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ウチのパーティ

「おはよう、主殿、アリス殿。――農繁期は特に法国は戦力が落ちる。王都に何かがあっては士気に関わるからな。後顧こうこの憂いは絶っておかねばならんのだ」

「お仕事が軍隊だけって言う人、半分も居ないんだってね。ほとんどの人が普段は野菜作ったりしてるんだって。僕、知らなかった。――おはよう! 二人とも、今日は早いね!」


「よ、アテネー、ニケ。おはよう」

「……あ、おはよ」


 いつの間にか。俺の後ろに細い革紐で杖を背負ったメイド服のアテネーと、五人分のお茶の用意の載ったワゴン、それを右腕一本で軽々と目の高さまで掲げるチャイナドレスのニケが来ていた。



「さっきも見てきたが、まだ穴とは言えないな。ちょっと薄くなった程度。多分姉御でも破れない」

「確かに破れんが。しかしモリガン、そもそも魔導は私の専門ではないぞ。……まぁさすがは王都の大結界と言ったところではあるな。あれだけほころんでいるのに穴が開くのをイメージ出来ない」



「姉御の闇魔法、破壊力は中央魔導団でもいける。私が保証しよう」

「……いらん! 何が破壊力だ、私を暴力の基準で計るな!」

「だがしかし、どうだ。姉御に当てはまる適当な基準が他に無い」


「う。いや、その。あるだろう? なにかしら。……きっとある。お前なら知っているはずだ、良く思い出してみてくれ!」

「炊事、洗濯、掃除、女らしさ……、な? 暴力以外、姉御に当てはまるものが無い」

「待て、待ってくれ! なんで最後を除外する!? 自信は無いし、最低でも仕方が無いが、そこは除外せずに当てはめて測ってくれ!!」



 この二人、仲が悪いのかと言えばそうでも無く。

 暗殺者と情報屋。

 闇の世界、それもかなり狭い自分の業界から出たことの無かった二人。

 お互いの距離を掴みあぐねているだけで、気は合うんだろうな。


 木陰の簡素なテーブルは、五人座るといっぱいになった。

 メイド服のアテネーが多少ギクシャクして見える動きでお茶をいれる。



「あ、主殿。アリス殿も。……お茶の入れ方の本式の作法を教わって、その通りしているのだが。どうだろうか」

「むぅ。……おい、しぃ」

「お茶の善し悪しはわからんが、美味いと思うぞ?」


 ぴゅい!

【裕利君、言い方。――また泣かせちゃうんだから】

「両手でカップ持ってるくせに、どうやって打ち込んだっ!?」


「さすがはネー様! 覚えるのはやーい!! だったら、だったら! さっきのモリィの話、炊事はリオさんに勝てるんじゃない?」

「ところがそうはいかんのだ、ニケさん。……リオさんのスキルはただ事では無いぞ。事実上、東支神殿の食を統括する炊事長さんが、――アレには勝てん。と真顔で言うのだからな」



 あ、やっぱり。

 なんか普通じゃ無いと思ってたんだ。

 ここに来るまでちっともサバイバル感が出ないと思ってたが、それはリオの作る食事だったんだな。


 アイツが材料がなんであれ、とりあえず食べられる形にしてしまうから。

 あのワイバーンの燻製も、リオが作ったからこそ美味かったし日持ちしたんだろう。


 鼻の利くニケが獲物を嗅ぎ付け、ハンターとしても超一流のアテネーが仕留める。

 さらに食べられるものの鑑別は絶対のモリガンが野草を集め、簡単な調味料さえ調合し。

 そこに完璧な料理人のリオが居るのである。


 素材をそのままワイルドに焼いただけでも、良い食材を腕の良い料理人が焼くのだ。当然、マズくなる道理はない。

 三度の飯が食べられて、しかも美味い。サバイバル感を感じるわけがない。


 俺とアリスは、だからここまで。

 ただ座っていれば森の中だろうと山の上だろうと、おいしいものが食べられたのだ。

 何かを感じるとしても、せいぜいレトルトパックを持っていったゆるいキャンプ。くらいのものだ。

 なんというサバイバル向きの人選だろう。

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