表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/470

リオが知らない、リオの真実

「どうしたの? ユーリ」

「何でも、ない」

 スマホの画面がリオから見えなくなるようにする。

 今のところ彼女はこの“板”に、画面が出るとは思って居ないはず。

 日本語だって読めないと思うけど。


「な、ゆうりくん、これ……」

 既になにも言う前に、亜里須もチェッカーをリオに向けて試したらしい。

「これはチート、と言うよりストーカーっぽい気がするが……」



【亜里須、リオには取りあえず黙っていよう】

【いくらわたしでもわかっているわ】


 いずれゲーム的なHPはほぼ無し、攻撃の要のはずの魔法もたいした事が無い上、魔力が戻っていない。


 自己申告では巫女見習いで、ステイタス的にもそうなっているが。

 神の巫女としての聖気はほぼ使えない。つまり怪我をしても回復できない。

 自分の擦り傷や切り傷を放置しているくらいだものな。


 つまり。今、何かに襲われたら。……アウトだ。


 そしてワイバーン。……燻製用に肉を切りとったのは俺だが。

 ワイバーンのあの部分はカルビだったのか。

 あと、塩以外も持ってたんだな? 昨日知らんぷりしたのはなんでだ!



【色々りおちゃんだって、話したくないこともあるんだと思うし】

 ……ピリ辛スパイスだけは絶対に、人に使わせたくないとかな!


【頭の高位封印ってリボンよね? 気になるわ。他の装備はほぼゴミ同然だと言うのに】

 ……ゴミとか言ってやるなよ! まぁ中古の槍に普通の服。攻撃力も防御力もほぼ無さそうではあるけれど。


【だけどそのゴミ装備に助けられたんだぞ?】

【もちろんわかっているわ。りおちゃんは大恩人、傷つけるようなことはしたくないし、もし傷つける人が居たら本人が許しても、わたしは絶対許さない!】


「んと。二人共、そろそろ良い? 日のあるうちにあの丘だけは越えたいんだけど、スマホでなんか、魔法的に……忙しい感じ?」

「あ? あぁ、大丈夫だ。――行こうか。亜里須」

「え? ……うん」




 何とか丘を越えた辺りで日が落ちてくる。予定のペースでは進んでいない。

「ごめんなさい二人共。私、これ以上歩けない。今日はここで、アリスも良い?」

 亜里須が頷く。

「……うん」

「かえってお前にそう言ってもらって、助かったぜ。マジで」

 一番疲れているはずのリオが一番健脚なんだもんな。

 チェッカを見たら、今日はもう無理。なんて言えなくなってしまった俺達である。



 草原の一本道、道ばたに一本だけ大きな木が生えている。

「じゃ、ユウリ。薪になるもの、拾ってきて貰える?」

「わたしも、……行く」 



 チェッカーでわかったこと。

 彼女は元々は上流階級のお嬢様だった。

 名前の欄、多分今名乗っている名前は、素性を隠すための偽名なんだろう。


 ……確かに興亡からAdMEに移行する歴史設定の中。

 一時的に、ではあるが治安が悪化し貴族が迫害された。と言う歴史の設定があったのを今さっき、思い出した。


 高レベル非課金ユーザーの追い落としのための、言い訳に近い設定だったはずだが、このせいでリオは家も家族も無くしたんだ……。


 その後彼女は、いきさつはともかく教会に拾われはしたが、巫女としても魔道師として槍使いとしても。全てで伸び悩んでいる。

 ぶっちゃけ、ぱっとしない。



 そして、昨日。リオはかなりの無理をして俺達を守り、ワイバーンを倒した。

 ワイバーンのスペックを思い出す限り、リオ程度の初心者魔道士ノービスメイジが単独で勝てる相手じゃ無い。


 熟練度が一気に2段階,3段階飛ばしで上がる相手なら、本来ソロでは勝てる可能性ゼロ。

 瞬殺されてもおかしくない差であるはず。


 おかげでソロでスライム狩りをしていても、危険を感じないくらいにはレベルが上がっているが、疲労が全く回復していない。


 ニコニコ笑ってはいるが、本当は今でも青息吐息。

 体力も魔力も気力も何一つ。ワイバーン戦の前の状態には戻っていない。

 言われてみれば目の下にかなりくっきりクマがあるし、槍を杖代わりにため息を吐いていることも多い。


 巫女であれば初級回復魔法は、最低自分に対しては発動しっぱなしになっているはずなのに、切り傷や擦り傷も治る気配が無い。


「あ、そうだ! アリスはこれと同じ葉っぱを取ってきてくれる? これ食べれるヤツだから。お肉ばっかじゃフンづま……。げふんげふん。えへへへ……、ねぇ?」

「……わかった」


 明るく振る舞うリオを見ているだけでツラい。

 別段知りたくなかったよ、こんな情報。




 たき火を囲んで三人。

 確かに美味いんだけれども、さすがに飽きてきたなワイバーン。

 リオが付け合わせに選んだ葉っぱも、やたら苦い上にモソモソしてるし。


「なぁ、リオ。お前の拝殿巫女見習い。ってのはさ、巫女の中でも一番の下っ端。って事になるんだよな?」 

「そうだけど。……あれ? 私ユーリにその話したっけ?」

 やべぇ! チャッカー経由でしか見てないや、この話!


「服、服がさ。知ってる拝殿巫女の服とは、ちょっと。うん、違う気がしてさ」

 あれ? なんか落ち込んだ顔になったが。

「確かに見ればわかる、か。当たり前だね」


 え、マジで階級によって服が違うのか? ……わかんねぇ。

 でもまぁ、お前のその服。常識的に巫女服として考えると、それだけで違和感十分だけどな。


「実は、もう三年もやってるんだけど。こないだも昇格試験落ちちゃって。見習いでは私より年上の人、居なくなっちゃったの。……出来そこないなんだよ、私」

 やべ! 地雷踏んだ!?


「……拝殿巫女とか神殿巫女の子達から“リオお姉様”って呼ばれるのはちょっとツライ、か、なっ! ……なにここ、固い~!」

 ナイフで燻製肉の塊を、ギリギリとそぎ落としながらリオ。

 気にしてるのか気にしてないのかどっちだ!?


「ちょっと不思議なんだよ」

「なにが?」

「俺と亜里須が使いものになるかならないか。は、おいといてだ」

 何かの役に立たないと、居場所がなくて困るのはホントなんだが。


「もの凄いエネルギーというか、魔力を使ったわけだろ? 俺達を呼ぶのにさ」

「そうだね。魔導団長は多分まだ寝込んでるとおもう」

 ――そんなにかっ! おいおい、ホントの役立たずだったらどうする気だよ。


「……どうしたの急に」

「大神官とか、神官長とか。来るのは普通そういう人達なんじゃ無いかなと、ふと思ったんだ。出来そこないとかそういう事では無くて、魔力とか剣の強い人の方が良いんじゃ無いかと思ってな」


 自分の分の燻製を口に放り込むと、両手を合わせて一礼。

 腰の袋からハンカチを取り出して手と口を丁寧に拭き始める。

 この辺、変に潔癖症なところまでりおなにそっくりなんだけれど……。


「もちろんユーリの言う通りだと思う。……でもね、選んだのは法王様なんだ」

 法王が、リオを選んだ? 

「法王様というか、神様かな。……御託宣、って言ってわかるかな?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ