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「ありがとう。その、なんだ。お互い名前を知らないなと思ってな。」
「そうだ。そうだった。あ、私は佐倉さくら。2回繰り返してる風に聞こえると思うけど、1回目は名字、えっと、家名で、2回目は名前。わかりづらいけど。」
「俺はクロイドだ。宜しく。」
「うん。宜しく。えへへ。」
クロイドとさくらは食事を終え。クロイドにはおじいちゃんの浴衣を着てもらった。さくらは食器洗い洗濯を、クロイドは武器と防具の手入れをした。夜になりクロイドには疑問が浮かび上がっていた。
「さくらは何故ここにいる?」
「そーなんだよね。私もここに来たばっかでこの世界のことなんにも知らないんだよね。だから、クロイドが目覚めたら教えてもらおうと思ってさ。」
「そうか。ここは、多分だが"迷いの森"と呼ばれている場所だ。」
「"迷いの森"?ん?多分?」
「ああ。多分だ。俺もここにきて驚いている。迷いの森はな森が受け入れた者以外は入れないんだ。俺も今まで受け入れられていなかったんだが、何故か今回はするりと入れたな。」
「ふーん。ほんとに異世界だ。っていうか、クロイドはどうして怪我してたの?満身創痍ってああ言うんだね。って思っちゃった。」
「ああ、怪我をしていたのは、その、さくらには刺激が強いと思うが。」
「ああ、覚悟はそれなりにしてるよ。拾ったときから。」
「そうか。まぁ、拷問だな。俺は、見ての通り獣人だ。体が丈夫なんだ。で、通常より厳しくてな。それが、2ヶ月続いた。」
「え!2ヶ月!ほんとに丈夫だね。不謹慎だけど。」
「フキンシン?まぁ、よくありそうな話だぞ。俺は、国に遣える騎士でな。侯爵家から娘と婚約しないかと言われてな。丁寧に断ったはずなんだが、逆恨みを買ってな。ありもしない罪をきせられた。で、俺がなかなか吐かないから凶悪な魔物が出る森に放置だ。俺はこれ幸いと獣化したら後ろから攻撃されて、逃げその森の奥にある"迷いの森"に一か八か入ったんだ。で、さくらと出会った。」
濃いいい。予想はしてたけど、なかなかにこゆい。小説で読んだら何でもないけど、経験した人が隣にいると現実味がヤバすぎる。
「そっか。そりゃあ、警戒するわな。」
「いや、それは俺が悪かったんだ。さくらには感謝してもしきれない恩人なのに。それと、さくらはあの時も言っていたが、転移とかなんとか。」
「ああ、それね。今朝ね、起きたらこの森のなかに家ごとこの世界に転移されてたってこと。吃驚したわ。で、家の外に出たら、クロイドが満身創痍でつっ立ってて、みるみる縮んでいくから好奇心に負けて見に行ったらクロイドがいたの。も~、重かったよ。防具と武器はボロボロだけど、私にとったら重かったよ。靴も脱がして引きずっちゃったよ。」
「そうか。それは、驚きだな。ここに来た記憶はないが。」
クロイドは私の話を聞いて目を見開いた。ふっふっふ。驚いただろ。
「しかし、目が覚めたら驚きの連続だったな。まさか、さくらが転移者だったなんてな。この家にも驚きだな。ボタン?とやらを押すだけでお湯が沸き出てくるとは。風呂は私には少し窮屈だったが気持ちのいいものだった。さくらの作る食事もあの柔らかいパンと旨いミルクも美味かった。初めて食べる味だが、妙に気が抜けるな。」
「えへへ。ありがとう。」
私達はそこで話を打ち切り、寝ることにした。