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だから私はやる気が出ない。  作者: 灯火
二章 そうだ、王都に行こう編
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10話 私と素敵な旅行



私が、生川永和改め、ディアとなった日から実に一週間が経った。

あれから昼間は農作業(秋は主に収穫らしい)に徹し、夜はディートリヒさんが教えてくれる、この世界のことと読み書きの勉強のサイクルを繰り返した。魔女がくれた<特技(ユニークスキル)>は読み書きは翻訳してくれないらしく、読み書きできないと生きていくのに不便なこともあるため、仕方なく勉強することとなった。そしてここで私は大きく苦労した。日本語とラグリア王国の言葉は当然異なる訳だが、ラグリア語特有の言葉の読み方を発すると、<特技(ユニークスキル)>が勝手に翻訳してしまうため、勉強にならないということだ。要するに、りんご、アップル!なんて勉強ができないということで。

そこは、ディートリヒさんの素敵な鬼畜授業によって何とかはなってはいるが、私が兎に角辛い。


麦の収穫もようやく一段落して、いつもとあまり変わらないメニューの夕食を食べているときにディートリヒさんが突然切り出した。


「ディア、明日から王都に俺と行くからな。」

「は?」


あまりに突拍子がない言葉に私は唖然として、危うく食べたキノコを口から溢しそうになった。何だその京都に行こうみたいなノリは。ちなみにこのキノコはメリーさんと私で今朝、山に行って取ってきたものだ。太陽も出ていない早朝に起こしやがって…ディートリヒさんに絶対いつか仕返ししてやる。私のねちっこさは折り紙つきだぞ。


「お前の服とか買わなければならないだろう。」

「まあ、いつまでもメリーさんの服と靴という訳にもいきませんしね。」


制服を着るわけにもいかないので(と言うか気付いたら私が元の世界から持ってきていた私物は消滅していた。確実に魔女の仕業である。)、今まではメリーさんの服と靴を借りていたが、何せサイズが大きくて合わないのがここ一週間の悩みだった。動きにくいことこの上ない上に、服の胸の部分が大きく余って、服を着る度になんとも言えない敗北感に苛まれるのはなんとも辛かった。

いや、私は決して貧乳ではないし、日本人の平均を超えている胸は持っているし、正直胸なんてあっても邪魔だから欲しいとは思わないけれど、…それよりも問題は私の体のサイズがこの世界に来て縮んだことだ。私の身長は160cmを超えていたはずなのに、確実に私は150cm台まで小さくなってしまっていたて、知ったその時は衝撃のあまり目眩がした程だった。女子の中でかなり背は高い方だったから他人を見下ろせて楽しかったのに…ショックだ。



「で、行く面子は?私とメリーさんとディートリヒさんで全員?」

「おい待て、俺!全員なのに俺が、ジュード様が抜けてる!」

「別にアンタが居なくても問題は無いと思うんだ、私。」

「はい、いっそ山に捨てても構わないって思いますぅ。」

「ディー様、最近こいつら俺をいじめすぎじゃないですか?!」

「……仲が良くて良いじゃないか。」

「ディー様まで!」


でも山に捨てるって言うのは悪くないかな。発情期のメスの野猿の中に放り込んでジュードが貞操を守れるかどうか、夕食のパンでも賭けて勝負するのも悪くないし…。


「おい、お前今…とんでもなく悪い顔してるぞ。」

「ディートリヒさん、ここの山の猿の発情期っていつですか。」

「本当に何を考えているんだ!」

「いやちょっとジュードの脱童貞の方法でも考えようかなって。」

「…止めてやれ。」


残念、ジュードの貞操守れるかツアーは却下されてしまった。

私のせいで完全に話の道がそれてしまったので、改めて私は王都に行くんですよね、と話を戻す。


「それで、皆で行くんですよね?王都に。」

「いや、俺とディアで行く。」

「…は?」


そうだ、王都に行こう。よりも衝撃的な内容に再び私は唖然とした。


「ふ、二人だけ?で、王都に?」

「そうだ。」

「…ひ、日帰りで?」

「いや、最低でも一泊する。」

「うわぁ…。」

「あからさまに嫌そうな顔をするんじゃない。」

「本心ですし。」

「お前は言葉をオブラートに包むことを知らないのか…。」

「私正直者ですから。」

「お前は薄情者だ。」


それにしてもディートリヒさんと二人だけで一泊ってのは気まずいものを感じないわけではない。ディートリヒさんは、大丈夫と信じたいけれど、不安なのはどうしようもない。


「安心しろ、お前のようなガキをそう言う対象には見ない。」

「…そーですか。」


けっ、メリーさんに比べりゃ幼児体型ですよ。


「そう言うわけで、2、3日はここを空けるから、メリー、ジュード、大したことは起こらないとは思うが、ここを頼む。」

「仰せのままに~。」

「了解しました、ディー様。」


メリーさんもジュードも目に見えて異論を唱えることは無く、二人ともディートリヒさんの命令に素直に従うようだっ…


「その間のジュードの命の保証はいたしませんけどよろしいですか~?」


そんなことはなかった。メリーさんは不満ありまくりらしい。メリーさんの隣でジュードは青ざめて、ディートリヒさんはやれやれと息を吐いた。私は素知らぬ顔でパンを食べ続ける。


「構わない。」

「構わないってディー様!俺の身の安全は?!」

「安心しろ、墓は作ってやる。」

「死後の保証は要らないですよ!!」


そんな下らないやり取りをしつつも、結局は私とディートリヒさんでラグリア王国の首都・シーアルテに行くことになった。




次回、道中の話

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