9話 けれど私は生きることにした。
一章終わりです。否めないグダグダ感。
やはり理解できない魔女との再会の後、ようやく服を着た私とメリーさん、そしてお風呂を済ませたディートリヒさんと今まで軽く空気だったジュードが集まって所謂家族会議なるものが開かれた。議題は、私。
と言っても状況を把握しきれていない私がディートリヒさん達に伝えられることは少なかった。精々、私が異世界から来たことと、<特技>を魔女からもらったということだけ。にも関わらず、ディートリヒさんの威圧が妙に怖くて、緊張して説明に無駄に時間がかかった。早く寝たい。
「つまりお前は別の世界から来た人間で、記憶喪失でもなんでもなかったと…」
いつもよりディートリヒさんの声のトーンが低い。これは完全に怒っていらっしゃる。
「行く当てが無かったのは本当ですから、う、嘘はついてないですし…。」
「俺が怒っているのはそんなことじゃない!」
「ひっ…!?」
突然怒鳴られて、それと怒っていたのは嘘をついていたことじゃないと知って、混乱と恐怖が頭の中を支配する。要するにガチギレしたディートリヒさんがとにかく怖い。反射的に生きててごめんなさいって言いたくなった。豆腐メンタル舐めるな!
まぁまぁとメリーさんがディートリヒさんをなだめると、少し落ち着いたのか、次の言葉まで数秒沈黙した。それでも雰囲気と顔だけはまだ怖い。般若の方が怖くないと思えるほどで、私は俯いて震えるしかなかった。
「…俺が怒っているのは、お前が生きようとしないことと、俺達を信用してなかったってことだ。」
「…。」
ごめんなさい、とでも言うべきなのか。しかし私はその事に関して何ら非を感じないので、言う気はさらさら起きない。
「それは、…どっちも仕方ないじゃない。だって私の世界は嘘ばっかで、偽善ばっかで、ろくでもない所だったから…。」
助け合いの精神とか、本当に馬鹿みたい。テレビで繰り返される詭弁ばかりのCMには、いつも私は嘲笑していた。
唇を尖らせて言葉を濁らせながら言う様は、まるで言い訳をする子供のようで、自分で自分が軽く滑稽に思えてしまったが、今さら引き下がる気もないので、私は頑固に考えを主張することにした。
「そんなもん、俺だって経験してきた。それに、生きたいって願って死んでいく奴らも、ごまんと見てきた。そういうことを経験したから、俺はお前に…生きたくないだとか言われたくない。」
「はは、それはとてもとても素晴らしい精神ですねぇ。エゴも良いとこだ。」
「…何だと。」
煽るような口調にディートリヒさんの声のトーンがさらに落ちる。
「詳しいことは説明しませんよ。ただの、正義に対する私の感想であり主義ですから。
…まあ、こんなことで言い争っても不毛です。ディートリヒさんは、これを知って、私をどうしますか?私としては野に捨てていただいても構いません、むしろそちらの方を望みますが。」
「…。」
開き直ってしまえば後は臆することはなく、私はつらつらとそれはまあ流暢に皮肉を語りまくっていた。何故だろう、ここまで自分の心を話すことなんて、今まで誰にも、親にすらも語ったことはなかったのに。
「いや、お前を捨てたりはしない。俺が、ディートリヒ・ヴィルセルクが、お前を責任もって保護してやる。ディア。んでそこらの歪んで無駄に固い鉄のような貴様の性根を真っ直ぐにしてやる!」
「、」
がたりと立ち上がったディートリヒさんは、端正な顔に挑戦的な笑みを浮かべ偉そうに腕を組んで私を見下ろした。さっきまでの怒りの顔は恐怖のあまり鬼も裸足で逃げ出しそうなものだったのに、180度一変した雰囲気に私は唖然として反応が出来なかった。強いて言うなら、ジュードより様になっているなぁ、とか、ディートリヒさんのフルネームってディートリヒ・ヴィルセルクなのか、という感想くらいだった。
「…真人間更生プログラム強制参加って訳ですか。」
「あぁそうだ。お前が生きるのが楽しくて楽しくて仕方がないような人間にしてやる。人が好きで、何よりこの世界が好きな奴にしてやる!」
「や、やめろ。想像しただけで気持ち悪い!!」
鳥肌になっちまったじゃんちくせう。
よくわからないけど何かのスイッチが入っちゃったらしきディートリヒさんは夜なのにハイテンションのまま(言い換えれば修学旅行の夜みたいなテンションで)高らかに宣言するかのごとく言葉を続ける。
「その一歩としてメリー!ジュード!」
「はぁい、ディー様!」
「はっ。」
「今日からディアは正式に俺の家の人間だ!家族同然として迎え入れてやれ。」
「りょーかいでございまぁす!」
「ディー様のご命令とあらば。」
「ちょちょちょっ、なに、なによ、正式ってなに?!」
「俺の家の風呂に入った時点で決定だ。」
「絶対後付けだろ!」
「とにかく、お前は、ホーレン地方領主ディートリヒ・ヴィルセルクと、その部下、ジュディアリード・オラフィリアとメリエルグ・サーヴァの仲間にして家族だ。ディア。お前のことは、俺らが守ってやる。」
色々と無理矢理にこじつけたディートリヒさんは、にっといつもより子供のように無邪気に笑って、私に手を差し伸べてくれた。その笑顔は、影を温かく照らしてくれる日だまりのような感じがした。
ディートリヒさんの手と顔を交互に見比べて私は、最後の抵抗と言わんばかりに、肩をすくめて自嘲して、
「こんな態度の悪いひねくれた奴をよくも拾う気になりましたね。」
なんて言ったとしても、
「俺らは変わった奴らだからな。」
とか、まるで返答になってないようなことを返されて。
私は堪らず吹き出して、
「本当に、面倒くさそうな人たちですよね。」
彼の手を取った。
言葉とは裏腹に、心のどこかで、楽しみにしている自分には、まだ気付かないフリをしておこう。
「というわけで今日からメリーとディアは一緒に寝ろ。」
「わあ、私嬉しいです!」
「私は嬉しくない!」
ジュードの出番を増やしたい…(´・ω・`)
とりあえず茶番は終了です。次からはそうだ、王都に行こう。編が始まってコメディする予定です。
次話はキャラまとめを投稿するです。拙いものですがよろしくお願いします。




