6話 ディートリヒ家の一日 その2
前回のあらすじ
ジュードがオ○コトヌシ様連れてきた。
「山の神がお怒りですよどうするんですかディートリヒさん。」
とりあえず寝たいなぁ、と思いながらディートリヒさんを見たら、ちょっとだけ私と同じような顔をしていた。要するに面倒くさいって顔だ。
「…これもウチの日常だ。手順は知っておけ。」
え、日常茶飯事な上に手順とかあるんですか。
「まずはジュードと荒ぶった獣がある。」
そんな三分クッキングみたいに。
「それでジュードが獣に激突されて吹き飛ぶ。」
ドガッ!
巨大猪に激突されてジュードは綺麗な弧を描いて、私たちの頭を越えて吹き飛び、地面にも激突すると、ごろごろ転がって私たちからかなり離れた位置でようやく止まった。ちょうど10mくらいかな。そのあと、私たちの前に巨大猪が到着した。
「それでメリーが負傷したジュードを治癒魔法の類いで癒す。」
「メリーさん魔法使いなんですか。」
「使えはするが魔法使いという区分ではないな。」
「…はぁ。」
「まあここで大抵の獣はすっきりして帰るんだが…」
ーーーブルルッ
鼻を鳴らして右の前足で地面をかくオ○コトヌシ様は未だお怒りのようだった。
「もう一発やりたいらしいな。」
「流石のジュードも死ぬでしょ、それ。」
「死ぬ。今も死にかけだけどな。」
ーーーブルルッ
『なんなんだあの人間は…!』
「…ん?」
ーーーブルッ、ブルルッ
『我の縄張りに図々しく侵入してきたかと思えば、我のおやつを汚い足で踏み潰しよって…!』
ん?ん?…あれ?
「ディートリヒさん、ここらへんの獣って喋るんですか。」
「…何だお前いきなり。そんなわけないだろう。高位の魔獣でもあるまいし。」
…高位な魔獣なら喋るんだ。
いやいや、それよりも。猪と意思疏通が交わせるってどういうことだろう。…そういえば、今朝の番の鳥の会話も聞いてたような気がする。
ーーーブルッ
『なんだ人間の小娘、まるで我の言葉を理解しているような顔をして。』
「いやそれ的を得てるから!…はっ!」
しまった、思わず言葉を返してしまった。案の定ディートリヒさんはドン引きしている。流石のメリーさんも目を剥いていた。さすがにもうジュード助けてあげたら、メリーさん。まだ治癒させてないでしょ。
「…お前、今、猪みたいな鳴き声出さなかったか。」
「マジですか。ブルルッとか言っちゃったやつですか。」
「…何だか見てはいけないものを見た気分だ。いや、聞いてはいけないものか…」
「しゃーないじゃないですか。あいつの言葉が理解できちゃうんだから。」
「?!…お前、所有者〈ホルダー〉か…?!」
「止めて、中二病はとうの昔に卒業したんですよ。…あぁ思い出したくない、あの禁断の書…!」
「?なにを言っているか分からんが、とにかくあの猪と意思疏通でもしてみろ。」
「…それ端から見たら、ブルルブルル言ってんでしょ?絶対私なら引くよ。」
「明日は午後まで寝かせてやる。」
「よしきた。ブルルでもブヒブヒでもデュフフとでも言ってやらぁ。」
こちらを向いて鼻を荒げているオ○コトヌシ様に私は向き直り、視線を合わせるためにかがみこんだ。
「と言うわけで、私が哀れみの目を向けられるのが最低人数に抑えられるように、さっさと用件を言え。ちんたらしてると猪鍋にするからな。」
『む、人間!我を何と心得る!我はこの山の主…』
「知らねぇよ食材。煮られるのと焼かれるのどっちがお好みだ。」
『くっ…我は台無しにされた我が木の実の数々を返してもらえれば、それで赦してやらないこともない。』
なるほど、台無しにされた飯を返せ、と。
「つまりそういうことです。ディートリヒさん。」
「訳せ。分からねぇから。」
「…へぇ、この私に頭を垂れて頼むと仰るのですか…?」
「明日の休み、返上な。」
「サッセーン。ご飯を台無しにされたから返せって言ってまーす。」
「つまりはジュードが悪いと。」
「聞く限りだと10割は。」
「よし、ジュードの今日の夕飯をこいつに分けてやるか。」
結果、ジュードの夕飯の木の実パンを代償にオ○コトヌシ様は山に帰っていった。ちなみに木の実パンをものすごく気に入っていた。地味に可愛かった。
そしてジュードの夕飯はスープだけになった。恨めしげな顔をされたがお門違いにもほどがある。むしろ感謝して崇め奉られるべきだ。そう思って私はパンをジュードに見せつけながら食べたら、パンは確かに旨かった。いやあ、他人の悔しげな顔を見ながらの食事は良いなぁ。
夕飯のメニューは木の実パンと野菜スープです。
前回の後書きで言っていたことは忘れてry
前回で言ったように言葉に触れたには触れたのですがまったく触れてませんね。そのうち触れますよ、はい。