ワザモノ
「左腕が異次元格納庫の発動条件になってんだろ!? ――切っ飛ばしてやる!!」
――スキル、迅速斬! 発動した!? ……よし、取ったっ!!
……しかし、ヤツの剣に光の剣は弾かれて受け流される。
スキルの乗った、しかもSSSの剣の斬撃を。かわすならまだしも、受ける?
なんでここまで剣技があるのに、チートに拘るんだよこのオヤジ……!?
「さすがは運営に手を焼かせるチーターだな、こちらの手まで丸わかりか。だが仕組みがわかろうが、簡単には。……やらせんよ!」
光の剣を右手一本で構え直してジリジリと間合いを計る。
俺の左手が拳銃をつかみ出したりはしないが、基本的には片手剣。この構えで間違ってはいない。
左手には楯を持つのが本来だ。
「いずれにしろ、おまえの存在は邪魔ではある」
イストリパドオアの左手がまたも虚空に消えると。
「大きなおせ、わ。って、……な、それっ!?」
ぱっと見、なんだか良くわからないものが左手に握られ、先端の穴がこちらを向く。
「ぴ、……お前それ、P90!?」
色々、説明はあるんだけれど。そう言う名前の、小ぶりで変わった形のマシンガン。その銃口が俺を向いている。と言うのが現状。
「個人的にはSL8はキライでね。MP7よりも手に馴染む」
「おっさんの好みなんか興味ねぇわ!」
剣の間合いでこれは、本気で不味い。
その距離約二m。これで弾をバラまかれたら、防ぎようが無い。
「私は興味がある。――救世主ユーリ・ウトー。おまえが死んだらどうなるのか、そもそも論としておまえが死ぬのかどうか、な」
実物は警察や軍の特殊部隊が使うようなマシンガン。
ゲーム内での性能しか知らないけど、ほぼ反動無し。
しかも、全力ならものの数秒で弾倉が空に成るレベルで連射できる。
さっきのデザート・イーグルはあくまで拳銃、性能差は推して知るべし。
空いてる左手を突き出すしかないが、その行為には全く意味は無い。
「ただ、死体を晒すだけではつまらんが。スクワルタトゥレや斬が、拘りを捨ててくれるならそれで良し。……おまえが原因でこの世界が崩壊すると言うなら、それもまた面白い」
「自分も巻き込まれてるじゃねぇか!」
「そう言う運命なら従うまでだ」
思うより軽い音で銃口が火を吹く。
せっかく剣と魔法の世界に来て、……こんな下らない終わり方?
俺は、目をつぶって終わりを待つしかなかった……。
「なんだ、それはっ!!」
イストリパドオアの声。……って。アレ? 生きてるぞ、俺。
恐る恐る目を開けると、20発以上の弾丸が俺の前で止まっている。
……違う! 薄く金に輝く透明な薄い膜。それに突き刺さってる!?
「光の剣に光の盾、余裕の理由はそれか……。精霊装備とでも言うのか!」
イストリパドオアは多少距離を取る。――それはこっちが聞きたい! なんなんだよ、これ。
助かったんだから文句を言う筋合いでも無いけどさ。
「そうか、ブレスレット! ……楯だったのか、これ!」
左腕のブレスレットから伸びた光は、そのまま透明なシールドになって俺の身体をカバーするように大きく広がっていた。
左腕を軽く振ると、光の盾は縮み、腕を覆うガントレットのような形になって。
カン、チン、カラカラ……。マシンガンの吐き出した弾は地面へと落ちる。
今まで使ったこと無かったから、使い方がわかんなかったのか……。
「ふっ。……正攻法でないとダメ、とはな。さすがは救世主、と言ったところか。望むところだ! やはりこうでなくてはっ!」
P90を異空間に放り投げると、巨大な剣を両手で構え直す。
シールドを使わないスタイル、なのに隙のない構え。
……尚のこと、どうしてチートに拘る!
「なんでそこまで殺し合いがしたいんだよ、あんたっ!」
「優劣を決したいだけだ! こんな極端な世界であれば、それは必然殺し合いになる。他に意味など、必要があるかっ!?」
巨大な剣を振りかぶり、でも。
「むっ?」
――カィーン!
こちらに振り下ろすことはしないで、回転しながら飛んできた何かを弾き飛ばす。
――ゾン!
地面には棒のようなものが突き刺さる。……これは、剣?





