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「ふぁ~。………………んー!」


朝日が差し込む部屋のベッドで欠伸をかき、のびをするとなんとも気持ちいい。


ガサガサ


「ん?」


私しか住んでいないこの家で草を掻き分けたような音なんてするはずがない。だって、ここは住宅地なのだから。私の隣は空き地で、よく手入れをされている土地で少しの雑草は生えていてもそんなガサガサなるようなほど生えていた訳じゃない。


「しかも、朝日って。隣はコンクリートの壁だったよね。」


私は恐る恐る窓のカーテンをひき、外を見ると生命力が溢れる森と家の周りだけ綺麗に小さな草原が広がっていた。


「ん?夢?幻覚?………………………………」


ドタドタドタ


ガラガラガラ


カッカッカッカ


「…。」


開いた口が閉まらなかった。


「………………何処、ここ。」


佐倉さくら生まれて23年とおよそ11ヶ月。(来月が誕生月だから合っているはずだ。)こんな事態になったのは初めてだ。いや、小説も読むけど流石に信じてなかったよ。転移とかね。転生はあり得るかもだけど。てか、さっきガサガサいったよね。


もしかして、熊とか?


家の塀にへばりつきながら家を一周するが、何もな


「あ。」


目があった。しかも、狐。しかも、なかなかデカイ。


「え、何?フラグってやつ?」


けれど、狐は黒くて、ん?狐か?まぁ、いいや。満身創痍で真っ赤だよ。血もポタポタ滴り落ちて鉄臭い。血だまりが出来ている。


『な…………だ。』


ドガーーーン


「え。何?死んだ?」


急に現れて急に倒れるとか何?フラグ?てか、フラグって意味分かってないんだけどさ。えええ。どうしたら良いの?


ええ。しかも、シュルシュル小さくなっていくんですけど。取り敢えず見に行けばいいかな?小さかったら私でも対処できそうだし。


と、訳のわからない自信を持って黒い狐の元に向かう。


「あ、人。……ん?人?って、血だらけじゃん!大丈夫ですかー!取り敢えず引きずりますよー!名前わかりますー?」


看護師の研修生だけど看護学部で培った経験を頼りに対応していく。家にも医療セットが勉強のために置いてある。良かったー!興味本意で買っといて!


「って、重!何?めっちゃ武器とか着いてるんですけど。……引きずっても無理だなこりゃ。うん。現状把握は後で。防具と武器は後で運ぼう。」


私はお構いなしに武器と防具を剥いでいく。靴もね。だってこの人筋肉結構ついてるし。身長も190はありそうだしね。


私は家に連れて行ったはいいが、玄関が汚れそうなので拭き掃除が楽な縁側で治療をした。


********


「うーん。水が出るか心配だったけど出たね。ガスも通ってるし、電気も余裕。ナニコレ神秘?奇跡?」


看病はお手のものだ。おじいちゃんの介護をやってたし。死んだけど。熱もでたけど。さっき下がってきたし。でも、手を洗うときに洗面所に行ったらパジャマが血だらけで吃驚したわ。パジャマで看護って。人類初かな。


「ってか。誰?何か耳はえてるし。尻尾もある。黒いけど。」


完璧にこれは。さっきの黒い狐だね。うん。私冷静で偉いよ。後でこの人に色々聞こう。


「あ!武器と防具放置しっぱなしだ!」


森のなかに入ってさっきのところにいくと武器と防具が放置してあった。両手じゃ無理だと思ったから買い物かご持ってきて正解だね。剣は後でかな。重かったし。片手じゃあ無理だ。車を使いたかったけど森だし道ないし。


森を出て家に帰るとお腹がすいた。


「あれ?材料ってあるのかなぁ。今日買い出しいこうとしてたから食パンと少しのお米とそのストックしかないや。」


私は縁側に武器と防具を置きに行った。


すると手を急に捕まれ頸動脈に指を添えられた。後ろから。吃驚してかごを落としてしまった。


「お前。何者だ。」

「え。」


ええええええ!び、吃驚した。しかも、「お前。何者だ。」って、小説か!ファンタジーかよ!いや、ファンタジーなんだろうけどさ。


「え。え~。佐倉さくらですけど。えっと~、おはようございます。え~、き、傷は痛みませんか?」

「ふざけるな。ここはどこだ。さっさと答えろ。殺すぞ。」


ぐっと手に力が入ったのがわかった。けど、勝手な言い分に腹が立った。


「………けるなだって?こっちが聞きたいわ!朝起きたら、家と一緒に森のなかに転移みたいなんされてるし、外に出たら出たででっかい黒い狐がいるし、あんただし!怪我を治療してやったら脅されるし!あ~もう!あんたは何様だっつってんの!治療してもらって恩人にその態度は何様だ!お前は神か何かか!違うだろ!恩を感じてんならさっさと謝りやがれ!そして、感謝しろ!バカタレが!」


私はそのままの体勢で文句を垂れ後半は説教になってしまった。


すると、背中に体温を感じそのまま凄い重みがきた。


「重!え、何?もう!また、急だな!」

「…………すまない。腹が減って力がはいらない。」

「え、何それ。アン○ンマン?」


思わず某役立つあんぱんを言ってしまったが、本当にヤバそうだ。


縁側まで運び、寝かせた。けれど、意識はまだある。


「ちょっと待ってて!」


私は牛乳と食パンを袋ごと持ち急いで縁側まで戻る。


「はいこれ!取り敢えずこれ飲んでこれ食べて!お腹吃驚しちゃうかもだけど、水は寝てる間飲ましてたからいけるはず!」

「腕が、うご、かない。」

「ああもう!背中に手をいれるよ。じっとして。こっち向いて。あと、目をちゃんと開けて。」

「ああ。」


私は男をほぼ抱き上げるようなかたちで牛乳を飲ませた。それから、食パンを牛乳に浸し口に持っていくとあっという間に食パン一枚なくなった。


「もっと、少ない。」

「我が儘言わない。あんた、食べれるでしょう。私もお腹が空いてるの。ご飯作ってるから、ここで待ってて。あ、うちのなか入る?でも、お風呂にはいって血を流して。家が血生臭くなるから。あと、着替えはこっちで用意する。」

「すまなかった。その、脅したりして。ありがとう。」

「良いよ。私も鬱憤溜まってたから。こっちこそ、八つ当たりしてごめんね?」


私は謝るときは謝れる良い大人なのだ。実際八つ当たりしたし、この人?も多分敵かなんかと思ったんじゃないかな。


「じゃあ、たてる?その、お風呂入れる?あ、タオルで拭いた方が早いかな?」

「ああ、そうしてくれ、立てそうにない。頼む。」

「うん。わかった。」


私は、風呂場から洗面器とタオルを取りお湯を沸かした。お湯を洗面器に入れ水を足す。人肌くらいの温かさにになったらタオルを入れて持っていった。


男は大人しく待っており私が近付くとすぐこちらに気がついた。そのあと、にこりと微笑んだ。





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