学校に現る悪魔
不幸中の幸いか、悪魔に襲われているというその学校はりん姉の家からさほど遠くない場所にあった。僕はすぐにタクシーを拾ってその学校に向かう。学生にはタクシー代は高価かもしれないけど、皮肉にも僕には悪魔を倒した際に稼いだお金があったから、タクシー料金を気にせず済んだ。
悪魔が現れたという高校の近くに来ると制服姿の学生たちが多く見れた。学校から逃げてきた生徒たちだろう。タクシーを校門前で降り、僕は学校に向かって走り出す。
「ゲーム・スタート。エリンラック」
ゲームのアバターに変身した。
学校の敷地内から悪魔の叫び声が聞こえてくる。この声の下で戦っているプレーヤーたちがいるんだろう。しかし、僕に悪魔出現を知らせる光るプレートは現れない。マップにモンスターの位置を知らせるものもない。どういうことだ。僕は仕方なく悪魔の声だけを頼りに走っていく。
開いていた一回の窓から校舎に侵入し声のする方向へ向かう。だんだん悪魔の叫び声が大きくなり、戦いの音が聞こえてきた。
「近い……」
廊下の角を曲がったすぐにところで、藍色の鎧に身を包んだ一人のプレイヤーが尾の大きい兎型の悪魔と戦っていた。この悪魔はヴァルファレだ。
「くっ……」
壁際で悪魔に首筋を噛まれて押さえ込まれている。
「はぁっ!」
僕は悪魔に思い切りに刀を突き立てる。悪魔の拘束から逃れた藍色の鎧のプレイヤーが、体勢を立て直して長剣で悪魔を斬りつける。僕ともう一人のプレイヤーで挟み撃ちの形で悪魔を斬りつけるとあっという間に悪魔を倒すことができた。
「サンキュー助かった。君は……この学校の人じゃないよね」
藍色の鎧の剣士が僕を見ながら言う。
「はい。エリンラックといいます。この学校に悪魔が現れたと聞いたので駆けつけたんです」
「そうかサンキューエリンラック。俺っちはスカイだ」
スカイが手を差し伸べてきた。僕たちはしっかり握手した。
「そして、この学校にはあと何体悪魔がいるんですか」
「ちょっと待って、マップを見る……。あと一体、体育館にいるみたいだ」
スカイを先頭に、僕たちは体育館に向かって走る。
向かいながら校舎を見ると、壁は壊れ穴が空き、床はえぐれて血の跡が転々している箇所もある。
「あっ」
大きな血溜まりの中に倒れている人がいた。僕は駆け寄っていく。
「大丈夫ですか。しっかりしてください……」
僕が抱え起こそうしたが反応がまるでない。息を確認すると……。
「……死んでしまったんだ。悪魔が来てすぐに襲われた人だ。この学校には逃げ遅れてしまった人がまだいる」
スカイの顔を見ると目に涙が溜まっていた。泣くまいと我慢しているのだろう。
「俺っちのせいだ……。いつもは悪魔なんか楽に倒せていたのに。急に学校なんかに来やがるから」
「スカイさんのせいじゃありません。体育館に行きましょう」
「ああ」とスカイが小声で言う。僕たちは再び走り出す。
体育館にたどり着いた。しかし、その時丁度最後の悪魔が倒されて消滅するところだった。
「ランラン兵長、香り姫」
「スカイ、そっちは倒したのか」
「はい。こっちのエリンラックが助けてくれて……」
「どうも……。エリンラックです」
「我輩はランラン兵長である。援護まこと感謝の極み」
「香り姫だにゅ。よろしくね」
和甲冑を着たランラン兵長と桃色のドレスのような鎧を着た香り姫と挨拶を交わす。
「エリンラック。間に合ったのね」
ランラン兵長、香り姫と並んで、いつものエロい格好をした雛桜花がいた。
「こっちの悪魔は手強かったんですか」
「いやいや雛桜花殿の援護のおかげなんとか勝てたよ」
「にゅ~、ありがとう雛桜花」
「べ、別に当然のことよ」
雛桜花が照れくさそうに言う。
「ゲームの『ソロモン・ゲート』では、私と香り姫はフレンド登録しててね。突然『助けて』ってフレンド通信が来たからびっくりしちゃった」
「香り姫は昨日から現実で悪魔退治を始めたルーキーなんだにゅ。どうしたらいいのか困ってたら、フレンドの項目に雛桜花ちゃんがいたから連絡とってみたんだにゅ」
『ソロモン・ゲート』の中でのフレンドは、この現実のアバターでも反映されるみたいだな。今の僕のフレンドの項目には雛桜花しかいないけど。それは僕のゲームでのフレンドが、現実での悪魔退治を始めていないってことなんだろう。
「しかし、なんだって学校に悪魔が……。二日前にもこの辺の学校であったみたいだが」
「それは僕たちの高校です」
「むむ、なんとそれは、ご愁傷様である」
「いえ。それよりも何故学校ばかり狙われるようになったことになったんですか」
「それは我々にもわからん。今まで悪魔は夜にしか現れなかったのだが……」
ランラン兵長も雛桜花と同じこと言っている。やはり、イレギュラーなことなんだ。
「とりあえず怪我人を運ぶにゅ。話はあとにゅ」
香り姫のいう通り、その後僕たちは校舎に残った怪我人たちを外に運び出し、外にいた先生方に任せたところで、一般人に正体を探られないように戻って、ランラン兵長たちは学校に戻り、僕と里山さんは帰ることにした。いつでも連絡が取れるようフレンド登録をして。




