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「おはよう。」
「ああ。おはよう。」
家の中には味噌汁と炊きたてのご飯の匂いが漂う。さくらもここが日本ならば穏やかな気持ちで朝を迎えられただろうが、生憎昨日の出来事は夢ではなかったようで二階の自室から降り、縁側出て外の森を見ると思わず溜息を10年分した気分になってしまった。
まぁ、クロイドを救えたから別に大損って訳じゃないけどね。
「これは、確か味噌汁と言ったか。うん。美味そうな匂いだ。」
「玉子焼きもあるよ。」
「む、それも美味そうだ。期待しよう。」
「これ、クロイド自分で入れて。好みの量が分からないから。見てて。これがしゃもじでご飯をこう入れるための道具ね。で、味噌汁がこれでお玉って言うんだけどクロイド的には大きいスプーンってところかな。はい。やってみて。」
「ああ。」
クロイドはしゃもじを手に炊飯器を開けるとその匂いを堪能した。
「おお!良い匂いだ。獣人の鼻では尚更だな。部下にも匂わせたいな。味噌汁も、うん。良い匂いだ。さくらは料理が上手いな。」
「そんなに感激しなくてもいいよ。ここの世界では火おこしからやるんでしょ?なら、私の世界の文明だったらクロイドでもこのくらいはできるよ。お米は洗って炊飯器に入れてボタン押すだけだもん。味噌汁も出汁は素使ってるしめっちゃ楽だね。」
「ふむ。俺も何か手伝いができないだろうか?このままだとさくらに甘えそうだ。」
「別に、掃除機とかやってくれたらいいよ。クロイド、簡単で感激しちゃうよ。あ!この世界の肉が食べたい!ジビエ?的な?」
「そうか。じゃあ、捕ってこよう。幸い俺は腕はたつ方だと自負している。ただ、武器は使わないがな。状態が最悪だ。建前でお情け程度に武器防具を装備させられたが、あれはゴミだな。新人冒険者のしている装備より100倍酷い。ゴブリンに一撃いれただけで折れるぞ。素手の方がマシだな。」
「うっそそんなに?まぁ、物騒な話しは後でで。今はご飯を食べよう。」
二人は席につき、手を合わせる。
「「いただきます。」」