増援到着
「そう言えば、……アテネー、あっちは!」
「まだ戦闘中だが……。引かないところを見れば、三神将と襲撃とは直接の関係がないのかも知れないな」
城壁に開いた穴に二〇〇人からの敵が、モンスターを従えて群がっている。
それを一〇人かそこらで無理矢理止めてるのが現状。
状況はどう考えても良くないが、どうにかしようにも、こちらももう限界だ。
支神殿本陣から援軍を緊急招集しようにも、近所で三発使ったばかり。
短距離だろうと転移陣が使えない。
当然、魔道巫女や騎士巫女達が“走って”ここへ向かっているはずだが。
リオ達は……、至急の増援は呼べないのだ。
「俺だけなら、まだ……」
「自分だってフラフラでは無いか。まさか一人で行くというのではあるまいな? あっちは本職の軍人が多い、いくら主殿とは言え、現状ではどうにもならんぞ。――とは言え、あのままではいずれ抜かれるのは時間の問題だが……」
「確かにそうなんだが! でもリオやレイジが今も、あそこで……!」
「いくらアビリィ殿が一騎当千とは言え、数はどうにも。……? 待った、主殿! 正面だっ!!」
「……どうした、アテネー?」
「空間が歪んで……。転移陣か!? なんで使えるっ!!」
アテネーの指さした先、彼女の“真実の目”が捕らえた異常。
徐々に空間が歪んで歪んで拗くれてくる。
大規模空間転移の前触れで間違い無い。
たった今、ここで転移陣が発動したばかりだぞ!
――そう言えば、距離や人数の制約を無視して、転移を可能にする方法がある。
法国ならば各地の神殿、帝国なら各街の城にある転移鏡を使うのだ。
これならば。転移陣同士で発動距離制限のあるこの世界でも、使えそうだが……。
但し、一度使用するだけで。
A級の武器を三つは買える金額と、アイテムとして使えば、ゼロからいきなり初級魔道士を飛ばして魔道士になれる程の魔石を要求される。
しかもこれらは基本料金。使用用は距離と人数とレベルに合わせて別途現金で請求される。
距離や人数の制約が無いとしても、とんでもなくコスパは悪い。
だから、実際に使うのは、イベントで増援のNPCキャラが送り込まれる時くらい。
プレーヤーサイドではほぼ使わない。
そこから考えて、この世界でそれをやるなら。
魔道士どころか、魔導師の三、四人が魔力切れでぶっ倒れても、それでも対価としては足りないかも知れない。
でも、実際に何も無い空間には、徐々に青い光が丸く集まりつつある。
地面では無く、空間に。しかも魔方陣を伴った丸い平面。転移鏡で間違い無い。
――敵が増援を送って来たなら東支神殿、いや東教区全体がお終いだ。
「主殿、もしや帝国の援軍では……」
「どっちだ……!」
空間に丸く青い穴が開き、数人がくぐり抜けてくる。
先頭に立って出てきた小柄な人物が纏うローブの背中には、デカデカと法国魔導団の紋章。
――良かった、中央からの援軍! 味方か!!
しかし、ローブをかなぐり捨てたその人物は明らかに少女で。
「法国のものは30秒の内に敵より離れよ!」
綺麗な金髪を揺らし、オレンジのワンピースから覗く白いシャツ、それにあしらわれたフリルに似つかわしい少女の声で、全く似つかわしくない台詞を叫ぶ。
――無茶ぶりも良いとこだ! 戦闘中だぞ!!
だが警告は終わった。とばかりに、彼女は大きく息を吸い込んで、背筋を凜と伸ばすとおもむろに両腕を開く。
「我が血潮は熱くたぎる炎、我が血肉は燃えさかる焔。我を照らし汝らを裁く、紅蓮に輝くその力、今こそ解放の時は来たれり……」
……詠唱時間が必要な超上級魔導! 法国は誰を送り込んできた!?
つーか、こんな混戦の中でなにをする気だ!? まさか敵味方、見境無しに……!
彼女の胸の前には、とんでもない魔力を凝縮した珠が渦を巻き、腰まである金の髪が風に舞う。
「我が法に従い、この地全ての異物を清め焼き付くさん! 外法のものどもよ。燃えさかる浄化の火炎にその身を焦がし、一片も残さず燃え尽き灰燼と化せ……! よし、発動! ……行くぞっ!!」
魔力の珠が急速に輝きを増し、戦闘中の付近の地面には、直径にして優に二00mを超えるような真っ赤な魔方陣が浮き上がる。
「選別の炎柱っ!!」
超上級の、しかも固有特殊魔法!?





