六話
「お腹が減ったと言っているのですっ」
何を言い出すのかと思えばお腹が空いたとな。
「つまりそれは食べるものを出せと?」
「そうです。そう言っているのです」
金が在るんだからそこのコンビニでなんか買えばよかったのに、とか思ったり思わなかったり
「金が在るんだからなんか買えば良かったのに」
冷蔵庫の夕飯の野菜炒めという名の残り物をレンジに入れながら聞いてみた。
「この近辺で下手に紙幣を使うとここが見つかってしまいそうで」
紙幣の型番でも取ってんか?!もし、そうだとしたら警察並みだなあ、おい。
「へ、へえ」
「あ、信じていませんね。私この目で見たんですから、誰に渡した紙幣が何処で使用されたのか報告しているところを」
それは見たと言うより聞いたと言うべきではなかろうか。
てことはこのポンと置いたままの二百万は使えないんじゃ無いだろうか。
「ああ、この紙幣は他の方に頼んで取ってきていただいたものなので問題はありませんよ」
きっと脱走を手伝って今頃大変だろうな、その人。
「これ使えば良かっただろ」
「いえ、紙幣は使った事がありませんので」
「お前どうやってこれまで生きてきたんだよ。物払うことぐらいあっただろ」
「その場合はここから」
「ん?」
可愛らしいピンクの小銭入れを出してきて開けてくれたので覗いて見るとそこには何枚かの小銭があった。
なんだ。あるじゃねぇか。
と思ったが、なんかビニールに包まれているのが見えた。
気になり、一枚を手にとってみるとビニールに包まれた百円玉の表面に『HANA』の字が。
「げっこれもこれも、これもか!?」
五百円玉から一円玉まで同じように綺麗に個包装されていた。