音が響いてお互いの杖が離れ。
双方ちょっとバランスを崩して杖で身体を支える。
彼女、ヘカテーも足が悪いようだが。
――ぴんこん♪
-【通知】 樺藤亜里須 のチェック内容が共有されました-
いつの間に……。
だから毎度々々、そう言う余裕がお前の何処にあるんだよ。
シャッター音、どうしたよ! ――さすがはストーカーというか。
「だいたい、王都の大結界の中では使うなってメルカさんに……、ん?」
「……ここ、外。……でしょ?」
――外。だったな、そう言えば。
【あの名前の何処をどう略せばヘカテーの要素に行き当たるのか、私はそこがとても気になるのだけれど】
いつの間にかアビリィさんから解放された亜里須から着信。
何処に着目してんのお前。……まぁ俺だって気にはなるけれど。
問題はそこでは無く。
「混ぜっ返すなよ? 面倒臭いから」
「……うん」
取りあえずの収束はしそうだからな。
「で、ヘカテーってのもやっぱり……」
【そう、その通り。インコンプリーツだし、名前もやっぱり女神様よ。ちなみにアッちゃんとは同い年。私達より一個上ね】
やっぱりな。なら、彼女もイベント用の強力なキャラ。ってことなのか。
【そして神職の位はチェッカに寄れば助祭。ならば服装は、実はメルカさんと同じものだと思うのだけれど】
「ん、なんだ?」
データをざっと見て何かに気が付いたのか。
その辺侮れないからな、コイツ。
【裕利君はあの服には殺されないわね】
……何の意味もない情報だった。
「……口にだして言うなよ!? それ」
言う言わない以前に、意味わかるの俺だけじゃねぇか!
俺にだけダメージが来るわ!
まぁ確かにエルフ族だからおっぱいはアテネー同等。
同じ服でもメルカさんとは比較にならない。
服に殺されないなら良いことだけど、……な。
――って巫山戯んな! 童貞を殺す服、をいつまでも引っ張るんじゃねぇよ!!
【同じ服だというのに。……乳袋の有る無しでここまで攻撃力に差が出るとは】
何故。亜里須の中で女性の司祭級は、こぞって俺を攻撃してくる設定になっているのか。
「いいか? もう一度言う」
「……うん?」
「絶対口に出すなよっ!?」
【なにを言っているの? こんな複雑な会話ができると言うのなら、普段から苦労はしない。――さっきだって、もっと簡単にことが運んだわよ!】
なんで偉そうに……。だいたい、さっきってなんだ?
「ふむ。……だが主殿。話はわかるが。あの女が元帝国貴族の娘で、有数の商家の跡取りであったことは事実なのだ。それを口にするのが、いけない事なのか?」
いや、別にアテネーに言ったわけでは。
「帝国の貴族で悪徳商人の娘。しかも、自分を棚上げするようでなんだが、エルフ。どころか、インコンプリーツだぞ。そんなものが神職に付いているなら、そこには何某かの企みが……」
――はいストップ、そこまで。過去に何があったか知らないが、一応助けに来てくれたんだからさ。
「言いたい事はわかったけどさ。援軍できてくれたんだぜ、あっちで怪我した人を直してくれたんだろうし。……その。あぁ、うん。この場では、いや。彼女の前では口に出すな。――お前と同じく、きっとここまで色々あったんだろうしな」
スマホに目をやる。所属、の欄。
[帝国]貴族の娘 → [帝国]商家の跡取り娘 → 〔帝国〕没落家の娘 →
〔無所属〕とらわれの娘 → ※>〔法国〕大巫女 → 〔法国〕叛逆の白巫女
※省略部分を見る ●
色々あった痕跡はたった二行でも染み出してくるようだよ。
歳はアテネーと同じ。なら、俺よりひとつ上なだけだろ?
なのに。……途中が収まりきれなくて省略されてるし。





