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だから私はやる気が出ない。  作者: 灯火
一章 私と村と恩人(仮)編
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4話 しかし私は働きたくない。



ディーさんから、働くのだからこいつを着ろ、と乱雑に投げつけられたワンピースを、投げつけられて頭に被った状態のまま私は寝ていた。

え?これ着替えなきゃいけない?私働かなきゃいけない?

しかしこのままぐうたらしているとディーさんに無理矢理着せ替えられそうなので致し方なく着ることにした(完全な偏見)。脱いだ制服は、倒れていた(寝ていた)私と一緒に持ってきてくれたらしいスクールバッグに詰め込んでおいた。中を見ると、何かを盗られたようでもないので、少しだけ安心する。中身は、最低限の筆記用具に新品のルーズリーフ、塾の教材、その日の学校の授業の教科書複数、スマホ、栗しぐれ、栗まんじゅう。よし、完璧だ。栗しぐれと栗まんじゅうさえあれば一週間は(精神的に)生きられる。栗をこよなく愛する私は、これが無ければ勉強をする気が微塵も起きないため、私にとってはマストアイテムなのであった。


とりあえず寝た状態のまま布団の中で着替えた後、いざ立ち上がってみれば袖の部分は余っているし、裾も床に付かんとするほど長かった。


「ディーさん、着替えましたよ。」


服のサイズが少々大きいことは目を瞑って、部屋から出るとすぐに廊下にディーさんがいた。


「…お前、小さいな。」

「服がでけぇんだよハゲ。おっとハゲではないですよね、おじさん。」

「俺はまだお兄さんだ。」


おっと、小さい、という言葉が心外すぎて思わず暴言が漏れてしまった。いやだって、元の世界じゃむしろ大きいって言われてたから、あまりにも心外すぎてね?


「だってお前、どう見ても155cmくらいだろ?」

「は?寝ぼけてんの?160cmは超えてました。」

「サバ読むなってお嬢ちゃ、ごふっ。」


ドスッ


見事私の拳がディーさんの鳩尾にクリーンヒット。の割にはダメージが少ないのが悲しい。が、多少なりともダメージは与えれたので妥協しよう。…ん?センチメートル…?


「誰がお嬢ちゃんだ。私は17だ。サバも読んでない。」

「は?お前どう見ても15ないだろ、」

「次は股間狙いますけど。」

「や、止めろってその目。冗談だって。」

「私も冗談ですよ。てめぇの汚い部分になんか服越しでも触りたくない。」

「いやお前の目は本気だった。」


残念ながら私の表情筋も働きたくない盛りなので、中々真顔が崩れないことで定評がある。何を言っても冗談に思われず、人を殺しそうとか殺気があふれでているとか、何度言われたことか。思い出したらあまりにも不本意なことだ、まったく失礼だ。


「ディー様ぁ~、ジュードを鶏小屋に監禁、完了しましたぁ~!

あ、お客様、とってもお似合いです、その格好!」


推定FかGカップの巨乳を揺らして駆けてきたボインさんの言葉は、よくある服屋の店員が言う、信用できない言葉の一つ、『お客様とぉってもお似合いですぅ!』を聞いて、正直ボインさんとは関わるのが難しそうだと思った。


「メリー、こいつは今日からうちで働かせることにした。お前が色々教えてやってやれ。」

「りょーうかいですディー様っ!遅れました私、メリエルグと申します。お気軽にメリーとお呼びください。それであなた様は…?」

「え?あー…えっと、」


いかん、ここでは一応記憶喪失扱いだから、不用意に名前が言えない。


「こいつの名前はディアだ。」

「え?」

「ディア様ですね!では以後、よろしくお願いします!」

「え、何ちょっと、ディアって。ねぇ何、ディアって。」

「名が無いのは不便だろ?だから俺が名付けてやった。

それと俺はディートリヒだ。気軽にディーと呼んでくれて構わないぞ。」

「頼んでないです。ディートリヒさん。」

「いきなりよそよそしくなってないか。さっきまでふてぶてしくディーさんと呼んでいたくせに。」

「ふてぶてしくは余計だと思います。」


なんかこう、呼んでくれて構わないって言われるとむしろ言いたくなくなるよね。


「ていうか、ディアってなんですか。あなたとディの部分が被っていた非常に不満なんですが。」

「由来はブバルディアからだ。花言葉は、誠実な愛。名に恥じないよう、お前を矯正させてはやろうと思った。」

「何それ吐きそう。誠実な愛とか気持ち悪い!」

「本当に歪んでるなお前は…本当に貴族の出か?いや、貴族だからこんなにも厄介な性をしているのか。何れにしろ…調教のしがいがある。」


そう言って、にたぁ、と笑うディートリヒさんは完全に悪者にしか見えなかった。あと言葉からして、私にエロいことするんでしょう!同人誌みたいに!薄い本みたいに!しか感じない。言葉は選ぼうよ。


「良し、さっさと行くぞ。まずは麦の収穫だ。」

「メリーさーん私お腹いたいですぅぅ背負って運んでくださいぃぃ。」

「はぁい了解です!」

「こいつを甘やかすなメリー!歩かせろ!」

「この鬼、悪魔。」

「お前がだらけすぎなんだ!」



結局畑までは歩いて行かされた。




主人公は栗が好物です。

それとこの世界での単位がcm、というのには後々触れていきます。言葉が日本語で通じるのも、一応理由があります。

言葉の謎には次回で少し触れるつもりです。


服がでけぇんだよハゲ。この台詞が何故か気に入りました。

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