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スキル:魔法少女 Side : Yuri's buddy "Alice"

「うわっ! なんでっ!? 手数! ふえたっ!? なんか、忙しく、なったっ!!」

 属性毎に色が違うのか、色とりどりの魔法がニケちゃんを襲う。

 そして時間がたつにつれてその数は増えつつある。


 一般的には時間がたてば減りそうなものであるが、この場合。

 本当にニケちゃんの魔導防御能力がゼロなのだ、と言うことを確信し魔導の出力を最低まで落として、“球数”を増やしたのだろう。

 発動さえさせずに、魔力をそのままぶつけてくる様になった。


「ニケ、ちゃん……!」

「だい、じょう、ぶっ! ……アリス、ゴメン! 僕ちょっと、すぐは、いけなさそう!!」


 むしろこうなれば。ニケちゃんの一発逆転は多分間違い無いのだが、せめてもう少し近づいてくれないと伝えようが無い。

 大きな声はダメ、長い文章も話せない。現状ではスマホに喋らす手も使えない。

 そして私の周りの包囲も徐々に狭まってくる。

 ……いったいどうすれば。 



 実は、ひとつだけ手はあるけれど。果たして本当に効果があるだろうか。

 でも、考えてる暇は無い。――やってみるしかない!

 そう、やり方だけは丸暗記しているのだから。



 両腕を下に垂らして煽り気味に立つ。

 ――煽り気味って、カメラどっちから来てるんだっけ?

 第二話だけはバンクじゃない部分が多くって……。

 もういいや、……ここで台詞だ。


「いきなり使っちゃって、怒られないでしょうか。それに指輪の最終調整ファイナライズも、まだセンター側の行程が残ってるって言ってましたし。ピンクちゃん、私のこと認識してくれる。かな……?」


 左腕に拳を握って目の高さまで上げる。

「あのぉ、もしもーし。ピンクちゃーん、聞こえてますかぁ? えーと、ね。超緊急事態なわけなんですけれど。これから。良い、かな? ……本部と通信、ってつながりますか?」


「Was hast du gemacht(何ごとですか)」

 おぉ、指輪がドイツ語喋った!

 AIが魔法の封印を管理している設定だからこうなる。


 って、機械っぽい声まで一緒。なんでこんなに凝ってるの……?

 指輪が交信してるはずの魔法天使管理局銀河系本部は、何処!?


「A項の2に相当する緊急事態発生、状況進行中なのです! ……緊急起動、行けますかっ!?」

「Es gibt kein Problem. Beantragt derzeit die Freigabe des Siegels.(問題ありません。現在封印解除申請中)」


 指輪も魔道具アイテムだったんだ……。アニメ通りでもあるけれど。

 ……あたり、かな? ――恥ずかしいけれどもうやるしか無い!


「Bestätigen Sie die Annahme der Genehmigungsanfrage.Freigabe des Aktivierungsschlüssels.

Übertragen Sie die Kontrolle an den Master.(承認要求受理を確認、起動鍵解放、制御をマスターへ)」

「ありがとうございます、ピンクちゃん! 有能っ! ん~、ちゅっ!!」

 少しわざとらしく、指輪にキスをする。……第二話、こんな感じで良かったはず。


「いきます!」

 左手の指輪についたピンクの石がほのかに発光を始め、風も無いのにセーラー服の裾とスカーフ、スカート、髪の毛がひるがえり始める。



はるかな果ての異界の地より、平和を乱す悪人どもを……!」



 『天使な魔法少女 まほてん☆アリス!』

 第二話後半の台詞、本当にこれでいけるだろうか。

 本当のバンクならここで指輪にキスをするはずだが、第二話ではここも違う。


 両手をすぅっ、と上に上げ、頭の上で交差する。

 台詞もアクションも、確かに全部覚えてはいるけれど。

 ステッキを手放すが、浮いたまま落ちない。



「蹴散らし切り捨て吹き飛ばし、平和な世界を護るため、私はこの地へ降り立った……!」


 両手を横に伸ばす。ちりいぃいいいん! 指輪から甲高い音が鳴り響き、指輪のピンクの石がまばゆい輝きを放ち。

 私の身体はふわりと舞い上がり、手放したステッキも一緒に浮き上がる。

 


「緊急事態につき、本人確認を持って能力解放呪文省略っ!」

 設定資料集に書いてあったのは暗記しているけれど、ここはそう言う台詞だから。

【Bestätigen Sie die Auslassung, kein Problem mit dem Start(省略を確認、起動に問題なし)】

「来た! ……チェいンジ☆プリティっ!」



 両手を広げたままぐっと胸を張る。自分の体が発光し、セーラー服もブラジャーも眼鏡も無くなったのがわかる。

 目をつむって、そのままを顔を上にそらす。


 ……今、胸の先端部分ってどうなってるんだろう。

 地上波版と配信版はもちろん、いわゆる謎の発光現象でなにも見えなかったが。

 BS版では、バッチリハッキリ見えちゃってたな。

 そんなことを気にしている場合では無いのだけれど。


 ――すぅ。ごく自然に左足が持ち上がる。

 カメラが左から寄って来てるはずなので、BS版でもディスク版だって、さすがに映せないからこうなるのだけれど。

 そして空中でゆっくり回りながら、新たに白にピンク。丈の短いセーラー服のような上着。多分髪もピンクに変わったはず。


 “変身”のシーケンス。いわゆるバンクシーン。



 きっかけは裕利くんも見ているから。そう、初めはバカにしながら私は。

 結局再放送を追いかけ、配信サービスでさらに復数回見た上でその後、特典付きの初回限定ディスクを全巻購入してまで。

 何度も何度も何度も。全話分、台詞を全員分覚えるまでみたのだ、良く知っている。


 極端に短いスカート、そして手袋、ブーツ、リボンは腰にも。

 “魔法少女の制服”が、輝く私の身体から浮き上がるように装備されていく。



「夢も希望も平和も愛も、欲しいんだったら誰かにあげる!」

 パキーン! 効果音と共にステッキが白銀になって輝きつつ伸び、てっぺんの♡の飾りが大きくなって金に発光、♡の中にはピンクの宝石がハマりくるくる回り始める。

 私の右手はそのステッキを掴む。



「今の私に必要なのは、静かで優しい大地のみっ!」


 背中に小さな羽が生え、残念魔法少女とネットで揶揄される原因のひとつ。そこだけ場違いな黒いスパッツが輝きと共に装備され。



 変身終了。ステッキを掴んだ私は空中でくるんと回ってポーズをとってみせる。

 したいわけでは無く、身体が勝手に動く。

 これも変身のシーケンスなのだ、とは理解ができた。


 とにかく第二話の変身台詞を言い切って、バンクのアクションをやりきる!

 本当に変身が始まった以上、恥ずかしいとか言ってる場合じゃ無い。

 今はこれが絶対に必要なのだ!


「天界第四の翼! 美少女魔法天使、マジカル☆アリス! けんっ! ざんっ!」


 空中で背をそらしてステッキを後ろに突き出しつつ、横ピースのキメポーズ!

 全方向からピンクの照明と、無数の♡のエフェクト。――シャキーン! と言う効果音も付いた。

 こう言うのもMP、消費してるんだろうか……。


「これ以上は無意味です、直ちに全ての戦闘行為を中止して下さい!」


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