賢いスキル活用術 Side : Yuri's buddy "Alice"
戦闘中止勧告は無視され色とりどりの魔導や、投げナイフが殺到する中。
すとん。両足を揃えてスカートの前を押さえつつ着地する。
「無駄ですよぉ、っと、……変身中の攻撃は無効です、どこまで卑怯なんですか!? ――おおっと! こっから有効っ!?」
攻撃はまるで見当違いの方向に飛んでいったが。
でもまぁ,これも。こう言う台詞だから。
――大事なのはこの後、……乗ってくるか?
「全員その場で止まって下さい! 女の子だからってバカにしてると、本当に非道いことになっちゃいますよ? ここから先は責任、もてないですよ!?」
「知るか、このアマ! こっから先は手加減無しだ!!」
……完全に返しまでシナリオ通り!? いける!!
「なら、もういいです。やっちゃいます! ……ピンクちゃん、リミッターカット!」
「jawohl! Modus hoch(モード変更、了解!)」
「チェぃンジ! モード・エクスタあーミネーショぉぉぉぉおン!」
――台詞、言い切った!!
服の白かった部分が真っ赤になって、ピンクの部分は蛍光色で発光する。
全身にも真っ赤なオーラを纏い。
髪の毛がぶわっと逆立つのがわかった。多分髪も白銀になって光っているはず。
……確認はしないが、スパッツはそれでも黒いままなんだろうけれど。
「この姿をみせた以上は、一人も逃がさんぞ。……この場の全員、皆殺しだ」
時間制限付きではあるが、こうなれば攻撃力は二〇倍を軽く超えるはず。
「目の前から消えうせろ、三下。……静電気狙撃」
最弱の魔法の名前を口にしステッキを一振りすると、電撃避けを装備して近くに居た敵が四人。黒焦げになって、次の瞬間には塵と化した。
そして。
おとなしい、敬語で話す設定の主人公なのだが。
このモードの時のみ饒舌で乱暴な言葉を話す。
……つまり。設定や属性に必要以上に引っ張られるこの世界なら。
私も大声で話せるはず! 巧くいった!!
「ニケちゃん、止まらずそのまま聞けっ!! その扇子なら相手の魔導を受け止めることができるはず。弾かずにまとめて受け止め、そのまま投げ返してやれっ!!」
完全な無属性で、しかも魔導耐性が異常な扇子。そこにニケちゃんのスピードと器用さが加われば、魔導を受け止めることだってできるはず。
私の声を聞いた瞬間にニケちゃんは動きを変えた。
開いた扇子の上には、あっという間に色とりどりの魔力の塊が七つ。
……いきなりそれができる、ってどういうことっ?
そんな練習なんかできないはず、既に器用なんてレベルは超えているのでは……。
「これ。要らないから、返す。……ねっ!」
ニケちゃんは何事も無く、扇子を持った右腕を無造作に振り切った。
イヤな予感のした私はニケちゃんに駆け寄り、彼女の前に入り込む。
「バリアライン、フルパワー! あ、サイズL! ……じゃない、XLっ!!」
そして、多重属性の魔導はお互い干渉しながら絡まりつつ地面に吸い込まれ。
筆舌に尽くしがたい轟音と、地響き。
「バリア発動! ……しないっ? なんで!?」





