スキル:ビブリオマニア Side : Yuri's buddy "Alice"
あの日、ストーカー。がスキルとして表示されて本気で慌てた。
但し。裕利君は裕利君で、私の持ち物欄にパンツと生理用品があったこと。
そして何より、自分の『シスコン』がよほどショックだったらしく。
そこを突っ込む余裕はなかったけれど。
でも私は本当にストーカーだから。
そこを深く突っ込まれたら、言いわけが出来ないのだ。
しかもストーキングの対象は、裕利君。……なのだから。
今でこそ、いわゆる“ぼっち”の私だが。
高校に入るまでは、それでも話のできるお友達は、いた。
そのお友達、珠洲嘉年美夜こと“みゃあちゃん”は中学生でありながら、可愛い。なんて言うと失礼なんじゃ無いか。と思うくらいに美人だった。
プロポーションも中学生平均を楽々と超え。すらっとして背が高く。
私のダミ声とは違い、鈴を転がすような。
などと言う、小説でしか見たことの無い表現が当てはまるような素敵な声で。
そうであるのに、制服をちょっとだけ着崩して、艶々でサラサラな黒髪を無造作に二つにわけておさげにして。
それがまた、実に似合っていた。
美少女とは彼女のことをさすのだ、と彼女を知る誰もが納得した。
そして何故だか縞パンが好きだった。基本的にはブラもお揃いの柄でないとイヤ。
人に見せないところこそ拘る。細かいところまで完璧な美少女。
私もあの見た目に生まれたら、多分人生が変わったろうな。そう思った。
男子はもちろん、女子だって。
彼女と話をして仲良く成りたがったが、みゃあちゃんは人と話すのが、というよりは人そのものが。あまり好きでは無かった。
私と仲良くしてくれたのは、私が人の理から外れているから。なのかも知れない。
私が、みゃあちゃん。と普段から呼べていたこと自体、奇跡のようなものなのだ。
雲の上の美少女。彼女はそうとしか呼べないような存在だった。
しかも、みゃあちゃんは私と違って。
嫌いは嫌いなりに。周囲と意思の疎通を図ることができたし、やたらに行動力があったのである。
何故か彼女に気に入られた私は、だから中学時代は孤立しないで済んだ。
なにしろ、羨望の的であるみゃあちゃんの友達なのだ。
冷たくされるわけが無い。
既存の部活に入る。その気がなかった彼女が立ち上げた読書愛好会には、当初私と二人きりだったがその後、後輩も入ってきて。最終的には部活に格上げになった。
一部の後輩の男の子とは、話すことができるようにも成った。
三年間、彼女と同じクラス、同じ部活だったから。
逆説的には、彼女以外と話す必要がなかったので、だからコミュ障が悪化した。
とも言えるかも知れない。
それ程に私にとって、彼女の存在は大きかった。
私よりも頭が良かったはずの彼女が、何故か同じ高校に進学した時は本当に涙を流して喜んだ。
でも、幸運はそうそう続くものでは無い。
当然に彼女とは別のクラスになり、選択授業も違えば、二人共部活に入るわけも無く。
彼女は彼女で何かしら毎日忙しそうで。
自然と疎遠になっていったのだった。





