デジタルストーキング
昼飯時。
木陰で燻製肉に噛みつきながら、スマホを弄る。
相手は亜里須限定だとしても、電話とSNSが使えるのはわかった。充電も出来る。あと他に使えるものは無いだろうか?
「なんだこれ? 亜里須、お前、なんかコイツにアプリ入れたか?」
亜里須は、不満げな顔で首を横に振る。
「……そんなこと、しない」
【ネットに繋がらないのにどうやってそんな器用なことが出来るの? 入れたのはわたしの写真くらいのものよ? ちなみに壁紙変更の第一候補にしてあるから。いつでも変更してくれて構わないわ】
いつの間に! やる事が、なんかストーカーじみてない?
……あれ、ホントに入ってる。マジか!
まぁ亜里須の写真なら、そうそう嫌なものでも無いけれど。
なんて思っちゃうあたり、良いようにやられてるなぁ、俺。
リアルとテキストの違いっぷりから言っても、亜里須がどこまで真面目なのか。
そんなの、わかりゃしないのだけれど。
「あ、それ。……わたしの、にも。増えてる。よ?」
亜里須の見せるホーム画面にも同じアイコン。
――ふむ、ならば。異世界転移にありがちな、チートボーナス的な何かだろうか?
アイコンには『ステータスチェッカ』。そう書かれていた。
「……立ち上げてみるか」
――まぁ、仮にウイルスでも亜里須と連絡が取れなくなるだけだし。
【ウイルスだったら使えなくなっちゃうわよ!? わたし達の大事なアドバンテージが! わたしと裕利くんのホットラインが! 大事な絆がががが!】
……口で喋れ。
チェッカ起動中の文字のあと、カメラが立ち上がる。
-対象を撮影して下さい。-
なんだこれ?
「リオ?」
「もご……。ふぁい?」
ナイフを持って燻製と格闘するリオが振り向く。
カシャ。……普通に写真取っただけなんでは。
次の瞬間、
-詳細の表示をしますか? はい/いいえ -
の文字。――はい。を選ぶ。当然だよな。
画面が暗転し写真が消える。――やっぱウイルスだったか?
写真が再度上から少しずつ復元されていく。 しかし、その写真には幾つもの注意書きや矢印がついて、写真の下には沢山の文字が並ぶ。
「……なんだ、これ」
『リオ=スピニティ・ヌ・ジュール・カンヌラエイヌァス』
『人間族 女 一五歳
所属 [法国]貴族の娘 → [法国]大神官の娘→ [法国]拝殿雑用係→
[法国]拝殿巫女見習い → [法国]拝殿巫女
『取得カテゴリ』
貴族の娘 ☆(↑1up! Master! )
拝殿巫女 ★★★★★(巫女見習から↑7upでカテゴリシフト)←new!
魔道士 ★(炎)(魔道士見習から↑5upでカテゴリシフト)←new!
槍術士 ★(槍術初心者から↑4upでカテゴリシフト)←new!
発火槍の巫女 ★★★(新+↑2up!)←new!
『現在のカテゴリ』
発火槍の巫女 ※炎+槍+聖 マルチカテゴライザ
『取得した主なスキル』
○貴族の娘
ノブレス・オブリージュupper limit
○魔道士(炎) ←new!
イグナイト5 ファイア(単)3←new! マジカルチャージャユーリ4←new!
○拝殿巫女 ←new!
リカバリ(単・強/条件未達により使用不可)4 瞑想1←new!
○槍術士 ←new!
通常攻撃(強・単)4 円月斬(中・複)2
○発火槍の巫女(魔道士+槍術士+巫女) ←new!
イグナイテッドホーリーランス(長・単)4←new!
セントファイヤサークル(中・複)2←new!
『現在のステータス』
身体:状態異常複数(擦り傷、切り傷) 精神:かなり疲労
体力:かなり疲労 魔法:通常 特殊:ほぼ枯渇 魔力:ほぼ枯渇
聖気:- 呪い:なし 』
『装備品リスト』
頭:聖なる高位封印※装備解除不可。解除条件あり
右手:そこそこの切れ味のナイフ
左手:鉄のフォーク ワイバーン(カルビ)の燻製
身体1:祝福された魔装ケープ※条件付き目視不可 身体2:中古で安物の槍
身体3:中央神殿の巫女服 身体4:布のスカート 身体5:小物袋
足:革の靴
『アイテム』
塩の入った瓶 燻製肉 燻製肉 ピリ辛スパイスの瓶 フォーク 法王の書状
「熟練度以外、数値が直接見えないところまでゲーム通りか……」
取得カテゴリ全ての熟練度が上がっているのは、ワイバーンを倒したせいだろう。
初心者が強いパーティに混ぜて貰って、イベントバトルの経験値のおこぼれを貰うときだって。一気にあがるなら★一つくらいなもの。
それをあからさまに上回って居るというなら。
あの戦闘。やっぱりかなり無理があった、と言う事だ。
なんで勝てたのかわからないくらいに。
……なんなんだ、このアプリ。





