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雑踏の中のキリギリスに捧ぐ

作者: 桃井 章

陽の光が射すのが強くなってきた8月の初め

街で一人の男子を見た



夜でもないのに駅前で一人でストリートライブを開いている男子


察するに、10(ティーンエイジャー


だって、10代の男の子って、

自分を大人っぽく見せたくて

無理に大人を装うくせに

その全身から放つオーラがまだまだ青くて

あ、まだまだ子供だ

って直ぐに思わせてしまうくらい瑞々しい

その瑞々しさが甘酸っぱい香りを放ち、鼻先をくすぐる・・・・


笑顔も自然だ


10代の笑顔ってのはホントに素直だ

作り笑いが出来ないからね




そういう10代の特徴を全身から放って歌を唄っている彼

でも、真っ昼間から

何してんだろ?


恐らく、高校生なら夏期講習とかアルバイトとか、デートとか・・・・色々あるでしょ




歌が好きなのかな?

あの人の楽しみは歌なのかな?

メジャーデビューしたいのかな?



彼の後ろに置いてある、エレキギターのケースには


鈴木すずき ひびき


って名前が書いてある

すずき  クンか。。。



鈴木君、


キミは、好きな歌だけを唄って勉強も社会勉強も恋愛もせず夏を過ごすのかな?


好きなことだけやって生きていられるのは今のうちだよ




でも、キミの歌なんだか、ガチャガチャと五月蝿いだけでキリギリスが鳴いてるみたい


きっとキミは、この夏だけ、頑張って唄って、自分の存在をアピールするだけアピールした後、

冬には駅前から息絶えて姿を消しちゃうんだろうな。


そう、キミはきっとキリギリスなんだね


暑い夏、みんなが冬の受験や春先の昇進に備え仕事や勉強に必死になっている中で

歌を唄って過ごすキリギリスなんだ



でも、それはそれで悪いことではないかもしれない


キリギリスって、時にはピョンと高く飛べる技術もあって、

もしかしたらキミもこの夏、ピョンッと跳ね上がってデビュー出来るかもしれないし。


若い今だから、必死に働いている人を上から見下ろせるのかもしれない。

だけど、

歩いても歩いても、緑の野原が只続いていて

足はフラフラで、声も枯れ、腰を下ろして沈んでいく太陽を見て涙する日が来る事を忘れてはいけない。








だけどね、本当はキミが羨ましい

毎日の生活を頑張って、幸せを感じることで、幸せな明日はやってくる。


日々の積み重ねが一本の線になり、人生となるのであるなら、毎日ストレスを抱えて未来の為に我慢するだけでは、幸せな毎日は来ないよね


キミはもしかしたら 毎日好きな歌を唄って、屈託のない、裏表のない真の笑顔でいられて、

理想的な生活をしているのかもしれないって思っている私がここにいる。



結局のところ

鈴木君、キミよりも本当は私の方がが行き当たりバッタりの生活をしていて、

今日の今日まで教養も何も持たずに言われるがままに仕事だけをして、

人生を楽しむことが出来ていないです。

わたしは本当に全てのことがギリギリッす(啼)


頑張って冬を越してください


いつか、田舎のお爺ちゃんが言っていました。

キリギリスは玉葱が好物なんですってね。


いつか玉葱の下(日本武道館 擬宝珠)でキミの歌を披露できる日が来るといいですね


応援しています。



通りすがりの 傍観者・道端 アリイ (みちばた ありい )


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