ワイバーンに襲われる
所属:某公立高校普通課
高校二年生:卯棟 裕利
ワイバーン。
ドラゴンの一種。
前足にあたる部分が羽になっていて、身体がドラゴン。
一般的にはそう言うモンスター、と言う認識で間違い無い。
まさにそれが、目の前に居る。前方約二〇m、高さにして一〇mちょい。
空に浮いたままこちらを睨んでいる。
VRモニターで感覚投入した視線では無く、本当の目でそれを見ている。
単なる高校生で学ランを着ている俺の目の前、などと言う場所に。
普通に考えれば、目の前一〇mなどという距離で。
居て良いものでは無いだろうとは俺も思う。
その居ないはずの“怪物”は俺達めがけて急降下する。
「うわ!」
俺の隣、白いセーラー服を着た女子が風圧で吹き飛ぶ。
丸太のような足についた鋼のような指、そしてナイフのような爪。
どうやら捕まれずに済んだが、かすっただけでもただじゃ済まないのは明らかだ。
「大丈夫か! とにかく逃げるぞ!!」
吹き飛んで転んだ彼女を引き起こして、返事は待たずに腕を掴んで茂みを目指す。
目の前にある茂みに入れば、サイズ的にも、空を飛ぶという行動から見ても。
一旦、命の危機は回避できると思うんだけど。
そうはさせじと、再度ワイバーンが突っ込んでくる。
「……ヤバい!」
気が付くのに一瞬遅れた二人は、ワイバーンの正面に立つ形になった。
「グワオゥ!」
とかなんとか。ワイバーンは目の前で文字にすることが難しい叫びを上げる。
……口開けたら一mはあるんじゃねぇの、あれ。
俺程度、一飲みだわ……、
「……き、牙」
「……うえ、さすが肉食獣。口臭がハンパない」
完全に万事休す。と思ったが。
そのままワイバーンは再度空中へと舞い上がった。
ワイバーンが居た位置には、槍を持つコスプレ巫女服の姿。
「今のうちにっ!」
「済まん! ――走れぇ!!」
白いセーラー服の腕を取って、再度走り出す。
とにかくこれは現実だ! 喰われたら。死ぬ。
なんでこんなことになったのか。
話は一〇日前後、遡る。
 





