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ゲートの守護者達 現場責任者の大巫女様

「はい、そこで全員ストぉおップ! ……ユーリ、どこ行くのっ!?」

 黒いケープを背負った大巫女様。リオに見つかった。

「たいしたことじゃ無い、ちょっと表まで……」


 ずんずんと俺の前まで歩いてくると。

「あのね、わかってる? 私、ユーリのお世話係なの! と言うことは護衛担当でもあるんですけど? ……勝手に王都の外、出ないでくれる!?」

 リオは腰に手を当てて、怒ったポーズで下から俺を見上げる。


 当然、そう言うわな。


 彼女は力も地位もある魔導巫女。当然結界修復作業においては指揮者か、それに近い近い立場であり、また魔力の供給源でもあるはずだ。

 ゲートの近所を補修するなら、その付近に居るのはむしろ当たり前。

 離れる、と言う選択肢がそもそも無い。



「外の様子が変だ。ちょっと見てくる」


「ますますダメに決まってるでしょ! 何度も言わせないで。お世話係筆頭だし、護衛担当統括なの私! 今は、一緒に行けないんだから。ほかの人達みたいに行くなって言わないから、終わるまで待ってて!!」


 と、言われるところまで実は織り込み済み。

 だから、見た目だけで無く人間性も妹、里緒奈に近いだろう。と言うことで屁理屈の準備はしてある。


「リオ。今最優先すべきは、それはゲートの修復だ。違うか?」

「……だから私、今。総監命令でここに居るんだけど。それが何か?」

「俺たちのお付きでありながらゲート修復の責任者をフラれた。それがなんでだか、わかるか?」


 リオの頭の上には?マークが見える様だ。

 ……里緒奈以上にチョロかったな。


「……えっと」

「東ゲートは今、お前の肩に掛かっている! ……そして俺は法国のために呼ばれた救世主だ。変事があれば即座に状況を確認する義務がある、だろ?」



 現状、義務なんか無いけどな。

 どころか本来、リオ以下のここに居る全員が、護衛について来てもおかしくない。

 その辺は気が付くまい。だって、リオだから。



「でも、私は……」

「だから俺とお前だ」

 ――お前がゲートと大結界を守りつつ俺が状況を確認する。そう言いながらもっともらしく腕を組んでみる。


「外で何かあれば俺とアテネー達で何とかする、結界に触るヤツが居てもお前が見ていれば問題ない。……な?」

「うーむ」


 実際問題。通常、ゲートの守備にあたる人の大半が、工事に手を取られている。

 本当に何かあったとして、戦闘に回れるのはアビリィさん初めほんの数人。

 工事に関わっている魔道士が、戦闘に即応して参戦する。と言うのも難しいだろうと思う。

 その部分は間違っていないのだ。



「その上で」

「……その上で?」

「敵が居たとして。結界に関係がなく、力押しが必要になれば、お前がすぐに駆けつけられる位置に居る」

「おぉ、なるほど」


 はい、俺の勝ち。想像以上にあっけなかったな。



「今は大結界の修復に全力を挙げろ。何かあったら呼ぶからその時はすぐ来てくれ」

「うん、わかった。……あぁ。じゃあさ、これ。持っといて」

 リオはそう言いながら、巫女装束に黒いマントを纏った女の子の人形を俺に渡す。

 

「なんだこれ?」

 銀色の髪にに真っ赤なリボン。……って、これお前じゃん!

 ――自分で自分の人形作ったのか? それはそれでちょっとイタいというか……。


「まぁ私がカワイイのは知ってるけどぉ、さすがに自分では。――あのね、私を姉様ねえさまって呼んでくれる達が作ってくれた大事なお人形なんだ。魔導が少し使える様になったからちょっと手を加えてみた」

「そんな大事なものを、なんでまた俺に?」


「スマホみたいな訳には行かないけれどさ。背中のこの部分押しながら話しかけると、私と話ができる。最大で1リーグ弱だし、ほんの一言二言、その程度しか魔力が持たないけど」

 ――今すぐ来い! ってだけ言ってくれたら、人形の場所はわかるから。

 あえて大事な人形に仕込んだのは、念を込めやすくて位置も特定しやすいから、か。


「リオ様、よろしいですか?」

「はぁい、今行きます! ――なんかあったら、ホントにすぐに呼んでよ?」

「あぁ、そのときは頼む」


 はい。あっさり第一関門突破。


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