一話
やっと書ける。
言葉足らずでも彼らを早く書きたかった。
これは彼女と出会って別れるまでのお話。
ある日のこと、コンビニから家に戻ると玄関の前に知り合いが座り込んでいた。それも数年来の知り合い。最後に言葉を交わしたのは中学が最後だった。
どんな最後か?なんのことは無い、卒業式で友人と騒いでいて後ろに下がった拍子にぶつかり、ごめんと言ったその一言が最後だ。
そんな青春の一コマにもならないような同級生が玄関の前で座り込んでいると分かったとき、俺は驚きよりも疑問が先にたった。
彼女の顔と苗字は有名だっただけになおさらだ。
脈絡がなさすぎる?では代わりにとは言ってはなんだが玄関での一コマをここに記そう。
夜の九時、ツマミを買いに隣のコンビニへ行って帰ってきた俺は玄関の前に誰かが座り込んで居るのを認識して舌打ちをした。
コンビニの隣にあるせいか偶に玄関の前で騒いだり酔っぱらいが座り込んだりすることがあったからだ。
「おい、そこは私有地だ」
「知ってる」
「なら、どっかいけよ」
「いや」
それは明らかに否定の言葉だった。
「私は三沢に用があるの」
「俺に?」
面倒臭い事になりそうな予感がした。
あ、俺の名前は三沢 神夜二十五歳の無職だ。
「そう。ただでとは言わないわ。話を聞いてくれたら十万出すわ」
こいつはたしか華山 麗同級生だから当然のごとく今年で二十五歳のはずだ。職については知らん。
「十万?」
「十万」
単位に耳を疑った。しかし、金額に理性が負けた一瞬でもあった。
「本当か」
「本当よ」
たとえ嘘であろうとも金額は重要だ。トラブルの始まりならなおさらに。
諦めて俺はため息と共にポケットに手を突っ込んだ。
ジャラ
あった。原付の鍵と一緒に出てきたそれでドアを開ける。
「入れよ」
「悪いわね」
「じゃあ、はじめっからウチに来るな」
「それはできない相談ね」
とまあ、こんな感じでリビングに案内するわけだが、やれやれ、どうなることやら。
文量は大体こんなもんです。