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桃源郷は事件がいっぱい  作者: 椿 雅香
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移住願望(4)

長さがまちまちになって、申し訳ありません。


 土曜になると、山道健二は外出した。

 彼は、平日は、一日中、桃源郷本部である小野寺家兼小林家のリビングの隅に設置した盗聴器の受信機の前で、町中から送られてくる情報をチェックしている。驚いたことに、健二は、十箇所以上の盗聴器から送られてくる音を小さく流しっぱなしにして、同時にチェックするのだ。


 別段、大したことのないものが、ほとんどだ。


 でも、時折、例の黒崎グループのメンバーが、この頃、消極的になった黒崎のことをぼやいたり、黒崎の知り合いの暴力団関係者の中村が、子分達に、何で、桃源郷の襲撃が中止になったのだろう?と、首を捻っているのが、聞こえた。


 中村は、先の襲撃事件で、山道氏にライフルで腕を打ち抜かれて救急車で運ばれた男だ。

 あの時、小林先生が、薬剤師でもある夫人の発明した『記憶をなくす薬』を飲ませたので、ことの顛末を覚えていない。

 だから、彼は、桃源郷の襲撃に行くつもりが、途中で除雪車に突っ込んで交通事故を起こしてしまったため、しかも、警官まで来てしまったために、中止になったとしか思っていない。


 あの後、何度か、黒崎に、いつ襲撃するのか訊くが、黒崎は困ったような顔をして、

「襲撃は中止です。あの交通事故のせいで、あそこら一帯は目立ちすぎるんです」と、言うばかりだ。

 


 何かがあったはずだった。

 しかし、黒崎は、頑として口を割らない。


 健二は、そういった、これからの事件になりそうな音声を録音して一同に報告した。

 桃源郷の平穏のためには、戦わなければならない。そのためには、情報収集が不可欠だった。

 

 そんな健二が、土曜になると、昼と夜の二食分の弁当を持って出掛けるのだ。

 繁華街の様子を調べたり、暴力団関係者の動きをチェックしたりしているとのことだった。それが土曜なのは、土曜になると、桃源郷には舜が帰って来て、人手が増えるからだ。

 慎二が、健二の代わりに盗聴作業をし、舜が、慎二の代わりに農作業に当たった。


 

 それにしても、健二は、どこに泊まっているのだろう?

 ネットカフェにでも泊まっているのだろうか?


 健二の母である山道夫人が首を傾げた。



「ネットカフェ?あそこも大事なチェックポイントだぜ」

 健二が笑って、電気自動車に便乗した。

 土曜に補習がある凛を高校に送る車に同乗するのだ。帰りは、月曜の朝、凛を高校へ送った車で戻って来る。高校の正門前で待っているのだ。


 

 土曜と日曜、健二は、どこにいるのだろう?

 そして、どこに泊まっているのだろう?


 桃源郷の人々の謎だった。



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