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皇帝三神将 Side : Magical Empire

「ねぇ、イストリパドオア。法国中枢って、なにする気なの? 私達にも内緒!?」

 軍議終了ののち。

 王宮の廊下で大股で歩くイストリパドオアになんとか小走りで追いつく。



 そのイストリパドオアは、やたらに背が高いのでその分足も長い。

 私だって。

 女性としてはかなり身長、高く設定してあるのだが、さらに頭一つ半はでかい。

 百九十超えちゃってるよね、背丈。


 パワーとスタミナはその分多くなるが、単純に的がデカくなって不利。

 バランス的に人族なら男性は一八〇弱、女性は一六〇強がベスト。

 彼だって興亡ぜんさくから居るんだから、キャラメイクの時。そういうマイナス補正がかかる、とは知っているはず。


 どこまでも腕には自信あるんだよな、このおっさん。

 なんでチートに拘るんだろ。



「王都の東支神殿だ。あそこには何度も痛い目に遭わされているからな」

 歩みの速度を落とすと問いかけに答える。

 無視されるかとも思ったが、話はしてくれるものらしい。


「国境線どころか、法国のど真ん中に直接……? だいたい、東支神殿ったら法国のスパイが本拠地にしてるとこじゃん! しかも今、ユーリ君達が居るから警備も通常より強化してるのに、そこに直接しかける……!?」


「だからこそ、だ。そこで混乱を引き起こせば、彼らもこちらの魔道力の残りなどに構ってはおれぬだろう? 一応下準備もしてある」

 理屈はわからないでもないけれど、その後。どうするつもり!?

 それに。


「でもさ、三神将の失地回復が主な目的でしょ? だったらそれって本当は私の仕事なんでは?」

「スクワルタトゥレ。むしろ俺はおまえが味方で良かったと思っている。俺が指揮を執ったのでは、おそらく魔力は使い果たし、兵も全滅しただろう。……お世辞でなく、うまく人を回すものだ。と、俺は素直に感心をしているところだ」


 イストリパドオアは歩くのをやめるとこちらを振り返り、メガネを押し上げる。

「それに実力はともかくも。一応、三神将筆頭だからな。失地回復を考えるなら、それは私の仕事だ」

「あら、珍しいことを……。戦闘力、と言う面から言えば実力的には誰も敵わないわよ」 



「お前から褒められるとはな、雨がふるのでは無いか?。……おそらく今回に限っては、俺だろうが黒騎士だろうが。誰が指揮を執ろうと結果は同じだったのでないか? ……ラビットビル、いや、今はユーリ・ウトーか」


「ユーリ君狙いってわけ? やめといた方が良いよ。彼はイベントをうまく自分の目的に絡めてる感じだし、当然リアルでもあるから撃破ボーナスで属性追加! なんてことも無いんだよ?」

 あまりにもうまみがなさ過ぎる。ただ、ボーナスがあるとすれば。


「わかっている、出来れば当たりたくない。ただ、彼とは以前やり合ったことがあるが。……多分、おまえの方が強いさ」

 黒髪のオールバックに無表情。

 でも顔に書いてある。ユーリ君と戦いたい、と。


 へぇ、意外。そういう感情はあるんだ……。

 でも。それはそれとして、この先。



「ね。……何、考えてんの? あんた」

「買い被りだな、らしくも無い。――私は何処まで行ってもただのチーター(いかさまし)だよ、ならばそのように振る舞うまでのこと」

「何をしたいのか、あんただけはさっぱりだね」


「簡単なことだ。……俺はおまえほど、この世界をゲームの中だ。と割り切ることが出来ん。運営という名の神がいないこの世界、ならばチートだって特殊能力の一種だろう。その自分が出来ることをする。それだけだ。……他には何も無いさ」

 それだけ言うと彼はくるり、と後ろを向くと制服の裾を翻して。姿勢良く歩いて行った。



 そう、私はどうせゲーム世界だから好き勝手しても良いんだ。という考え方が根底にあることはどうしても否めない。

 多分死んだらそこで本当の終わりだろうし、ほかのみんなに嫌われたら生活はしづらいだろうけど。


 でも、だからどうした。と思っている部分は間違いなくある。

 だから、ユーリ君と確実にり合える、と言われたら……。

 きっと、喜んで現場に駆けつけるし。


 そこで、もしも生け捕りに出来るなら。どうせゲームの世界なのだし。

 足の健をたたき切ったうえで成長しない魔法をかけて、私の部屋で飼ったって良い。

 そんな危ないことさえ、半分は本気で考えてる。



 斬に関して言えば、元々剣士としては優秀だったから、この世界では騎士として身を立てる予定で、その通りに三神将まで一気に出世はしたけれど。

 短、中期的には打倒ユーリ君の目標が出来たので最近は張り切ってさえ居る。


 彼としては、ユーリ君と正面切って当たるならそれはご褒美。

 それで命を落としたとしても、だ。

 これはこれで、この世界になじんだ上で、多少ゲーム的感覚も残した実に健全な反応だと思う。



 翻ってイストリパドオア。

 彼はこの世界もまた現実なのだと肯定しながら、元々剣技は超一流なのに、チートまで駆使して。それで自分の立ち位置は皇帝直下のキルマシーン。


 それ以外の選択肢をもたない。

 それがあのおっさんの考え方。

 その男がユーリ君とやり合いたい?


 考えようによっては私よりも危険じゃないのか? あのおっさん。



 後ろから距離をとっていた斬が近づいてくる。

「なぁあねさん。イストリのおっさんは結局、この世界で何がしたいんだ?」

「自分で聞いてきなよ。いずれ私とは、利害が一致して同じ制服を着てはいるけどねぇ。考えは絶対合わないからさ」


「俺はあのおっさん、どうも苦手で」

「得意な人、居るの……?」

「……いや。それはそうだけどさ」


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